佐古賢一の『バスケット談義』vol.14~いよいよプレーオフ、決戦に臨む指揮官の心境は「昇格の前に、目標はB2優勝」

2017/05/11
Bリーグ&国内
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文=岩野健次郎 写真=高村初美

華々しいスタートを切ったBリーグにあって、2部リーグである「B2」はやや注目度が落ちるが、それでもB1所属クラブに劣らぬ実力を備えた強豪も存在する。その一つが広島ドラゴンフライズだ。初年度のB1昇格を虎視眈々と狙うチームを率いる「Mr.バスケットボール」こと佐古賢一ヘッドコーチに、チームの状況やバスケ界の話を聞く。

PROFILE 佐古賢一(さこ・けんいち)
1970年7月17日生まれ、神奈川県出身のバスケットボール指導者。中央大学3年次に日本代表入り。卒業後はいすゞ自動車リンクスに入団し、2002年にはアイシンシーホースに移籍して「プロ宣言」をした。ずば抜けた技術と勝負強さで数々のタイトルを獲得し、2011年に現役引退。広島の初代ヘッドコーチとして2014年から指揮を執っている。

4月29日と30日、B2西地区2位を争う熊本ヴォルターズとのアウェーゲームを1勝1敗で終え、2位をキープして迎えたレギュラーシーズン最終節。広島ドラゴンフライズは愛媛オレンジバイキングスを相手にきっちり2連勝を飾り、B2プレーオフへの出場権を手にした。
プレーオフのセミファイナルで当たるのは、西地区でしのぎを削った島根スサノオマジック。地区優勝は譲ったが、B2の優勝は譲れない。今週末の対戦で勝てば、いよいよB1昇格が決まる。それでも佐古ヘッドコーチは「目指しているのはB2優勝」と語った。

チャレンジャーという立場ですが、プライドを持って

──まずはレギュラーシーズン最終節、愛媛との戦いを振り返りたいと思います。まずは6日の第1戦、77-52で勝利しました。

第1クォーターから集中して良いディフェンスができました。しっかりと上からプレッシャーを掛けられたのが良かった。この大事な試合でベテランの山田(大治)、キャプテンの朝山(正悟)が良い仕事をしてくれました。

──第2戦は111-77、34点差を付ける大勝でした。

途中、少しだけディフェンスのトラブルがありました。ですが、各クォーターでリードを奪って、全体を通してチームのリズムも良かったと思います。やはり「この試合でプレーオフ出場を決めるんだ」という気持ちや覚悟がチーム全体でできていて、良いプレーができたと思います。

──いよいよプレーオフです。B1昇格を懸けた島根との試合を控えた心境を教えてください。

B1昇格の前に、我々の今シーズンの目標はB2優勝です。島根は絶対に倒さなければいけない相手だと思っています。西地区優勝をしている島根に対して我々はチャレンジャーという立場ですが、プライドを持って試合に臨みます。このプレーオフのために1年間戦ってきました。ここまで来たらあとは精一杯戦うだけですので、気持ちも身体も良い準備をしたいです。

島根でのアウェーゲームとなり、おそらくは4000名以上のブースターの前でのタフな試合となります。それでも我々は、熊本での厳しいアウェーの死闘を経験してきました(4月29日の熊本県立総合体育館は4356人、30日は4899人の観客を集めた)。冷静に試合運びを行うことに気負いはありません。

島根の調子は上向きかと思いますが、我々も調子を上げてきました。拮抗したナイスゲームになるかと思います。

──島根とは2勝4敗、相当な強敵です。どこが試合のカギを握ると思いますか?

島根は非常にシュート確率の高いチームですから、我々も良いシュートセレクションをしてしっかりとシュートを決めていくこと、ターンオーバーを抑えて余分な速攻での失点を防ぐこと、そしてチームとしてのフリースローの成功率を70%以上に上げることでしょうか。

我々のチームとしては、オフェンス、ディフェンスともに非常に高い完成度まで来たと感じています。シーズン終盤に負けられない試合が続きましたが、特にディフェンスの完成度が高くなりました。オフェンスも、ボールの動きや人の動きについてはコーチ陣が指摘する必要がないレベルまで上がっています。フィニッシュの部分でシュートが入るかどうかというところがありますが、動きの面では問題ないですね。コートに出ている選手たちがしっかりと分かってプレーできているのが大きいです。

内容やチーム状況など一切関係ない『勝つか負けるか』

──2シーズン前のNBL時代のプレーオフでは、栃木ブレックスへの挑戦者で、失うものがない立場だったと思います。ですが、今年は開幕前から高い評価を受け、B2を優勝しての昇格を求められてきたという状況です。プレッシャーがあるのではないですか?

そうですね。前回とは求められるものが全く違って、相当なプレッシャーがあります。ですが、それは最初から分かっていたことです。一生懸命やるのは当たり前。我々に求められているのは結果を出すことです。そういった意味では、私が現役時代に勝つことが絶対に求められていたいすゞやアイシンでの雰囲気と似ていますね。私自身も現役の時の高揚感を思い出します。

──こういった大一番こそメンタルの強さが求められます。ご自身の経験からどのようなアプローチをすべきだと思いますか?

タフなゲームになる準備をしておくことです。ゲームでは良いことばかりじゃありません。どんなに厳しい状況となっても粘りとか、運というか、勝利を手繰り寄せるために、泥臭く戦っていくことがプレーオフでは絶対に必要です。

チームの伸びなどを考えるレギュラーシーズンと違って、プレーオフでは『きれいなバスケット』で勝つ必要はありません。内容やチーム状況など一切関係ない。『勝つか負けるか』、それがプレーオフが終わるまで続く唯一のことになります。勝利のためにどこまでタフになれるか、その一点でしょう。

40分間すべての瞬間を『休んではいけない時間帯』に

──セミファイナルのフォーマットは変則的なもので、1勝1敗の場合は2試合目の終了後に前後半5分ずつの3試合目を行います。通常であれば初戦を取ったチームが有利ですが、このフォーマットでは2戦目を取ったチームがその流れで3戦目を取る印象があります。難しかったという話を旧bjリーグの関係者からよく聞きます。佐古さんにとっても初めてのフォーマットかと思いますが、どう受け止めていますか?

このフォーマットだと、2試合目で内容が悪い場合は、修正やリセットする時間があまり取れないままに3試合目に突入します。こういったプレーオフは確かに初めてですが、我々にはbjリーグでの経験も多い根間洋一アシスタントコーチもいるので、しっかりと準備していきます。

──バスケットは『水物』ですが、運が味方に付くとしたらどんなことに期待しますか?

もちろん「運も実力のうち」とはよく言います。ですが、よりしっかりとした準備をした方に運が味方すると私は信じているんです。それは『一本のシュート』かもしれないし『一本のリバウンド』かもしれない。ゲームが終わって振り返ってみないと分かりません。

でも、はっきりと分かるのは、プレーオフでは『一つのプレー』で大きく流れが変わるから、それに対して集中し、準備をしていくということ。40分間すべての瞬間を休んではいけない時間帯とすることです。「えっ!?」と思うプレーが起きてしまうのか、「よし!!」と思う瞬間が訪れるのか。本当に数秒で試合の流れが変わるのがプレーオフの醍醐味です。ですから、ポジティブな瞬間を起こさせるための準備をしておくんです。

「ハッとする」ターンオーバーでドカーンと流れが変わってしまうんです。そんな試合の流れをどちらがつかむかがカギになると思います。