
オーストラリアリーグのクラブに肉薄するも惜敗
9月12日に長崎ヴェルカは、ハピネスアリーナにNBL(オーストラリアリーグ)のニュージーランド・ブレイカーズを迎えてプレシーズンゲームを行なった。試合は終始、拮抗した展開となったが、90-93で長崎は惜しくも敗戦となった。
長崎は熊谷航、山口颯斗、イ ヒョンジュン、ジャレル・ブラントリー、アキル・ミッチェルが先発。馬場雄大、川真田紘也、星川堅信、森川正明がコンディション不良で欠場となり、ベンチ入りは10人となったが、対するブレイカーズも8人のロスターでの試合となった。
序盤、長崎はブラントリーや山口が果敢に3ポイントシュートを狙うが、リングに嫌われ得点が伸びず、逆にディフェンスローテーションのミスやトランジションから失点。ブレイカーズに開始2分半で2-12と先行を許し、タイムアウトを取り仕切り直す。
松本健児リオンや森田雄次が投入され、前線からのプレッシャーが効き始めると徐々にオフェンスのリズムも良くなり、残り3分にはスタンリー・ジョンソンが速攻を奪い17-20と追い上げ、ブレーカーズにタイムアウトを取らせることに成功。その後、一時逆転するもタフショットが続き、22-24で第1クォーターを終える。
第2クォーター開始からランを食らった長崎は、ジョンソンが3ポイントシュートやリバウンドからのボールプッシュで応戦するも、ブレイカーズの高確率なシュートを抑えきれず、36-41でオフィシャルタイムアウトを迎える。熊谷の3連続得点で43-43と追いつくも、再びブレーカーズに先行を許す展開となる。しかし、長崎は踏ん張りを見せて48-52で前半を終える。
前半は個々でアタックを仕掛ける場面が多かった長崎だったが、後半に入るとセットプレーなど流れの中で連動して得点する場面が増えてくる。しかし、ディフェンスのミスから失点してしまいビハインドの時間帯が長く続き、我慢を強いられる展開に。長崎は終了間際にジョンソンが3ポイントシュートを沈め、68-69で最終クォーターへ。
序盤から徹底していた前線からのボールマンプレッシャーで流れをつかんだ長崎は、ハーフコートバスケでもズレをうまく作れるポゼッションが増えてくる。山口が積極的なアタックと巧みなステップで連続得点を挙げて、一時は73-69とリードを奪い返すことに成功するが、連続でターンオーバーからの失点を喫して再度逆転を許してしまう。
拮抗した展開の中でボールムーブから松本がアタックし、キックアウトパスに合わせた森田が3ポイントシュートを成功させて、79-77でオフィシャルタイムへ。組織的なディフェンスも機能してリードを順調に広げていたがクラッチタイムに入ると、2023-24シーズンに秋田ノーザンハピネッツでプレーをしていたロバート・ベイカーⅡに、連続でコーナースリーを決められてブレイカーズに逆転される。長崎はその後の得点が伸びず、終了のブザーが鳴り響いた。

「チームとして連携は、まだまだ高めていける」
モーディ・マオールヘッドコーチは、勝敗以上にこの試合を経験できたことがポジティブだったと話す。「今日はチャレンジングな試合になると選手には伝えていました。攻守に渡って成長できるポイントはたくさんありました。それが見えたのが今日の収穫です」
スタイルとしては激しくディフェンスを仕掛けたところから、トランジションで攻めることを徹底していた。昨シーズンよりも速いバスケを志向している。「今日は速い展開ができた時間帯もありましたが、良いチームは1試合通じて徹底してできなければなりません。相手がどんなディフェンスをしてきても、速い展開ができるチームにしていきたいです」と振り返り、今後の意気込みを語った。
このスタイルを体現したのが、今オフに秋田から長崎に加入した熊谷だ。この試合では日本人選手最多得点となる10得点と2アシストを記録してチームを牽引した。熊谷は次のように試合を振り返る。「オフェンスは点が取れていましたが、ディフェンスは改善できるところが多かったです。あとはリバウンドで負けていたので、これから積み上げていきたいです」
熊谷にとっては長崎のファンの前で初めての試合ということもあってか、序盤こそ慎重に入ってしまった。しかし、その後は持ち前のアグレッシブさを攻守に渡って発揮した。「最初は硬く入ってしまい、ボールを回しすぎてしまいました。打てる場面は積極的に打っていこうと思い、2クォーターはディフェンスから走れましたし、シュートも気持ちよく打てました」と序盤の反省を振り返り、試合の中で上手く切り替えられたと話す。
さらにチームメートについても言及すると、すでに信頼関係を築けているようだった。「スタン(スタンリー・ジョンソン)が『常に攻める気持ちが大事だ』と自分に声をかけてくれて、気持ちの切り替えができました」
オフェンス面でもステップアップできると感じている。「試合を通じて見ると、前半の得点しかなかったので、ボールを持ったらもっと自分が仕掛けても良かったのかなと思っています」
信州ブレイブウォリアーズや秋田で磨いたディフェンスでもチームを盛り上げていた。ただし、相手のピック&ロールに対してのビッグマンとの連携がうまく図れずにイージーバスケットを許す場面も散見された。秋田の時に行っていた守り方とは異なると前置きした上で、次のように展望を話す。
「韓国クラブとの試合(非公開で行なった練習試合)よりもすごく良くなっていますが、JB(ブラントリー)やスタンが5番を守る時はまだ反復ができていません。チームとして連携は、まだまだ高めていけます」
秋田で14試合しか一緒にプレーしていないが、かつてのチームメートだったベイカーⅡとの再会にも「『すごいアリーナだね』と話しました。彼は活躍していましたね(26得点)」と笑顔を見せた。
熊谷はプロキャリアを早くスタートさせて、着々と力をつけてきた。スコアリングガードとしても、激しいディフェンダーとしても長崎で力を発揮してくれるに違いない。新天地でのさらなる飛躍に期待がかかる。