新ルールの影響「リーグの勢力図が変わってくることもある」
Wリーグ2024-25シーズンが来週末の10月18日に開幕する。実力伯仲の中、優勝候補の筆頭と言えるのは3連覇を目指す富士通レッドウェーブだ。長らくチームを率いていたBTテーブスヘッドコーチが退任したが、昨シーズンの主力は揃って残留しており、タレント面で頭1つ抜けている。
キャプテンを務める宮澤夕貴は、7月の『FIBA女子アジアカップ2025』では準決勝で開催国・中国を破る立役者となり、チーム2位の平均10.8得点と1位の平均7.3リバウンドと活躍。さらに9月末の『FIBA女子バスケットボールリーグアジア2025』でも平均17.0 得点、6.0リバウンド、3ポイントシュート成功率50%と好調をキープした。高確率の3ポイントシュートを軸としたオフェンス、鋭い読みとタフさが光るディフェンスを備える宮澤は今シーズンも、タレント集団の富士通にあっても替えのきかない存在だ。
リーグ随一の堅守を誇る富士通の根幹は、ここ一番でしっかりリバウンドを取り切れるゴール下での強さだった。だが、今シーズンからWリーグの外国籍選手に関わるルールが変更。実質的には留学生しかプレーできなかった状況から一変し、世界各国のプロチームでプレーしていた長身選手たちが各チームに加わった。
富士通もリーグ連覇に貢献した身長190cmのジョシュア ンフォンノボン テミトペが残留し、新たにヨーロッパでの実績豊富なアカトー オーサリテン エブリンを獲得した。しかし、どのチームも富士通に負けないサイズを備えるようになった今シーズンについて、宮澤は「めちゃめちゃ変わります(笑)」と言った。
「私がガードだったらそこまで意識することはないかもしれないですが、相手の4番、5番を守る選手なので、毎試合、身長が高くて身体の強い選手とマッチアップしなければいけないと意識します。どのチームにも新しい外国籍選手が加わったことで、リーグの勢力図が変わってくることもあると思います」
「プレッシャーは去年のほうがありました」
日本人選手たちにとってよりタフな状況になったが、日本代表のことを考えるとプラスになると宮澤は続ける。「やっぱり海外の選手の腕の長さ、ジャンプ力や反応の速さは実際に対戦してみないと分からない。そこに対応するには慣れが必要な部分もあると思います。世界標準のサイズ・フィジカルを持つ選手とWリーグで対戦できるのは、代表に向けて良い機会になる。その反面、リーグの戦いがよりタフになります」
レベルが上がることを予想されるWリーグにおいて、宮澤は引き続きハイパフォーマンスを見せるため進化に貪欲だ。アジアカップ前の強化合宿において、宮澤はディープスリーの取得に取り組んでいると明かしてくれたが、今は3ポイントシュートのバリエーションを増やし、ペイント内での決定力向上も重視しているという。
「ディープスリーだけでなく、ドリブルから打つ、より動きながら打つなど、いろいろな形で3ポイントシュートを打てるようにしていきたいです。また、ドライブからのフィニッシュは永遠の課題というくらい課題です。ただ、自分にとっては3ポイントシュートがあっての中のプレーなので、そればかりを練習をするのは良くない。この両立は難しいですけど、それが楽しさでもあります」
富士通はヘッドコーチこそ変わるが、新指揮官の日下光はアシスタントコーチからの昇格で、主力メンバーも変わらない。継続路線ではあるが、3連覇はチャレンジの気持ちが大きいと宮澤は語る。
「今までの継続でもありますが、同時に新しいスタートでもあります。今年のチームスローガンが『挑 –CHALLENGE-』で、リーグ3連覇、2年連続でリーグと皇后杯の2冠を狙えるのは自分たちだけです。勝たないといけないプレッシャーはそんなにないです。去年のほうがありました。新しいルールになり、私たちも新体制となって、新しいチャレンジの気持ちのほうが強いです」
宮澤がこれまでのキャリアで、チームの中心選手としてつかんできた栄冠はWリーグ史上屈指の多さだ。10年以上にわたって勝ち続けもなお、現状維持を良しとせず、新たなチャレンジを楽しめるハングリーさで、今シーズンも宮澤は富士通を新たな栄冠へと導いていく。