ザイオン・ウイリアムソン

ザイオン中心は変わらずとも、方向性は明確に変化

驚くほどシェイプアップしてきたザイオン・ウイリアムソンの姿は、今シーズンのペリカンズが大きな変革を起こす前触れかもしれません。チーム作りが進んだかと思えばザイオンを筆頭に主力のケガで作り直すことを繰り返してきたペリカンズにとって、エースが継続して試合に出続けることは何よりも重要です。

この1年はペリカンズにとっての転換期でした。ザイオンのケガもあって成績が低迷しただけでなく、デッドラインでチームの中心だったブランドン・イングラムを放出すると、オフにはCJ・マッカラムもトレード。さらにはフロントにもメスが入り、ジョー・デュマースがチーム編成の舵取りを任されることになり、抜本的な再建へは進まなかったものの、明らかに方向性を変更してきました。それはザイオン中心の最適なロスターが定まっていないということでもあります。

ザイオンは198cm128kgと普通ならば動けないレベルのサイズながら、ガード並のクイックネスやジャンプ力にセンター並のフィジカルを持ち合わせる文字通りのモンスターです。ただし、3ポイントシュートの精度が低く、運動量にも不安があったため、インサイド側で起用するのが基本です。

しかし、当然ながら高さがないためインサイドの合わせには使いにくく、自らボールをもってアタックしていくことになりますが、得点力は抜群でもプレーメークが上手いわけではありません。過去には起点となる仕事を任されたこともあれば、シュータータイプのセンターとの組み合わせもありましたが、どれもベストフィットせず、何よりザイオンが離脱するので正解が分からないまま作り直しを余儀なくされてきました。

今シーズンはストレッチタイプのセンターは獲得していない一方で、オールラウンダーが増えており、そこにザイオンがシェイプしたことも加わり、ポジションレスな戦い方にシフトしてきそうです。スペーシングとドライブアタックを中心に組み立てるオフェンスと、ハイプレッシャーでオールスイッチも可能なディフェンスが構築されれば、ザイオンを中心としながらもザイオンの離脱にも困らない形が作れます。

特にディフェンス面はデジョンテ・マレー、ハーブ・ジョーンズ、トロイ・マーフィー三世、ホセ・アルバラードといったプレッシャーをかけられる選手が揃っているため、積極的にボールを奪いに行けば、ケボン・ルーニーやイブ・ミッシなど機動力のあるビッグマンも生きてきます。ただし、その前提も運動量を保てることなので、シーズンを通してケガ人を出さないことは大きなポイントとなります。

今シーズンは良くも悪くもザイオンを中心に据えたチーム。そのポテンシャルがどこにあるのかが問われます。