
1勝3敗からのグループリーグ突破へ望みを繋ぐ勝利
ボスニア・ヘルツェゴビナはユーロバスケット2025の開幕前から揺れていた。大会前のテストマッチでは全く振るわず、ヘッドコーチのアディス・ベチラギッチはエースのユフス・ヌルキッチに対して「身体が絞れておらず、ほとんど走れない」と批判した。
開幕前夜の会見で指揮官ベチラギッチは、「走っていないわけじゃないが、彼が望むように走れていない。これから調子を上げていくと言ったつもりだ」とこの発言を釈明。その隣に座ったヌルキッチは「コーチからファンに向けたリップサービスさ。あれから調子はかなり上がっているから心配は必要ない」と笑顔で語った。
この時点でヌルキッチは「ギリシャ戦がグループリーグのカギになる。ヤニス・アデトクンボとの対戦が楽しみだ」とコメント。この時点での彼の想定は「上位進出のカギ」だっただろうが、ボスニア・ヘルツェゴビナは開幕戦で格下のキプロスに勝利しただけで1勝3敗、大混戦となったグループCを突破するにはギリシャに勝つ必要があった。
こうして迎えた現地9月2日のギリシャ戦。試合開始直前にヤニス・アデトクンボの欠場が発表された。膝の状態は万全ではないとされるアデトクンボについて、ヘッドコーチのバシリス・スパヌリスは「ヤニスは私が起用したい時に、起用したいだけ使える」と発言しているが、アデトクンボは第2戦に続いて第4戦も欠場。過密日程の大会を万全のコンディションで戦い通すための温存なのか、やはり膝の状態が悪いのかは謎のままだ。
いずれにしてもアデトクンボはプレーせず。それでも試合序盤からギリシャが運動量でもプレーの強度でも上回り、最初の6分で18-7と2桁のリードを築いた。しかし、指揮官ベチラギッチが「もうあきらめるのか!?」と檄を飛ばしたタイムアウトを機にボスニア・ヘルツェゴビナは立ち直り、第2クォーター途中に逆転。その後は盤石の試合運びでリードを守り、80-77で今大会2勝目を挙げた。

ヌルキッチ「コートにいない選手のことは気にしない」
ヌルキッチは18得点10リバウンド3アシストの活躍で勝利に貢献した。試合後の会見でアデトクンボの欠場について問われると、「彼が何者であるかは分かっているけど、彼の欠場が試合を変えたとは思わない」と答え、こう付け加えた。「コートにいない選手のことは気にしないよ」
指揮官ベチラギッチも、アデトクンボ欠場を知っても「ゲームプランは何も変えなかった」と語る。「彼に対するディフェンスは用意していたが、それを使わなかっただけだ。彼が出場していても40分間プレーするわけじゃない。ヤニス不在の時間帯のゲームプランがあり、それを遂行しただけ。特別なことは何もない」
開幕戦で快勝を収めたものの、その後は3連敗。ギリシャ相手の勝利はチームを取り巻く重い雰囲気を一変させる。それでもチームのポジティブな変化をベチラギッチはこう説明した。「初戦に勝った時は大騒ぎだったが、今日は静かだった。私がロッカールームに戻って最初に選手たちに言ったのは『今日は歌わなくていいのか』だったよ」
「我々はまだ何も成し遂げていない。今日の勝利はチームにとって重要な1勝になるかもしれないが、それはこの大会で我々が何か重要なことを成し遂げた時だ。我々が考えるべきべきは10点差を付けて勝つべき試合を3点差で終えたことであり、次の試合でそのミスを繰り返さないことだ。今日の試合で自信を得て、さらに重要な試合でもっと良いプレーができることを願っている」