昭和学園高校

大分県日田市の『普通の高校』で頑張るバスケ部!

これまで全国のバスケットボール強豪校やアンダーカテゴリーの日本代表選手を紹介してきましたが、バスケが好きでプレーを楽しむ人はみんな等しく尊いのです。そんなわけで、大分県日田市が取り組むサービス『ひたふるさと案内』(ひたふる https://hitafull.jp/)の協力を受けて、『昭和学園高等学校』のバスケットボール部を取材しています。

連載第1回では『公式戦で1勝!』を目標に掲げて新学期をスタートさせた部員たちの様子を紹介しました。これまで頑張って練習してきた成果を勝利という形に繋げたかったところですが、5月最後の週末に行われたインターハイの大分県予選では1回戦負け。

万全の準備をして臨んだはずが、県大会の雰囲気に飲まれて出だしから20点のビハインド。そこから調子を取り戻したものの、中津東高校に50-113、ダブルスコアの大敗を喫しました。バスケ漫画の金字塔『SLAM DUNK』では、ダブルスコアで負けた試合の帰り道、「よくやったよな」と話す先輩たちに赤木剛憲が「ダブルスコアのどこが大健闘なんですか」と問い詰めるシーンがありました。でも、『普通の高校』ではそれもよくあるシーンです。男子バスケ部のキャプテンを務める三俣虹紗選手は「結果は負けたんですけど、良い試合だったと思います。最後だから頑張ろうという気持ちで、ちょっとは実行できました」と振り返ります。

全国大会優勝を目指したり、卒業後にプロを目指す選手は、このチームにはいません。それでも目の前の試合で勝ちたいという気持ちは誰でも同じ。3年生部員の多くは今日も授業を終えると体育館に集まります。夏にはウインターカップ予選と私学大会が控えており、3年生たちはそこまで部活を続けるつもりなんだとか。もっとも最終学年なので進路を考えることも必要。そこで今回は、3年生部員の5人にこれからのバスケとのかかわり方を聞きました。写真左から、吉村彪選手、武石駿選手、三俣キャプテン、末金昂太選手です。

昭和学園高校

卒業後の進路を考えつつ、バスケ部の日々は続く

──インターハイ予選での1勝という目的は果たせませんでした。これから部活はどうしますか?

三俣「男子の部員が少ないので手伝う意味もあって、練習には来ています。夏休みまでは部活を続けるつもりで、受験勉強は夜にやります」

末金「部活に悔いはないです。中学校を卒業するぐらいから、将来は調理系の仕事に就きたいと思っていて、福岡県の調理師専門学校を受験しようと思います。これからは勉強を頑張ります。もちろんバスケは続けていくつもりで、料理の仕事もバスケも楽しんでいきたいです」

武石「だったら普通科じゃなくて調理科に入れば良かったのにね。NBAとか結構見てるので、バスケは続けたほうがいいと思います。僕は調理科で、就職を考えています。福岡のホテルの料理人として就職したいです。バスケは好きなんですけど、一流の料理人になって有名になりたいので、まずは調理をの仕事必死にやって、暇があったらバスケをしたいです」

吉村「僕は就職を考えていますが料理は全然興味がなくて(笑)、映像系の会社に就職できればと思います。田舎を出たいので福岡で就職して、仕事をしながら社会人チームに入りたいです。私学大会まで部活は続けますが、一番は第一志望に合格することなので、そこを目指して頑張ります」

──みんな都会に出たいと思っているけど、キャプテンは地元に残りたいんですよね。

三俣「はい。人が優しいところ、鮎とか食べ物がおいしいのが日田の良いところです。僕は美容の専門学校に行くと決めていますが、最初は地元でやってから福岡に行くかもしれないし、その逆になるかもしれません。でもやっぱ日田がいいです。この土地に慣れてるというか、なんか好きなんですよね」

──では誰かチームを代表して、ここまで部活を続けて一番良かったことを教えてください。

武石「僕たちの一つ上の先輩で女子のマネージャーがいたんですけど、その人と付き合えた末金が一番良かったんじゃないかと思います(笑)」

末金「付き合えたことがうれしかったです(笑)。あとはチームと最初から最後までずっと一緒だったのはうれしかったです」

吉村「先週は負けて悔しかったですが、それは切り替えて私学大会に向けて頑張っていきたいと思います。みんなで協力して点を取っていくところとか、良いプレーがあった時にプレーヤー同士で盛り上がったりするのは、やっぱり良いと思います」

『ひたふるさと案内』とは、大分県日田市が新たに取り組むサービスの総称。日田市は、日田杉等を代表する林業の町で江戸時代に幕府の直轄地「天領」として栄えたが、近年過疎化により、人口の減少が続く。その対策の一つとして、市の行政情報や観光情報、地場産品等を一元化した新サイトを開設。また集約した情報を無料通信アプリ「LINE」アカウントより定期配信する。さらに市内の企業情報や求人、就職イベントの案内等をまとめた『就職支援情報サイトしごと版ひたふる』も設け、UターンやIターン希望者へ有益な情報を届け、日田市で働く若者を促す。

「勝つ喜びは自分たちで体験してもらいたい」

今の3年生は入学した時点で上級生が少なく、三俣選手は1年で新チームになった時からキャプテンを務めてきました。小学校や中学校でのバスケ経験も決して多くない選手たちのチームなので練習試合でも公式戦でもなかなか勝てない日々が続きました。顧問を務める椋園亨先生は「それでもみんな腐らずに3年間ずっとやってくれたのはありがたい」と語ります。

自身も学生時代はずっとバスケを続けてきて、教員になってからも審判員を長く続けた椋園先生は「バスケットが好きで部活に入ってきた子たちに、途中で嫌にならずに3年間バスケットをやってもらいたい」という思いがあります。

「勝った時の喜びは言葉で伝えてもらうのではなく、自分たちで体験してもらいたい。やはりやる以上は勝ちたいです。でも、それに特化してバスケ経験の少ない子が試合に出れずに寂しい思いをさせるのは、ウチのチームではどうなのかな、という思いがあります」

日田という土地柄、人の気質について「真面目で優しい。逆に言うと勝とうという気持ちが大事なところで出るかというと、最終的な局面で弱いんじゃないか」と椋園先生は言います。

「日田には小中高のトップレベルの選手もいますが、競って勝つという喜びをあまり経験していないから引いてしまう。もうちょっと中までドライブすれば得点できるのにジャンプシュートを打ってしまう判断ミスがあったり。もうちょっとガツガツ行ってもいいのにな、と思うところがあって、それは日田の気質なのかなと思うところはあります」

ただ、勝負強さにおいてはマイナスでも、物事に真面目に取り組み、仲間意識が強いというプラスの面もたくさんあり、先生もそちらに目を向けます。「本当に真面目で温かくて、友達思いな子が多いです。規則もよく守ります。だからこそ、もう一歩上をと思ってしまいます」

目指せ1勝、昭和学園バスケットボール部!

もっとも、部活動におけるバスケットボールは勝つことがすべてではありません。学校教育の一部としてスポーツを通じた人間育成も大事だし、仲間と一緒に同じことに取り組むことは何物にも代えがたい経験となるはずです。彼らの行く末に幸あらんことを。でもその前に、私学大会とウインターカップ予選での1勝を!