
大阪エヴェッサの藤田弘輝ヘッドコーチは、今野翔太ゼネラルマネージャーからハードワークをする文化を作ることを求められた。後編ではチームカルチャーを構築する上で重要なチーム編成について言及、さらに大阪という街とクラブの融合について語ってもらった。
リバウンドを頑張り、トランジションも守れるチーム
──前編で「昨シーズンはカルチャー作りをベースに戦ってきた」とおっしゃっていましたが、自己採点で10点中何点の評価になりますか?
僕らの世界で10点というのは絶対に存在しないと言いますか、10点を追いかけるのが仕事だと思います。ただ、ハードワークを意識づけるという部分に関しては7点ぐらいをつけても良いと思います。「前からプレッシャーをかけよう」「ルーズボールダイブをしよう」「得点差が開いていても最後まで自分たちのバスケットをしよう」といった部分は7点の評価をしても良いくらいにできたと思います。
ただ、実際の内容としては5点くらいです。トランジションディフェンスは大きな課題ですし、ターンオーバー数もリーグでは多いほう。ペイントエリアの失点も非常に多く、課題がたくさん出たシーズンでもありました。その原因を細かく分析すると、1対1やヘルプなど多岐に渡っていたので、今は、田中亮アシスタントコーチ兼スキルディベロップメントコーチを中心に、課題の要素を取り入れながらワークアウトを実施しています。
──一番の課題としてトランジションディフェンスを挙げられましたが、これはどのように改善していく予定ですか?
まずはチープなターンオーバーをしないことが重要です。トランジションディフェンスの失敗…要は相手にトランジションオフェンスを成功させてしまった原因のうち、特に2つのケースを重視しています。1つは雑なオフェンスで終わって後手の状態からディフェンスに入ってしまい、トランジションに繋げられてしまうケース。もう1つはオフェンスリバウンドを頑張れば頑張るほど取れなかった時に後手に回り、アウトナンバーになってしまうケース。後者は、オフェンスリバウンドを取ることとトランジションディフェンスを守ることはギブアンドテイクな部分もあるので仕方がない部分もあるのですが、リバウンドも頑張るし、トランジションも守れる。そんなチームにしていきたいと思います。
自分たちの強みは足を動かすこと。昨シーズンから相手にプレッシャーをかけるディフェンスを追い求めていたのですが、その裏を突かれてペイント内での失点が多くなってしまいました。今シーズンのラインナップもサイズがあるわけではないですし、3ビッグを40分間やるチームでもないので、1対1のディフェンスに対するオーナーシップやヘルプディフェンスの意識付けは非常に大きな課題だと思っているので、今シーズンはしっかりと対策に取り組んでいきたいと思っています。

大阪の文化を前面に押し出して戦う
──今シーズンは青木保憲選手、坂本聖芽選手、植松義也選手、高橋快成選手が新たに加わります。
バスケットもロスター作りも地に足をしっかりつけて、継続性のあるロスターを構築していくことがクラブの方針なので、まずは、去年足りないと感じたガード陣の補強を行いました。ボールをしっかり運べてチームをコントロールができ、ディフェンス面では前からプレッシャーかけることのできる実績のあるガード陣を補強したいというのが、まず1歩目でした。
──「カルチャー構築」と「地に足のついたロスター作り」という点にマッチする選手たち、という印象を受けました。
まさにそうだと思います。まずはベースとなるカルチャーを作りに対してポジティブに貢献できる選手を呼びたいという考えがありました。ヤス(青木)はコーチングした経験もあるので、間違いなく貢献してくれると確信を持って獲得しました。坂本聖芽はプレー映像から伝わる熱意やインテンシティ、ボディランゲージや戦う姿勢が素晴らしい。関係者にヒアリングしてもポジティブな意見しか聞きませんでした。植松義也も、彼の醸し出す雰囲気やエナジーがすごく良いと思いました。彼が今まで一緒にやってきたチームメートやコーチも、彼の姿勢やエナジーに対してすごく高い評価をしていたので必要な人材だと思いました。彼らが、僕の理想とするカルチャーを体現してくれると確信しています。
──藤田コーチの熱量に共感してくれるような熱いロスターに仕上がっていますね。
そうですね(笑)。良い意味で「サイズはないけどガンガンぶつかって戦うよ」みたいな、そんな暑苦しいチームになるんじゃないかなとすごくワクワクしてます。そしてこういうスタイルは大阪の文化にもマッチしていると思っているんです。
──と言いますと?
僕はカントリーボーイ(田舎育ち)だったので、街のどこに行っても基本的に人がいっぱいいて、ビルがたくさん建ち並ぶ大阪にすごくエネルギーを感じています。街中で息子を抱いてると、おばちゃんが勝手に息子の頭をなでてくるんですよ。全然良いんですけど(笑)。「東京ではこういうことは起きないよな……」というアグレッシブさというか、不器用だけど人情があって、熱さがあって、前へ前へというエッジの効いた感じが大阪独特の文化かな思っているので、それを表現できるような、フィジカルにディフェンスを前から頑張るバスケットができればなと思っています。
──今シーズンに向けてファンの方に向けてメッセージをお願いします。
昨シーズン取り組んだハードワークをするカルチャー作りは、今年も継続していきます。このオフシーズンに「地域のためにプレーをする」ということを考えていたのですが、自分が過去に携わった沖縄や仙台は「地元を元気に」というはっきりした活動目的があったのですが、それを大阪に落とし込んで「大阪を元気に」というのは僕の中でピンと来ませんでした。
ですので、昨年は「大阪を元気にしよう」というよりも「大阪の人たちと一緒に、大阪の文化を前面に押し出してチームとして戦う」という想いを込めた