ハロルド・アズカ

エースの責任「僕のせいで負けてしまいました」

ウインターカップ2024において、最も躍進を果たしたチームは鳥取城北だ。これまで鳥取県勢はウインターカップで早期敗退ばかりと実績は皆無。今夏のインターハイではベスト8進出を果たしたとはいえ、上位進出を予想する声は少なかった。

だが、そんな予想を裏切る快進撃を続け、夏のインターハイ8強入りがフロックではなかったことを示すとともに、夏の経験を経てチームがもう一回り成長したことを証明した。終わってみれば、決勝進出も納得の見事なバスケを披露した。

鳥取城北の特徴はボールシェアを徹底してチームで攻める、相手にとって狙いどころを絞るのが難しい質の高いチームオフェンスにある。また、ディフェンスも組織でしっかり守るチームだが、その中でも攻守で替えの効かない存在だったのがナイジェリア出身の2年生ハロルド・アズカだ。

200cmのサイズとリーチの長さ、恵まれた身体能力を備えるアズカの持ち味は、なんといっても多彩なプレーができるところにある。多くの留学生選手はセンターとしてプレーし、オフェンスでシュートを打つのはゴール下で、オフボールではスクリーナーの役割を務める。だが、アズカは外からのジャンプシュートを積極的に放ち、ボールプッシュも難なくこなす『純粋なフォーワード』だ。

オールラウンダーとしての非凡な能力で活躍を続けたアズカは、流暢な日本語であと一歩で頂点を逃した悔しさを語る。「今まで頑張ったけど今日はちょっとダメでした。シュートが入らなかったり、ターンオーバーをしてしまいました。みんな一生懸命にプレーしました。でも、バスケットは結果のスポーツです」

エースとして12得点に終わったことで、「アズカの気持ちは、私が一番点を取らないといけない選手です。それなのに点を取れなかったので試合が難しくなりました。僕のせいで負けてしまいました」と自らを責める。

そして次のように大会を総括する。「100%は出せましたけど、この結果ではまだまだです。ただ、ここまでみんなと一緒にバスケをできたことに後悔はないです。めちゃくちゃ良かったです。でも金メダルがいいです」

ハロルド・アズカ

「鳥取城北は素晴らしいです。寮もめっちゃ楽しい」

ちなみにアズカは、「バスケを始めたのは5年、6年くらい前です」と、まだまだ発展途上の選手だ。そして、バスケットボールを始めた経緯をこう教えてくれた。「それまでは勉強に集中していました。アズカの身長が大きくて、お父さんの友達が『なんでバスケしてないの?』と聞いてきたのがきっかけです。アズカはゲームが好きで、運動はあまり好きではなかったです。でも体育館に行って実際にプレーしたらめっちゃ楽しかったです」

また、鳥取城北を進学先に選んだ理由を、多くの留学生と同じセンターではなくフォワードとして育成してくれる方針にあったと語る。

「アズカのプレースタイルは、みんなと同じではないです。でも河上貴博先生は『3ポイントシュートを打っていいよ、ドライブをしていいよ』と言ってくれました。次のレベルに行きたいなら、センターのプレーはしません。河上先生は『あなたのスキルをレベルアップさせたい』と言ってくれました。だから、ここが一番と思いました」

河上コーチは、このようにアズカの今大会の活躍ぶりを称える。「アズカは万能にできる選手です。努力家で人一倍練習もしますし、選手からの信頼も厚い。今大会では『あんなアシストもできるんだ』というパスも出してくれたり、自分で行きたいところでパスもしたりと、チームのバランスを考えてやってくれる姿が見えて成長していると思いました」

そしてコーチは「彼はコミュニケーションをすごく取ってくれます。学ぶ姿勢が良いですし、めちゃくちゃ良い子です」と人間性も称え、3年生となる新シーズンでは次のように成長の手助けをしたいと続ける。

「留学生の中ではサイズがある方ではないですし、彼の武器はシュートだと思います。それを生かすためにもハンドリングやパスを伸ばしてより万能にプレーする選手にしていく。彼もそれを望んでいると思います。そして相手のウィークポイントを見ながら外でプレーするのか、中でプレーするのかを、考えられる選手にしていきたいです。」

最後にアズカに、東京体育館の大観衆に見守られてプレーする気分を聞くと、「アズカの夢はNBA選手。その前にBリーグでもプレーしたいです。今日の会場はちょっとその雰囲気に似ていて楽しかったです」と笑顔を見せてくれた。

「鳥取城北は本当に素晴らしいです。バスケだけでなく、寮もめっちゃ楽しい。このケミストリーはバスケットボールにも生かされています」

こう母国ナイジェリアから遠く離れた異国の地での生活を満喫しているアズカが、将来もしっかりと見据えた指導体制の下でさらなる成長を遂げ、1年後のウインターカップでより支配的なプレーを見せたとしても、それは驚きではない。