「だからこそ、今という瞬間を大切に思う」

クリーブランドで行われたキャバリアーズvsレイカーズの試合開始から5分半、最初のタイムアウトで選手たちがベンチに引き上げると、ビジョンからは2007年のカンファレンスファイナルの映像が流された。キャブズのオールドファンが今も忘れない、若きレブロン・ジェームズの25連続得点のシーンだ。

トリビュート映像と「おかえり、わが家へ」のメッセージを、レブロンは感情を押し殺して眺めていた。周囲を見回す彼の視界に入ったのは家族であり、彼に拍手を送るファンであり、2016年の優勝バナーだった。立ち上がってプレーを再開する前に、彼はユニフォームの胸元を引き上げて涙を拭った。

2003年のデビュー以来『NBAの顔』であり続けるレブロンは、41歳になってキャリアの終わりを考えるようになった。今シーズン、キャブズホームでのレイカーズ戦はこの1試合のみ。最後のプレーとなる可能性を考え、ファンはレブロンのユニフォームを引っ張り出してアリーナに足を運び、クラブは粋な歓迎を演出した。

「あれだけの歓迎は予想していなかったから、何と言っていいか……」とレブロンは言う。「ここには本当にたくさんの思い出、積み重ねた歴史があって、ただただ感謝しかない。映像を見ていて、昨日のことのように思い出したよ。僕らはピストンズより格下だと見られていたけど、第6戦に勝ってファイナルに進んだ。素晴らしい瞬間だった」

そして、「クリーブランドでプレーするのは最後かもしれないと感じていたか」との問いに対し、レブロンは素直に「それはある」と答えた。

「今後については何も決めていないけど、すべての瞬間を当たり前だと思わずに、刻み込もうと自分に言い聞かせている。それはここに限らず、どのアリーナでも同じだ。ただ、やっぱりここには個人的に特別な思いがある」

試合はルカ・ドンチッチが序盤でケガをし、プレーを続けはしたが無理をしなかったこともあり、99-129と大差で敗れることとなった。ただ、レブロンにこの試合の敗因や調子といった無粋な質問をする者はおらず、そのキャリアを最大限にリスペクトしつつ、今後のことを知りたがった。

2018年にレイカーズに移籍して、クリーブランドに戻るのは8回目。そのすべてでトリビュート映像が流されている。「だが、今回はこれまでとは違う。これまでの7回よりも、今日という瞬間に深く向き合ってきたからだ。以前、優勝した時の映像が流れた時の方がこみ上げる感情は大きかったように思う。でも今回は、自分がここにいることの意味を強く意識した」

レブロンは静かに自分の思いを語り続ける。「2018年や2019年には『またここでプレーする』と思っていた。でも今は次がどうなるかは分からない。分からないからこそ、今という瞬間を大切に思う。そしてふとベンチを見れば21歳の息子がいる。これ以上のことはないよ」