
2018年、グリフィンは自身のトレードをSNSで知る
クリッパーズはクリス・ポールを自宅に送り返した。この決定が下された翌日のホークス戦、アトランタのファンから「クリス・ポールをどこへやった?」というチャントを浴びせられながらも、クリッパーズは115-92で勝利して連敗を5で止めた。ポールを外すというショック療法が効いたかに見えたが、続くグリズリーズ戦ではまた敗れ、通算成績は6勝17敗となった。
かつて『ロブ・シティ』と呼ばれたクリッパーズでポールとチームメートだったブレイク・グリフィンは、『NBA on Prime』の番組内でこの『事件』についてコメントした。当然ながら彼はポールを支持し、クリッパーズを批判した。
「率直に言ってガッカリした。他に表現すべき言葉が思いつかない。最初はショックを受けたが、今は失望している」とグリフィンは語り始めた。
「クリス・ポールはディアンドレ・ジョーダンと僕が1年目とか2年目の頃にクリッパーズに加わり、勝利の文化をもたらした。NBAでどのように振る舞うべきか、試合に取り組む姿勢、身体のケア、どんな細かなことも疎かにしてはいけない、ということを教えてくれた。20年のキャリアを通じて彼は変わることなく、勝利だけを追い求めてきた」
「クリッパーズへの復帰は、そんな彼にとっての最後の挑戦だった。それが自分の意志で去ることも許されず、キャリアを終えさせられるのは残念すぎる。それ以上に失望したのはクリスから聞いた内容だ。僕は昨日も今日も彼と話した。タロン・ルーとのコミュニケーションがなく、それ以上にスティーブ・バルマーとのコミュニケーションも一切なかったという。これは失望と言うしかない」
グリフィン自身も、クリッパーズから裏切られた。2018年2月にクリッパーズはチーム解体を決断。その前のオフにスーパーマックス契約を結んだばかりだったグリフィンをピストンズにトレードした。この当時、グリフィンはショックを受けるとともに、フロントのやり方を批判した。『チームの顔』だったグリフィンに何の連絡もなく移籍を決めたからだ。彼はSNSで自分のトレードを知った。
このトレードを企画立案したのは、NBAのレジェンドであるジェリー・ウェストだった。ウォリアーズ黄金期の礎を築いた彼は、バルマーから請われてクリッパーズのアドバイザーに就任。すでにポールを放出し、行き詰まっていた『ロブ・シティ』を解体するのが彼の仕事だった。当時ウェストは、「誰もやりたがらない仕事だったが、バルマーからは『必要であれば非情な決断も恐れてはいけない』と言われていた」と明かしている。
勝利のためには多くの犠牲が必要となる。ただし、リスペクトを失う必要はない。グリフィンはキャリア黄金期を過ごしたクリッパーズが、そのリスペクトを軽視していることに悲嘆している。
2018年、ピストンズへと移籍したグリフィンが初めてクリッパーズのアリーナに戻った時、ファンの大歓声ににこやかに応えたが、バルマーが握手しようと差し出した手は無視して通り過ぎた。
あれから5年半。グリフィンはこう語る。「新しいアリーナを建設して、多くのファンが来て熱狂的な雰囲気が出来上がったとしても、結局のところチームはリスペクトの基盤の上に築かれるものだ。人をどう扱うかでその評価は決まる。今回の件でクリスは正当に扱われただろうか? 僕はそうは思わない。正直、言葉も出ないよ」