急成長する下級生の勢いが、薫英初優勝の大きな力に
ウインターカップ初優勝を果たした大阪薫英女学院。安藤香織コーチは例年、下級生を大胆に起用しており、今年もキャプテンの幡出麗実、エースの三輪美良々を除くスタメン3人は2年生だった。このうち、新チームの始動時点で主力だったのはサイズのある細澤幸生のみ。松本璃音は同級生、原乙羽は先輩をポジション争いで追い抜いて主力となり、試合ごとに急成長する勢いが薫英の大きな力となった。
この大会に懸けていた幡出と三輪が、最後に優勝できてホッとした表情を見せているのとは対照的に、下級生たちはただただ勝利を喜び、大騒ぎしていた。
松本が「試合が終わった後も実感が沸いていなくて。本当にこれで終わったのかなって思っています。でも表彰台の上から見た景色はめちゃくちゃきれいで、最高の気分でした」と言えば、原は「ベンチも含めて選手全員、観客席まで含めて、やっと優勝を達成できた思いが一つになって感動しました。ですけど、表彰式とか記念撮影はすごく緊張したし、なんか恥ずかしかったです」と続ける。
決勝の前半は桜花学園が優勢で、後半に薫英が逆転するも、最後の最後までどちらに転ぶか分からない大接戦となった。原は「苦しい中で2桁の差を付けられずに前半を終えられたのは大きかったし、私は後半はプレータイムがほとんどなかったんですけど、全員が明るい笑顔で薫英のバスケをしっかりできたのは良かったです」と話す。
その原が、前半の苦しい時間帯をしのぐ中心となった。厳しいプレッシャーに苦しむガード陣の代わりにボールを運び、三輪のシュートが入らない状況でドライブを再三仕掛けて、個人で打開して得点を繋いだ。
それでも、後半はペースを上げるために3ガードを採用して流れを呼び込んだことで、原はベンチに回ることに。優勝の喜びが大きい中でも、「私としてはもっとやれたと思っています」と悔しさも漏れた。
そんな同級生を松本は「めちゃくちゃやれてたよ!」と励ます。「桜花学園は一人ひとりのディフェンスがすごく良くて、私と麗実さんが運べなくなった時に乙羽が自分からボールをもらいに来てくれて、そこでプッシュしてくれたのは自分的には本当にありがたかったです。セットオフェンスになってもディフェンスがきつくて、ディナイを徹底されてボールが回らない時間帯がありました。そこで乙羽がドライブでリングに向かってくれたのは大きかったです」
それでも原は納得しておらず、「自分としてはそんなに上手くいっていない感じです」と、この悔しさを次の成長へと向けようとしていた。
次の成長が求められる場面はすぐにやって来る。下級生が多く試合に出るチームではあったが、どんなに苦しい時にも前向きにチームを引っ張った幡出のリーダーシップと、留学生にも負けない三輪のインサイドの支配力を埋めるのは簡単ではない。
「美良々さんのような絶対的なエースがいなくなる分、来年は全員での堅守速攻を意識します。今は日本一になれましたが、来年はまた新しいチームなので、チャレンジャーとして戦います」と松本は言う。
原も「私は今大会で悔しい思いをしているので」と決意を語った。「来年は美良々さんの分まで自分が得点源になれるように。優勝したことで、私たちを見る周りのチームの目も変わってくると思いますが、自分たちは変わることなく最初からアグレッシブに、いつでも攻撃的に戦うバスケをやりたいです」
来年は3月にU18日清食品トップリーグ2026入替戦が控えており、ここを勝ち抜いてトップリーグに返り咲くことが至上命題となる。また、インターハイは地元開催。3年生になる彼女たちには、今回のウインターカップ以上の飛躍を期待したい。
