文=丸山素行 写真=B.LEAGUE

横浜の堅守をこじ開けたビッグマン太田のポストムーブ

Bリーグ第31節、横浜ビー・コルセアーズはホーム最終戦で三遠ネオフェニックスに61-77で敗れ、残留プレーオフ出場が決まった。

序盤は横浜のディフェンスの意識の高さが目立つ。スイッチを多用せず1人で守り、最後までボールマンにプレッシャーをかけ続けた。ゾーンディフェンスでもパスの行き先を読み、オープンな状態を作らせない。ジェフリー・パーマー、川村卓也のブロックショットや、ファイ・パプ月瑠がジョシュ・チルドレスからオフェンスファウルを誘発するなど、フィニッシュまで集中力を切らずに粘り強く守る。

それでも三遠はチルドレスや鹿野洵生がオフェンスリバウンドを獲得し、それを高い確率で得点に結び付けてセカンドチャンスポイントで10-2と上回り、31-28とリードして前半を終えた。

後半に入ると、三遠は個の力とチームバスケットがうまく融合し、リードを広げていく。横浜のディフェンスをこじ開けるきっかけとなったのが太田敦也だ。多彩なポストムーブで出だしから3連続得点を決め、中に意識が向いたところで外に展開し、理想的なインサイドアウトのチームプレーを体現した。

4本のシュートをすべて成功させ、8得点を稼いだ太田は、「1対1の時も周りがしっかり動いてくれたので、中のスペースができてやりやすかった」と流れを作ったインサイドプレーを振り返る。

横浜、大事な出だしで踏ん張ることができず

横浜もインサイドにボールを入れるが、周りの選手の足が止まってしまい、1対1の状況でタフショットが多くなってしまう。またリングへのアタックからのキックアウトなど良い形もあったが、フィニッシュを決められない。

横浜の尺野将太ヘッドコーチは「オフェンスで重たくなってしまい、うまく自分たちのリズムに乗れなかった。そのタイミングで相手にインサイドをやられてしまい、流れを持っていかれてしまった」と劣勢を強いられた第3クォーターを分析。また「少し我慢すればウチの流れがくると思ってタイムアウトを我慢しましたが、最終的にカムバックできなかったので、自分の判断ミスもありました」と振り返る。

11点ビハインドで最終クォーターを迎えた横浜は、大事な出だしで踏ん張ることができない。オルー・アシャオルの3点プレーとなるバスケット・カウントを許し、さらには大石慎之介に3ポイントシュートを決められ、開始1分で42-59とこの日最大のリードを許した。

ジェイソン・ウォッシュバーンのジャンプショットや湊谷安玲久司朱の1対1で反撃するが、その後もアシャオルの個人技を止めることができず、最後まで流れをつかめないままホーム最終戦を落とした。

三遠は試合終盤にチャンピオンシップ用の布陣をテスト

「日本人選手で分があるところがいくつかあったので、そこでなんとか起点を作ろうと思ってメンバー構成の中でうまくミスマッチができるようにやってみたが、なかなか点数が伸びなかった」と尺野コーチが振り返るように、川村や湊谷が高さのミスマッチを突いたが、思うような効果が得られずリズムが生まれなかった。

「良いオフェンスを展開できずに20点を超えるクォーターがなかった」と言うように、横浜はインサイドでの得点が伸びず、アウトサイドシュートを多用せざるを得ない形となり、シュート成功率は38%と低調な結果に終わった(三遠は47.7%)。

細谷は「前半はいつもどおり。どのチームにもここまではできるんです」と前置きし、「後半の出だしで我慢しきれず崩れてしまった。今日も含めて外のシュートの確率が悪く、チームとして一つになれなかったです。苦しいバスケットでしたね」と踏ん張りきれなかった後半を振り返り肩を落とした。

三遠の藤田弘輝ヘッドコーチは「前半は横浜さんのペースで重たいバスケットだったんですけど、後半は良いチームバスケットができて、セカンドユニットもすごく頑張って、チーム全員で勝ち取った勝利だと思います」と充実した表情を浮かべた。

試合の終盤にはチルドレス、ロバート・ドジャー、太田の3人のビッグマンを同時に起用した。指揮官は「チャンピオンシップでは大きなラインナップと当たる可能性が高いので絶対に持っておくべきカード」とこの起用の意図を説明。「100の練習より1の試合」という言葉を用い、「ゲームの終わりに使えたのは収穫になりました」と手応えを語った。

残留プレーオフ行きが決定した横浜だが、最終節の新潟アルビレックス戦に勝利し、ホームコート開催を勝ち取りたいところだ。三遠も地区2位でのチャンピオンシップ出場を死守するために、最後まで気が抜けない。Bリーグ最終節を迎え、それぞれの思惑が交差する。