
瀬川琉久が卒業した今年も、東山はタレントが豊富だ。1年から主力として活躍する佐藤凪がキャプテンとなり、2年生の中村颯斗はエース級の選手へと成長し、凪の弟である佐藤久遠も即戦力として活躍している。インターハイではベスト8止まりで、U18日清食品トップリーグでも最終節の黒星で優勝を逃しているが、佐藤は「ウインターカップで優勝すれば、すべてが良い経験だったと言える」と強気の姿勢を崩さない。高校バスケ界屈指の人気を誇る佐藤と中村に、ウインターカップへの意気込みを語ってもらった。
「自分がやらなきゃいけない気持ちは強くなりました」
──中村颯斗選手は『バスケット・カウント』初登場です。凪選手から、中村選手がどんなプレーヤーであり、どんな人なのかを紹介してください。
佐藤 四日市メリノール学院中の出身で、全中とJr.ウインターカップで優勝していて、当たり出したら止まらない3ポイントシュートが武器です。性格は本当にピュア。ピュアというかちょっと抜けてるのかもしれない(笑)。
──中村選手から見て、3年生になってキャプテンになった凪選手はいかがですか。
中村 瀬川琉久さんがいなくなって、凪くんが「自分がやらなきゃいけない」という気持ちがすごく強くなっていて、キャプテンを1人でやっているし、チームを勝たせる責任もあって、1人で背負いすぎていた、背負わせすぎてしまったかなと思います。
──瀬川選手とはすごく仲が良かったので、寂しい気持ちが相当あったのでは?
佐藤 プレーの部分では琉久さんに頼っていた部分が大きかったので、自分がやらなきゃいけない気持ちは強くなりました。オフコートの部分では、僕も多少は寂しいですけど、琉久さんの方が寂しいんじゃないですかね。しょっちゅう電話がかかってきますし、帰ったら絶対遊んでくれますし。うん、やっぱり琉久さんの方が寂しいと思います(笑)。
──中村選手は1年生だった去年からスタメンで活躍していました。2年生になってチームでの立ち位置が変わったと思いますが、プレーに変化はありましたか。
中村 チームを引っ張っていかなきゃいけない気持ちも出ましたし、自分の仕事にフォーカスして結果を出さなきゃいけない気持ちも、両方あります。2年生になって一番の変化は後輩ができたことで、1年生の佐藤久遠が試合に絡むようになりました。久遠もシュートを打っていいのかとか、迷いながらプレーしているところがあったので、そこで僕が琉久さんや凪くんに言われたように「思い切って打っていけ」とアドバイスするようになりました。やっぱり自分が得点源として点を取らないとチームも乗ってこないし、勝てないと思うので、両方を大事にしていきたいです。

「凪くんと2人でチームを引っ張らなければ勝てない」
──佐藤久遠選手は凪選手の弟ですよね。兄弟だからこそのやりやすさ、逆にやりづらさがあったりしますか。
佐藤 ミニバスから一緒にやっているので、お互いに誰よりもプレーを知り尽くしていてやりやすいのは事実です。僕もプレーしていて「こうしてほしいんだろうな」というのはすごく分かります。プレー中はやりやすいんですけど、たまにぶつかると大喧嘩で……。
中村 オフコートでぶつかることはないんですけど、オンコートではたまにぶつかりますね。久遠には「1年生だから思い切ったプレーをしていい」と言ってるんですけど、凪くんが「そのタイミングで打つか?」みたいなことを言うと「なんでダメなの」みたいに突っかかってきますね。そうなったら僕がサッと止めに入ります(笑)。
──インターハイではベスト8で仙台大学附属明成との接戦を落とし、トップリーグでは最終戦でそれまで未勝利だった帝京長岡に負けて、ほぼ手中に収めていた優勝を逃しました。東山らしい強さは見せていても、あと一歩で勝ちきれない試合が多い印象です。
佐藤 本当にその通りで、大一番で結果を残せていないのは事実です。ですが、それ以上にこういったゲームで見付かる課題や経験は、必ずこのウインターカップに繋がってくると思っています。実際、そこで得た学びを踏まえてこの1カ月間、ウインターカップに向けた準備を進めてきました。結果として優勝すれば、すべてが良い経験だったと言えるはずなので、ウインターカップの結果次第だと思っています。
──この1年間で一番悔しい負けはインターハイですか?
佐藤 そうですね。連覇が懸かっていて、そこへの思いは僕だけじゃなくチーム全体でものすごく強かったので、負けたダメージは大きかったです。その後の練習でもモチベーションを見いだせなくて、チームとしてまとまることもできず、曖昧なまま毎日を過ごしてしまった時期もありました。大澤(徹也)コーチからも厳しい言葉をいただいて、トップリーグが始まるまでの夏の期間は苦しかったという思い出です。
中村 僕も同じ気持ちでした。大澤先生から「凪1人に背負わせすぎだ」と言われて、そこから意識をあらためたつもりです。ウインターカップで勝つためには僕が凪くんをもっと手伝うというか、凪くんと2人でチームを引っ張らなければ勝てないと言われて、そこは自分なりに考えたところです。

「とにかく自分たちのペースで6試合を戦いきる」
──佐藤選手から、中村選手に求めたいのはどんな部分ですか。
佐藤 チームの中心選手であることは間違いないですし、僕は東山のエースは颯斗と思っています。実際に颯斗も自覚が芽生えて、練習の取り組み方も良くなったし、それでパフォーマンスも上がっていると思います。颯斗がさっき言っていた通り、2人が中心になってチームを引っ張っていこうという意識が強くなって、僕もそれまで遠慮して言えなかった部分もストレートに伝えられるようになったし、それでトップリーグの期間中に良い関係性が生まれてきたと思います。ウインターカップではもっとパワーアップした姿を見せられるんじゃないかと思っています。
中村 そう言ってもらえるのはめちゃめちゃうれしいですね!
──凪選手から「東山のエースは颯斗」という言葉が出たことをどう受け止めますか。
中村 もちろん、本当のここ一番で決めるのはやっぱり凪くんだと思っています。でも、凪くんが僕のことをエースと言ってくれた以上は、自分が点数を取ってチームを勝たせなきゃいけないという気持ちです。
──いよいよウインターカップ開幕です。どんな思いで大会に臨みますか。
佐藤 一昨年も去年も、結果的に優勝したチームに負けていて、どちらも悔しい思いをしています。最後なのでその思いをぶつけるだけです。対戦相手を見ても1回戦からタフな相手ではありますが、自分たちのスタイルを貫き通せば間違いなく日本一のチャンスがあると僕は思っているので、とにかく自分たちのペースで6試合を戦いきることがテーマです。そこはチームで共通認識を持って、自分たちのスタイルを貫きたいです。
──中村選手、去年のウインターカップの思い出も含めて意気込みを教えてください。
中村 去年は初めてのウインターカップで緊張もあったんですけど、途中から自分の持ち味である3ポイントシュートを生かしつつ、思い切ってプレーできたことが次に繋がる良い経験になりました。今年は日本一を狙えると本気で思っているので、最後は凪くんと優勝して笑顔で終わりたいです。

「勝ちに貪欲に、勝ちにこだわって覚悟を持って戦う」
──過去2年のチームとは違う、今の東山ならではの強みはどんな部分ですか。
佐藤 トランジションとアウトサイドのシュート力は、過去2年よりも間違いなく自分たちの武器になっています。これまではハーフコートバスケ、ピック&ロールが主体でしたが、それに加えてトランジションで走って点数が取れたり、アウトサイドで点数が取れるのは間違いなく僕たちの強みだと思います。
中村 僕と久遠が3ポイントシュートを武器としていて、それがチームの武器にもなっています。ただ、まだ波があるので、大会を通してどれだけコンスタントに決められるかが重要になってくると思います。
佐藤 戦術的にはオフェンスのペースをしっかり上げることが重要で、60点台、70点台のゲームをやっていては僕たちのペースではないので、日本一には届かない。毎試合で少なくとも80点、シュートタッチが良ければ100点を超えてくるようなペースで、しっかり得点を重ねていきたいです。もう一つはメンタルの部分で、東山はこれまでにウインターカップで優勝したことがなく、僕たちの代は大一番で結果を出せていません。勝ちに貪欲に、勝ちにこだわって、覚悟を持って戦うことが非常に重要だと思います。
──トップリーグを見ていて、選手個々で一番人気があると感じたのが凪選手と颯斗選手の2人でした。応援してくれるファンの皆さんへのメッセージをお願いします。
中村 いつも応援ありがとうございます。僕たちの試合を見に来てもらってガッカリさせるとか恥ずかしいプレーはできないと思っています。見てて面白いと思えるような、レベルの高いバスケを見せられるよう頑張ります。
佐藤 いつもたくさんの方が応援してくださっていて、それが僕たちの力となっています。僕自身は来年に渡米を控えていて、日本でプレーするのは一旦これで最後になるので、見てくださる方々に「東山は強い」とか「佐藤凪は面白い」と思ってもらえるようなプレーをお見せしたいと思います。6試合を全力で戦い抜きますので、応援よろしくお願いします。