ドノバンの選手掌握術の基本は『コミュニケーション』
サンダーのヘッドコーチに就任して1年目のビリー・ドノバンが、NBAにすぐさま順応して結果を出せると予測していた人は、決して多くはなかったはずだ。
フロリダ大で19年間ヘッドコーチを務めたドノバンは、2007年からサンダーの指揮官を務めたスコット・ブルックスに代わり、今シーズンから西の強豪の現場を預かった。
指導者としての経験や実績(2006年と07年にNCAAで連覇達成)は十分ながら、そのノウハウはNBAでは通用しないだろう──そんな見方をドノバンは見事にはねのけ、スパーズを撃破し、ウォリアーズを追い詰めるまでにサンダーを成長させた。
大学の選手とプロ選手とではコントロールの難しさが桁違いだ。これは、大学のコーチがNBAで通用しない理由としていつも挙げられることだ。しかしドノバンは、サンダーを率いる上で特に重要となるエースのケビン・デュラント、ラッセル・ウェストブルックとの関係性をしっかりと築き上げた。
『Washington Post』は、ドノバンとウェストブルックとの関係性を示すエピソードを伝えた。
ウォリアーズとの西カンファレンス決勝第4戦、ドレイモンド・グリーンがフリースローを放った際、ウェストブルックはベンチに近づき、ドノバンの耳元でこう囁いた。「ディフェンスで苦しんでいるエネス(キャンター)を下げたほうがいい」
ウェストブルックの意見に耳を傾けたドノバンは、その数分後にキャンターをベンチに下げた。
この交代について、ドノバンは試合後、このように説明している。「私は、選手たちの意見や考えを大事している。ほとんどの場合、選手たちが感じていることには信憑性がある。それに、選手たちには、私に何も意見を言えないと感じてもらいたくはない。ケビンでもラッセルでも他の選手でも、私と長い期間コミュニケーションを取ってきた。私も、彼らの意見を聞きたい」
今後の試合でも、ウェストブルックらが同様のコミュニケーションをドノバンと取る光景が見られれば、それはサンダーにとって良い兆候と言えるだろう。