文=鈴木健一郎 写真=B.LEAGUE

「ディフェンスでもっと質を上げていかないと」

前節、栃木ブレックスはホームで千葉ジェッツに痛い連敗を喫した。地区優勝へのマジックを1としながら、今シーズン最後のホームゲーム2つで勝てず、地元ファンとともに喜びを分かち合うことはできなかった。悔しくないはずはない。だが田臥勇太は「ホームのファンの方々とともに決められたら良かったんですけど、そんなに簡単なものではないですし」と淡々と話す。「地区優勝のチャンスはまだ残っているので、そこを達成できるようやっていきたい」

オールジャパンでの敗戦もあり、栃木の誰もが少なからず千葉を意識している。千葉に対する田臥の評価は、今回の連戦に限らず「シュートが入りだしたら止まらない、乗せると怖いチーム」で一貫している。乗せてしまえば押し切られ、40分間我慢し続けることができれば勝てる。それが千葉という相手だ。

8試合を戦って4勝4敗。最後の連敗によりイーブンに戻された。「どういうスタイルかはお互いに分かっています。だけど、例えば西村(文男)選手が得点を重ねてきたりだとか、誰が出ても千葉は力のあるチームなので。それに負けないよう自分たちも対応しなければいけない。試合を重ねて分かっていること、新しいことが見付けられた2試合でした」と田臥は振り返る。

土曜の試合と日曜の試合、展開は違えど課題は同じ。「ウチはディフェンスのチーム」と誰もが口を揃える栃木において、敗れた時の課題はオフェンスよりもディフェンスだ。第1戦を終えた後、田臥はこう語っていた。

「もちろん良いオフェンスをしないといけないんですけれど、それ以上に第2クォーター、第4クォーターに27点取られている。取られすぎだし、フリーで3ポイントシュートを打たれるところがありました。ディフェンスでもっと質を上げていかないと、千葉みたいな力のあるチームと接戦になったら勝つのは難しい」

プレータイムの制限も「ベンチにいる時も発見はあるので」

それでも、敗戦を悔しがりはしても落胆しないのが田臥だ。「悔しいのは全員同じですが、それをどう糧にして次につなげるかが大事。シーズン終盤で、これからチャンピオンシップもあるので、ここからチームとしてどう前を向いて進んでいくかが非常に大事だと思っています。地区優勝は一つの目標ですけど、目の前の試合を一つひとつやっていくしかないですし、そこの中でチャンピオンシップにつながるような試合をしないといけない」と彼は言う。

特に日曜の第2戦、栃木の戦い方は明らかにチャンピオンシップを視野に入れたものだった。ケガを抱える遠藤祐亮に加え、36歳の田臥のプレータイムも制限。第2戦の10分35秒というプレータイムは田臥にとって今シーズン2番目に短いものとなった。チームは常にビハインドを背負う展開だったが、トーマス・ウィスマンは田臥に無理をさせないプランを曲げなかった。

36歳のベテランではあっても、開幕から1試合も休まず先発出場を続けている田臥。本心はもっとプレーしたかったに違いない。ただ、短いプレータイムをどう思うかとの質問は「誰が出てもチームで戦うというのは、しっかりやっていかないといけない部分なので」とはぐらかした。

ただ、「あきめないで盛り返そうという気持ちを持って最後までプレーしてたと思います。気持ちの部分がこれからすごく大切で、出ていたメンバーがそれをコートで表現してくれました」と、チームメートの戦いぶりには一定の理解を示してもいる。

「どういうラインアップで出て、どういうバスケットができるのかを見ていました。千葉さんがどういうオフェンスをしてくるのか、それに対してどう対応しなければならないのか。それはベンチにいる時も発見はあるので、出ているメンバーに伝えようという考えもあったし、自分が出たらコートで表現しなければいけないと思いながら見ていました」

「いかにコミュニケーションをとり続けるか、隙を一つも見せないようにしないとダメだと思いました」と田臥は言う。間近に迫ったチャンピオンシップ、その組み合わせがどうなるかはまだ分からないが、いずれ千葉とは雌雄を決することになりそうな予感が漂う。田臥は悔しさを抑え、その時を待っている。