文=鈴木健一郎 写真=鈴木栄一

「他の選手がやらないことを、自分がしっかり」

チャンピオンシップのセミファイナル、シーホース三河は栃木ブレックスと対戦する。先週末、琉球ゴールデンキングスとの激闘を制した直後、千葉ジェッツを破った栃木ブレックスが対戦相手に決まった。それと同時に、相手が千葉であれば実現したホーム開催は消え、ブレックスアリーナに乗り込むことが決まっている。

エースの比江島慎は「ここまで来たらホームでやりたかったので、心の中では千葉を応援していました」と苦笑する。「ディフェンスがしっかりしたチームだし、フィジカルも強いのでタフな試合になる。アウェーなので飲み込まれないように出足からしっかりやりたい。個人的にはすごく嫌で、嫌なイメージしかないです。でも決まった以上、しっかりと準備していきたい」と気を引き締めた。

金丸晃輔は「まず栃木が勝ったと聞いた時は、あの歓声の中でやるのかという印象でした。個人技ではなくチームでやってくる、出た選手が自分の仕事をしっかりと徹底してやってくるチームなので、全体的に警戒しないといけない」と表情をこわばらせる。

ただ、柏木真介だけは「あの雰囲気はすごいので、楽しみながらしっかりと自分たちのバスケットをやっていきたい」と不敵な表情。百戦錬磨のベテランは、勝負どころのチャンピオンシップに照準を絞ってきっちり調整してきた。琉球との2試合を「プレーオフというのはタフなゲームだとあらためて感じました」と振り返りながらも、身体はしっかり動いている。鈴木貴美一ヘッドコーチからも「一番コンディションが良い」と言わしめた。

35歳の柏木は言う。「ケガやそういう部分では全く心配ないです。今年は良いコンディションで1シーズンやれているので、ここに来て特に良いというより、良いコンディションを持続しながらここまで来れています」

昨年のNBLプレーオフでも柏木は正念場で真価を発揮。結果的にはファイナルで敗れたものの、勝負どころで攻守に存在感を放った。今の彼は、その再現の予感を漂わせている。今度は違う結果を期待しながら──。

「プレーオフになるとそれぞれが力みすぎたりとか、オフェンスにどうしても力を注いでしまうケースが多いと思います。そういう部分でバランスを取るために、他の選手がやらないこと、例えばディフェンス、ルーズボール、リバウンド、ゲームコントロール……。そういうところを自分がしっかりとできればという気持ちでこの2試合に臨みました」と柏木は琉球との2試合を振り返る。

「栃木か千葉か」というテーマにも柏木は「どっちが来ても強豪には変わりがないので」と乗ろうとしない。「しっかりと自分が準備しないといけないです。栃木で注目する選手というと……タレントが揃っているので全員を警戒します。強いて言うなら同じポイントガードの田臥(勇太)さんかなと思います」

いよいよシーズンの正念場、勝負どころでベテランが見せる仕事ぶりに注目したい。