
「今、活躍できなかったらBリーグでプレーするのは無理です」
今年のインターハイ王者である鳥取城北は2冠を目指してウインターカップに臨んだが、準決勝で福岡大学附属大濠に66-69と、あと一歩届かずに終わった。それでも、1年を通して安定した成績を残し、今年の高校バスケットボール界を代表する好チームと誰もが認める戦いぶりだった。
鳥取城北は昨年のウインターカップで準優勝と大きな飛躍を遂げた。新美鯉星、豊村豪仁とともに昨年から主力としてチームを支えたのはナイジェリア出身のハロルド・アズカだ。大半の留学生はサイズを生かしたペイントアタックなどゴール下を主戦場とする典型的なセンターだが、アズカは200cmのサイズとハンドリング能力に加えて、外角シュート力を備えた大型フォワードとして活躍した。
準決勝の大濠戦でも、アズカは後半の要所で3ポイントシュートを沈めるなど多彩なスキルを披露。20リバウンドと守備でも奮闘したが、フィールドゴールは21本中7本成功の18得点に留まった。
試合後、アズカは「100%を出しました。ただ、あまり3ポイントシュートが入らなかったです。エースとして、キャプテンとして、3年生として大事なところで決めたかったです」と流暢な日本語で語り、敗戦の悔しさを露わにした。
「相手が100%だったら僕たちは120%、相手が150%だったら僕たちは200%出さないといけない気持ちで戦ってきました。だけど、(昨年から)大濠に4連敗となりました。日本で一番勝ちたいチームはずっと大濠でした。去年はウインターカップで準優勝、今年は優勝しないとダメです。だからこのチャンスに勝ちたかった。足が痛いけど頑張らないといけないと思いました」
今年のアズカは、昨年の活躍によってマークはより厳しくなった。さらにシーズンを通してケガに悩まされ、今大会も万全のコンディションとは言えなかった。ただ、それでもケガを言い訳にせず、相手の徹底対策にも屈せずに立ち向かった。
「(相手の徹底マークは)打ち破ってやろうというモチベーションになりました」と語るアズカは、次の決意を抱いてコートに立っていた。「アズカはBリーグの選手、NBAの選手になりたいです。だから今、(厳しいマークをされても)活躍できなかったらBリーグでプレーするのは無理です。これもチャレンジだと思っていました。去年は活躍できたけど、今年も活躍しないといけない。チームのためにやるしかない気持ちでした」

「みんなレベルアップしたのがすごくうれしいです」
なんとしても勝ちたかった大濠に再び敗れ、ウインターカップ優勝を逃したことへの悔しさは大きい。ただ、「ベスト4は当たり前のことではないです。みんなレベルアップしたのがすごくうれしいです。1年生の時、日本一は無理と思いましたけど、みんなメンタルがレベルアップしました」と続け、チームメートへの感謝を強調した。
アズカは引き続き、日本に残ってバスケットボール選手のキャリアを続ける予定だ。そして「留学生が日本の学校を卒業してすぐに、Bリーグのトップカテゴリーでプレーをした選手はいないです。その歴史を変えたいです」と大きな目標を語る。
実際はBリーグ創世記に現在は帰化選手として活躍するジュフ・伴馬(福島ファイヤーボンズ)が、拓殖大を卒業後に外国籍選手としてB1の川崎ブレイブサンダースでプレーしていたこともある。だが、リーグのレベルが飛躍的に向上した今、帰化をせずにB1でプレー経験のある元留学生は、2022-23シーズンに名古屋ダイヤモンドドルフィンズに在籍した岡山学芸館出身のモリス・ンドゥールくらい。だが、彼は高校卒業後、アメリカの大学でプレーし、欧州で実績を積んで名古屋Dに加入した。
現在のリーグ状況において、留学生選手が日本の高校、大学を経て帰化枠ではなく、外国籍としてBプレミアのチームでプレーできたら、アズカが語るように「歴史を変えた」と言える偉業だ。ただ、アズカの最終目標がNBA選手であるならば、これは乗り越えないといけない壁である。自らの夢を叶えるため、次のステージでアズカがどんなプレーを見せてくれるのか楽しみだ。