文=丸山素行 写真=B.LEAGUE

「ボールが来たら思いきり打とうと意識した結果」

Bリーグチャンピオンシップクォーターファイナル、川崎ブレイブサンダースはサンロッカーズ渋谷に連勝し、セミファイナルに駒を進めた。ニック・ファジーカス、辻直人の2枚看板が売りの川崎だが、強さの秘密はそれだけではない。両エースの脇を固める選手のパフォーマンスが高く、なおかつ安定しているのだ。

先発を務める長谷川技はSR渋谷との2戦で、7本中6本の3ポイントシュートを沈め勝利に貢献した。ショットクロックわずかなところで放った1本もカウントされているため、実質100%の成功率だ。

「ディフェンスが辻とニックに集まるので、僕がフリーになることが多かったです。ボールが来たら思いきり打とうと意識した結果が、昨日今日の結果につながったと思います」と長谷川は淡々と話す。

フリーが多かったからと謙遜するが、シュート力がなければ不可能な芸当だ。レギュラーシーズンの3ポイントシュート成功率はファジーカスに次ぐ41.8%を記録している。ハードにプレーしながらも、どこか余裕があるように見える長谷川に「もっと得点を狙ってもいいのでは?」と聞くと、「遠慮ですかね。それは北さんからもいつも言われていて、そこが課題です」と照れ笑い。

どの対戦相手もファジーカスと辻を抑えようとするが、結果的に抑えきれるチームは少ない。それは周りの選手が確実に得点することで守りどころを見失い、2人を抑えるだけでは勝利につながらないからだ。

「僕らのシュートが入れば、そこからカウンターのドライブもできるので、ニックたちのディフェンスがこっちに寄ってきます。そこからのパスアウトっていう動きができれば強いチームです」というように、この形が出た時の川崎は絶対的な強さを誇る。

「僕は別にそんなに目立たなくていいです」

190cm90kgという恵まれた体格は長谷川の誇るところ。4番ポジションとしてはそこまでサイズに優れるわけではないが、2番、3番ポジションでは大きい部類に入る。もともとはインサイドプレーヤー。「プロになって、東芝に入ってから外のプレーヤーになりました。どちらかといったらインサイドのほうが好きですね」と長谷川は言う。

3ポイントシュート成功率が40%を超える選手が、「インサイドのほうが好き」というから驚きである。また「ガードがマークについてきて、ミスマッチになったら突こうとは思ってます」という言葉に、川崎のオフェンスセレクションの豊富さが垣間見える。

「ニックと辻がいるのでそこを起点に、自分のプレーよりチームオフェンスですね」と話すも、「攻撃的な姿を披露できたらいいですね」と、北ヘッドコーチからも求められるオフェンス強化に意欲を見せる。

終始笑顔で話してくれた長谷川だが、やはりその発言は控え目に感じる。突出した数字を残すわけではないが、試合の大事な局面で頼りになる長谷川にはもっとスポットが当たってもいいのではないか。ところが長谷川は照れた顔でこういう。「僕は別にそんなに目立たなくていいです。そういう欲はあまりなく、明るいタイプでもないので」

自分をアピールすることには控え目な長谷川だが、チームの勝利に対しては貪欲だ。今週末のアルバルク東京との一戦に向けても「相手どうこうよりも、自分たちのバスケができれば強いチームですし、いい結果につながると思います。自分たち次第ですね」と、それまでとは打って変わって自信に満ちた表情を見せた。

『主役じゃなくても』という長谷川のメンタリティが、川崎のバランスを整え、『盤石ぶり』を支えている。両エースのプレーに目がいくのは自然だが、ロールプレーヤーのパフォーマンスにも注目してもらいたい。