大塚裕土

プレータイムを失うリスクを承知の上で、勝負の決断

過去2シーズン、富山グラウジーズの主力を務め、昨シーズンにはチームのチャンピオンシップ進出に貢献したシューターの大塚裕土が、川崎ブレイブサンダースへの移籍を決断した。

川崎には同じシューターの辻直人がおり、先発出場が当たり前だったこれまでとは違い、プレータイムはチーム内競争に勝ち取ってつかまなければいけない。それでも辻は、左肩関節脱臼による長期離脱中で、開幕に間に合うかは微妙なところ。大塚としては川崎で長年エースを張る辻に挑戦する形となるが「正直、同じポジションのライバルとして考えればチャンス」と、ベンチプレーヤーに甘んじるつもりは毛頭ない。

これまでセカンドユニットが課題とされてきた川崎だけに、大塚のような選手が純粋な競争心を持ち込むことで、チーム全体が底上げされることが期待される。

大塚自身も、激しいチーム内競争を求めたことが川崎にやって来た大きな理由だと言う。「練習中から代表選手と一緒に切磋琢磨できる環境にいられるので、自分がもう1つ、2つレベルアップできるんじゃないかと。本当にチャレンジできるんじゃないかなと思って川崎に来ました」

もちろん、強豪クラブへの移籍はプレータイムを失うリスクもある。Bリーグ初年度に加入したサンロッカーズ渋谷ではプレータイムが激減した。「やっぱりSR渋谷の時みたいになってしまう可能性もあるわけで、ニック(ファジーカス)が帰化して、『オン3』のオプションで僕のポジションが消される可能性もありますし、そういう怖さはありますよ」と大塚は言う。

それでも移籍を決めたのは、その怖さを優勝への思いが凌駕したからだ。学生時代も含め、大塚には自分が主力となって優勝した経験がなく、「優勝するために自分はやって来ました。それがもっと明確になった感じがした」と、川崎のユニフォームを手に実感を深める。

大塚裕土

「富山でチヤホヤされ、甘えてしまっていた」

大塚の移籍を後押ししたのは、昨シーズンのチャンピオンシップを終えた時の気持ちだった。「富山のクラブとしての目標がチャンピオンシップ出場だったんです。でも、他の7チームはそこからが本番で、その差をすごく痛感しました。このまま主力で出て、チャンピオンシップに出れてとか、そういうレベルでキャリアを終えていいのかというのは、チャンピオンシップの記者会見の時からすごく考えました」

もちろん、チャンピオンシップ進出は低い目標ではない。それでも、自分の成長に限界を定めたくないからこそ、大塚は川崎を選んだ。

「大学の同級生とか今までのチームメートが、タイトルを獲るために日々自分を追い込む姿を見ています。そういう仲間が周りにいるのに、自分が富山でチヤホヤされ、甘えてしまっていたと感じました。これでは良くないと思い、本当に自分が目標とする優勝をするためには、そういうところに身を置かないといけないと感じて移籍を決めたんです」

現在31歳の大塚は「時間も限られている」と選手寿命も頭に入れている。優勝を切望する大塚の存在は、川崎に足りなかったラストピースとなり得る。ベテランとしての活躍も期待される、日本人最年長プレーヤーの大塚から目が離せない。

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