ケガ人が続出し、ロスターが完全でない状態が続いた愛媛オレンジバイキングスは、5勝55敗のリーグ最下位で昨シーズンを終えた。チームの中心を務めた古野拓巳は、苦しみながらも得るものがあったと振り返る。クラブは今シーズンからサイボウズ株式会社と資本業務提携を結び、オフに積極的な補強を敢行。一躍リーグの注目チームとなった新シーズンの展望を古野に聞いた。

「負けている時でも、ひたすら鼓舞することは意識していた」

──改めて振り返ってみて、昨シーズンはどのようなシーズンでしたか?

勝てなかったのもキツかったですが、ケガをした選手が頑張ってリハビリして戻ってきて、またケガをする姿を見るのはしんどいものがありましたね。プレータイムを長くもらっていたので、もちろん言い訳をせずに勝ちを求めて頑張ってきました。でも、勝てなかったのは試合に出ている選手の責任なので、考えさせられることも多いシーズンでした。

──どういったことを考えていましたか?

自分の不甲斐なさや、力のなさを本当に感じました。「これで大丈夫なのかな?」と感じながら毎試合戦っていました。

──チームを引っ張っていく必要がある立場だと思いますが、チームメートにはどのような声をかけていましたか?

若手選手が多かったので「経験を積んでいくチャンスだ」と話していました。ミスを恐れずにプレーしようとか、ターンオーバーで終わるならシュートで終わったほうが良いとか。負けている時でも下を向かずにひたすら鼓舞をし続けることも意識していました。

──戦績だけを見れば「良かったシーズン」とは言えないと思いますが、武内理貴選手や平凌輝選手、原田大和選手といった若手の出場機会も増えて、得点にからむ場面も多かったです。長い目で見れば、決して悪いシーズンではなかったととらえることもできます。

本当にその通りだと思いますね。武内は途中加入でしたが、キャリアで一番良いスタッツを残しましたし、広島ドラゴンフライズでチャンピオンリングを取っても個人としては悔しい思いをたくさんしたと聞いていました。苦しい中でも、みんなが責任を持ってやろうという姿勢だったので、平や大和にもアドバイスはたくさんしていました。

──「昨シーズンを経験したからこそ次に繋がった」と言えるシーズンにしたいですね。ポジティブな要素としては、平均観客数が1,500人以上を記録して、新リーグ『BリーグONE』の基準をクリアしました。最終戦では4,200人以上が来場しましたね。

来てくれたお客さんはもちろんですが、会社の頑張りに本当に感謝したいなと思います。なかなか勝てない状況が続くと、お客さんは減るものだと思いますが、最低勝率だったにもかかわらず基準をクリア達成できたのは、フロントスタッフの頑張りとたくさんの方を誘って観戦に来てくださったブースターさんのおかげです。

──愛媛に在籍して3年になりますが、年々お客さんが盛り上がっていると感じますか?

かなり感じていますし、演出もどんどん良くなっています。だからこそ、あとは勝つことですね。今の良い流れを自分たちのプレーで、もっともっと良くしていきます。

「新ヘッドコーチはチームワークを重視している」

──このオフはリーグを騒がせる補強を敢行しました。

日本人は新加入が2人ですが、外国籍選手3人(マット・ハームス、シャキール・ハインズ、ミッチェル・ワット)と帰化選手のマイク(マイケル・パーカー)のインパクトがかなりありましたね(笑)。

──8月30日には徳島ガンバロウズとのプレシーズンマッチがありました。実際にプレーしてみての感触はどうでしたか?

ファーストゲームだったので最初は硬さがあってターンオーバーを多く犯してしまい、ハーフタイムに「自分たちがやるべきことをやらないといけない」とヘッドコーチから檄が飛びました。そこから徐々に自分たちのやりたいことが見えて、プレーにも反映できました。

──ペナ・ガルセス・マヌエル新ヘッドコーチは、どういうことを大事にする指揮官でしょうか?

完全にチームワークを重視しています。まずは「このチームはファミリーだ」というところからスタートしていて、誰かが困っているなら、誰かが手を差し出さないといけないと話しています。あとはやっぱり厳しいですね(笑)。練習から誰にでも怒ります。威厳があるというか、ドスンと構えてる感じがします。

──古野選手はポイントガードとして、ヘッドコーチの意図をコートに落とし込む役割だと思います。コミュニケーションは多くとる必要がありそうです。

プレーコールが多いので、まずはそれを自分が覚えた上でチームメートに対して間違っている部分を言えるようにしていかないといけないです。スクリーンのヒットの仕方など細かい決まりごとも多くて、全員で突き詰めてやっていく必要があるので、逆に良い雰囲気でできていると感じます。

──チームからは『地区優勝』『プレーオフ進出』『2026-27シーズンのBプレミア参入』と目標が掲げられていましたが、その他にチーム内での共通認識はありますか?

まずは先を見すぎずに、目の前の1試合を勝っていくことだと思います。最終目標も重要ですが、自分たちが一つずつ積み重ねていくことに集中しようという感じですね。

古野拓巳

「みんなで練習から積極的に打っていく姿勢を出していきたい」

──もっと伸ばしていけると思うことはありますか?

外国籍選手が全員入れ替わっているので、意思の疎通は重要になってくると思います。まだゲームライクに練習をしているのは2〜3週間だけなので、これからターンオーバーを減らして、オフェンス効率を上げることはできると思っています。

──ディフェンス面ではどうでしょうか?

ミッチェルやマット、マイクは高さがあるので、この前の徳島とのプレシーズンゲームでも相手は嫌そうにしていましたね。インサイドが強固な分、日本人のアウトサイドの選手がしっかりプレッシャーをかけるディフェンスができるかなと思います。

──B2も年々レベルが上がってきていて、外国籍選手だけでは勝てないリーグになっています。日本人選手のステップアップとして何が必要でしょうか?

3ポイントの成功率はリーグ1位を取るぐらいの気持ちでやる必要があります。マヌヘッドコーチは「打てるところはしっかり打っていこう」というタイプなので、自分も含めて、みんなで練習から積極的に打っていく姿勢を出していきたいですね。

──古野選手は得点力もアシスト力もあるガードですが、フィニッシャーが増えたことで、よりプレーしやすくなりそうですね。

ピック&ロールのシチュエーションは増えるので、どんどんやっていけると感じています。外国籍選手にディフェンスも寄るので、ミドルのフローターもいっぱい打てそうだなと。

──フリースローラインあたりのフローターは得意ですものね。

あのあたりって、ちょうど良いんですよね(笑)。ビッグマンが出てこない位置ですし、マークマンがチェイスしてくれたらファウルドローン(ファウルをもらうこと)も狙えますし。愛媛に来て新しい武器になっています。フローターとアシストのバランスが良くなれば、オフェンスの効率はグッと上がりますね。

──チームの中心選手として何が求められるシーズンになりそうですか?

積極的にコミュニケーションをとることも必要ですし、声をどんどん出してネガティブな雰囲気を作らないのは大事だと思います。60試合をやる中では、良い時も悪い時も絶対に出てくるので、そこでネガティブなほうにフォーカスせずに、常に前を見てポジティブな気持ちだけを持っていくことが目標に近づくことに繋がります。自分の調子でチームの成績が左右されないようにしていきたいですね。

──最後に応援している方へメッセージをお願いします。

昨シーズンの悔しさを絶対に晴らしたいので、一戦一戦を大事にして勝利を求めて頑張ります。ぜひ会場で愛媛オレンジバイキングスの勝利を見に来てください。応援よろしくお願いします。