伊集南

オランダのアムステルダムで行われた3人制バスケットボール『3×3』のワールドカップ。女子日本代表は1カ月前のアジアカップで銅メダルを獲得しており、チェコ遠征を経てチームの成熟度を上げて迎えた今大会でもメダル獲得を目指したが、フランス、スイス、オーストラリアに3連敗した時点でグループリーグ敗退が決定。最終戦でアンドラに勝利したものの、予想以上に早く大会を終えることになってしまった。3連敗はすべて接戦での競り負け。「10分をトータルして考えたら日本のバスケットができなかった。そこを貫いたチームが勝って、私たちにはそれが足りませんでした」と大会を振り返る伊集南に話を聞いた。

「勝ち方はつかめなかったが、負け方はもう十分知った」

──お疲れ様でした。まずは大会を振り返ってください。

予選ラウンド敗退は残念な結果です。自分たちのプールにいた2チームがベスト4に進出したので、タフな予選だったのは間違いないんですけど、優勝したのが同じアジアの中国なので「先を越された」という気持ちがあります。

──負けた3試合はすべて接戦でした。強豪相手に接戦に持ち込めたことに意味があるのか、勝つ力がないから接戦をすべて落としてしまったのか。伊集選手はどのように受け止めていますか?

勝ち方をつかめなかったと思います。やっぱり相手と比べると覚悟が足りない。もちろん覚悟を持って挑んだつもりですが、実際にやってみるともっと覚悟が必要だと思いました。他のチームは4人の選手がワールドツアーを回ったり、いろんな大会に出て力をつけ、ケミストリーを作ってワールドカップに臨んでいました。日本代表はまだ発展途上でいろんな選手を組み合わせたり、これからの段階です。強いチームはみんな何かしらを犠牲にしてこの大会に懸けている。だから勝ちきることができる。そこに日本はまだ追いついていないと思いました。

強いチームは数をこなしていて「この場面はこういう戦術で」とか「こういう気持ちで」とかが明確で、日本はそこで迷いがあったというのが事実です。ただ、勝ち方はつかめなかったですが負け方はもう十分知ったので、同じことを繰り返さないことがすごく重要だと思います。

──「あと1本決めていれば勝てた」という試合が続きましたが、その1本を決めるか決められないかの差は、小さな差に見えて実際はすごく大きいものですか?

最後のシュートだけ見てしまえばそう思うかもしれませんが、私は「あと1本」の差だとは思っていなくて。日本の機動力やタフなディフェンス、ハードプレッシャーをずっと続けていれば競ることもなく勝てたかもしれません。10分をトータルして日本のバスケットができたかと言われたら、そうじゃなかったんです。そこを最初から見返すと、小さな綻びが大きな負けに繋がるんだと痛いほど感じました。

シュート力も必要ですけど、ハードなディフェンスからリズムを作っていくのが日本のスタイルです。それと日本の機動力は私たちにしかないものだと確信していて、そこを私たちがどれだけ強みにして、貫いていけるか。優勝した中国は、どのチームよりも自分たちのバスケットを徹底していました。それがどんなスタイルであれ、良い時も悪い時も、どんな状況でも自分たちのバスケットを貫くことが大事なんだと感じました。

日本はメダルを狙えるという評価をいただいていますが、他国も力をつけてきていることを受け止めて、ここからの1年間をどういう道筋を立てて突き詰めていくのか。そこをもう一度、精査してやらなきゃいけないと思っています。

伊集南

「日本の新しい3×3を作り、世界に通用するスタイルに」

──オリンピックまであと1年。代表活動はこれで一区切りかと思いますが、この先を伊集選手はどう過ごしていくつもりですか?

まだ何かしら大会があると思うので、私を含めいろんな選手にまだチャンスがあります。そこはポイントを稼ぎ、日本のレベルを上げていく機会だと思っています。自分のチームに戻ってから個人のレベルを上げることも日本代表の力になります。それはデンソーアイリスのためにもなるので、とにかく目の前の課題を一つずつクリアしていくことだと思っています。

──これからデンソーに戻った時に、3×3のことを念頭に置きながらプレーすることで、5人制のWリーグでのプレーには何らかの変化があるのでしょうか?

ボールもルールも違いますが、私は3×3を始めた時からどちらも貢献する気持ちでやっています。去年までの活動とは違ってくるかもしれませんが、私のやるべきこと自体は変わりません。私たちデンソーは優勝が目標で、そこに自分が貢献するということはこれまでと同じです。もっと自分で積極的に点を取りに行くのが私の課題で、そこは3×3で力をつけてクリアして、Wリーグのコートで成果を見せたいと思っています。

Wリーグの選手の一人としてバスケットボール界を盛り上げたいという気持ちと同時に、3×3では私はまだルーキーの立場ですけど、今まで3×3を築き上げてきた選手たちに敬意を表しながら日本の新しい3×3を作っていけたらと思います。それを世界で通用するスタイルにするのが自分たちの役割だとも思っています。

──ワールドカップの悔しさをどのように今後の糧にしていくかが大事ですね。

今回のワールドカップは結果が伴いませんでしたが、日本のレベルが上がってきているのは事実です。予選ラウンド敗退という結果を受けて今後どうなっていくかは私たち選手次第です。チャンスがある選手が、それをどれだけチャンスだと受け止めるか。その場に出られるのなら積極的に出てアピールすべきですし、選手はパフォーマンスで見せていくしかない。だから私としては3人制でも5人制でも、しっかりと良い準備をして私のプレーをいろんな人に見ていただけるようにしたいと思います。

3×3をやったから5人制で緩くなったとか、パフォーマンスが落ちたとか、絶対にそうは見られなくないです。3人制も5人制も同じバスケットですから、常に良い準備をして臨みたいです。