佐藤久遠

「ディフェンスと走ることを徹底してやりました」

ウインターカップ男子準決勝で東山は福岡第一に72-58で勝利し、2020年以来3度目の決勝進出を決めた。

立ち上がりから東山は、しっかりとボールマンにプレッシャーをかける粘り強いディフェンスを続け、第1クォーターで福岡第一のフィールドゴールを18本中3本成功に抑え込む。こうして主導権を握った東山は、序盤から2桁のリードを奪った。しかし、第2クォーター残り2分から福岡第一の長岡大杜に3連続3ポイントシュート成功とビッグプレーを許し、1点差に迫られた。

嫌な流れで前半を終えた東山だが、第3クォーターに入ると大黒柱の佐藤凪が得点に加え、効果的なパスでオフェンスを牽引し、自分たちの流れを取り戻す。大澤徹也コーチが、「本当に凪がしっかり40分間コントロールできた試合だったと思います」と称えたように、佐藤を軸に東山は最後まで攻守にわたって自分たちのやるべきプレーを遂行。福岡第一の持ち味である速攻から得点を量産する展開を作らせず、ハーフコートオフェンスの決定力で上回り、ジワジワと突き放して勝ち切った。

この試合、佐藤凪は25得点10アシストと、エースの役割をしっかりと果たした。そして凪の弟である1年生の佐藤久遠も9得点4リバウンド2アシスト2スティールと攻守に渡って奮闘。「シュートの確率が低かったですが、それでも勝つためにできることは絶対にあります。それはディフェンスと走ることだと思っていて徹底してやりました」と語るように、シュートタッチが悪い中でもしっかりと勝利に貢献している。

全国屈指のタレント集団である東山において、久遠は兄と同じく1年生から先発の座を獲得。2回戦の瓊浦戦で10得点5リバウンド3スティール、ベスト8の八王子学園八王子戦で15得点7リバウンド2ブロック1スティールなど活躍中だ。

佐藤久遠

「明日のために1年間、死ぬほど練習してきました」

周囲はどうしても凪の弟という部分で注目しがちだが、久遠は「凪の弟ではなく、自分という1人の選手という気持ちでプレーしているので、特に意識はしていないです。先輩たちや試合に出られない応援団の人たち、みんなの気持ちを全部背負うつもりでプレーしています」と、周囲の喧騒にも冷静だ。とはいえ「今年は高校で凪と一緒にできる最後のシーズンです。凪と一緒に優勝する姿をお父さん、お母さんに見せたいです」と、家族愛は強い。

そして今回が初めてのウインターカップだが、過去2年間は凪の応援に会場へと足を運んでいたという。「去年は応援席で見ていて試合に出ていないのに、負けて泣きそうなくらい悔しかったです。その悔しさを今年は晴らしたいです」と、久遠のチーム愛は入学前からだ。

1年生からの先発起用が示すように大澤コーチは、もちろん久遠に大きな期待を寄せている。だからこそ、この試合で久遠がマークしていた長岡に3ポイントシュートを連続で決められた後も引き続きマークを任せた。そこには久遠への確かな信頼がある、大澤コーチは語る。「途中で呼んで、『あれが3年生の意地で、それを肌で感じてほしい。それを止められるメンタルをあなたは持っているよ』、『1本止めてこい』って話をしました。あの場面は久遠を成長させるための一つの方法だったと思います」

明日の決勝の相手は、全国一のタレント集団である福岡大学附属大濠だ。「大濠さんはみんな身長が高くて動ける選手たちです。肉弾戦になると予想しているので最後まで身体を張ってオフェンスで逃げずに戦いたいです」と言い、このように闘志を燃やす。「得点を取るのと、ディフェンスでハードワークをするのは自分の仕事なので、それを全うします。明日のために1年間、死ぬほど練習してきました。なにがなんでも勝ちたいです」

そして、「凪の負担が大きいのはみんな承知しています。自分とか(中村)颯斗さんがよりハードワークをして、ゴールに向かっていくことがキーポイントだと思います」と大きな責任を背負ってコートに立つ覚悟だ。

明日の決勝、東山が自分たちらしいハイスコアリングゲームに持ち込んで勝利するためには、凪だけでなく、もう1人の佐藤の得点も間違いなく必要となってくる。