小川春太

高さとパワーと身軽さを併せ持った逸材

バスケットボール男子日本代表はサイズと能力を兼ね備えた若手選手を発掘することを目的とし、第1次育成キャンプをスタートさせている。招集された20選手の平均年齢は22.1歳で、平均身長は195.4cm。目的通り、過去最高クラスのサイズを持つ若手が集った。

その中で目を引いたのは20選手の中でも3番目に若い、18歳の小川春太だ。アメリカ人の父と日本人の母を持つ小川は、196cm82kgと数字だけを見るとやや細い印象を受けるが、リング付近でパスを受ければほとんどダンクに持っていく力強さがある。また、パワーフォワードではあるが3ポイントシュートも打つことができ、特にミドルシュートの精度は非常に高い。

小川自身もミドルレンジのシュートやダンク、ポジションを問わず多彩なプレーができることをストロングポイントに挙げる。またディフェンスも得意としており、速攻を受ける場面で田中力のレイアップをブロックしたシーンは圧巻だった。

アンセルフィッシュなプレーも小川の魅力だ。特に海外でプレーする選手は体勢が悪くてもフィニッシュに持っていく傾向が強い。決してネガティブな面ばかりではないが、小川は『正しいプレー』を選択する。そのためスタッツリーダーにはならないが、自身のプレースタイルから最適解を見つけ出し、「オフェンスでもディフェンスでも頼られる存在になりたい」との目標を語った。

小川春太

マサチューセッツ工科大学へ進学するエリート

小川は自分自身を客観的に見ることができ、メディアの質問にも冷静に答えを探す。18歳らしからぬ立ち居振る舞いは、どこか知識人のような雰囲気を醸し出す。

それもそのはず。小川はマサチューセッツ工科大学へ進学する超エリートの一面も持っている。マサチューセッツ工科大学(通称MIT)はノーベル賞受賞者を多数輩出し、世界でも屈指の名門校の一つとされている。

日本で例えるのであれば、東京大学に進学しながら代表に選ばれたというところか。もちろん、MITのすごさは東大の比ではない。究極の『文武両道』プレーヤーである。

MITで何を専攻したいかと問われれば「バイオケミストリー」と難しそうな横文字を答えた。そして、「物理とコンピューターサイエンスも勉強したい。1年後に決められるので、その3つのどれか」と、勉強面でも先をしっかりと見据えている。

勉学に専念する選択肢もあるが、それでも小川は「両方とも人生の一部」と話し、バスケに対しても真摯に取り組んでいる。

それと同時に「僕は自分がアメリカ人だとは思っていない。半分アメリカ人、半分日本人だと思っている。なので日本の誇りはあります」と、日本代表へも強い思いを持っている。

それでも、バスケを本格的に始めたのは13歳からで、周りとの経験の差を感じている小川は「日本チームのレベルは見ているので、出れなくても悲しくはない」と、自分がまだ日本のトップでプレーできる実力ではないことを暗に示した。

今回のキャンプは、7月12日から台湾で開催されるウィリアム・ジョーンズカップの選考も兼ねている。高いレベルで経験を積むことができれば、まだ経験の少ない小川は飛躍的に成長できるはずだ。

自分を客観的に捉え、現実的に見れる選手は稀である。勉強とバスケの二刀流を体現する小川が、日本代表の一員としてプレーすることに期待したい。