文・写真=鈴木栄一

チームプレーを重視し、ケミストリーは完成の域へ

ここからはチルドレスにBリーグでのプレーについて話してもらおう。NBAでの実績に加えギリシャやオーストラリアでのプレー経験を持つ彼も、Bリーグに来た当初はバスケットの違いに苦労した面が少なからずあったと言う。

「僕の本来のポジションはスモールフォワードだけど、Bリーグではゴール下を守ることになる。そうなると自分より背が高い、もしくはサイズがなくてもパワーがありインサイドを得意とする選手と対峙しないといけない。そしてスケジュールもNBAに比べると試合数は少ないけど、連戦というのはNBAでは多くない。しかも、1試合目と2試合目の間が24時間以内というのはタフだね」

試合を積み重ねるごとにそういった違いにも適応し、チームメートとの連携も向上。藤田弘輝ヘッドコーチはチルドレスの『個』に依存するのではなく、あくまでチームプレーを重視する。「自分が得点するだけでなくシューターのためにクリエイトしてほしい」というヘッドコーチの要望をチルドレスも理解している。

現在のチルドレスは切れ味鋭いゴール下へのアタックでチームに勢いを与え、観客を沸かせている。そして、このシーズン大詰めになってチルドレスを加えた三遠のケミストリーは完成しつつある。

アフロの反響の大きさを「うれしいもの」と楽しむ

コート外の話を聞くと、三遠のホームタウンである豊橋市はのどかな場所で暮らしやすいと語る。また、オフになると疲れが残っている時はマッサージなどで身体のケアをし、元気な時は新幹線に乗って東京や名古屋に足を伸ばしてリラックスするとのことだ。

食生活については豚肉や生魚を食べず、主に牛、鳥、野菜を食べるスタイル。お酒は飲まない。コーヒーも「半年に1回くらい」というから驚きだ。そんなチルドレスがお気に入りの日本食は、すき焼きと鉄板焼き。地元では豊川にある『ステーキハウスUMEMURA』がお気に入りとのことだ。

また、日本のファンについては「穏やかで礼儀正しい人たちが多い。家族連れで来ている人たちが多いのは、リーグにとっても素晴らしいことだ」と語る。

さて、チルドレスと落ち着いて話す機会があるのだから、トレードマークである個性的な髪型についても触れてみよう。「この髪型は15歳の頃からで、元々はAAU(アメリカの高校でいう地区選抜チーム)でチームメートだったセドリック・ボーズマン(元川崎、現福島)やタイソン・チャンドラー(現NBAサンズ)、ジャマール・サンプソン(元NBA選手)と一緒に始めたのがきっかけだ。他の選手はすぐに普通の髪型に戻して、今もアフロを続けているのは僕だけ。それでもアフロは今の自分にとってはアイデンティティとなっている。この髪型を維持するのは大変という人もいるけど、自分にとっては苦にならない」と教えてくれた。

もちろん、一度見たら忘れられないし、どこにいても目立つ。「ここまで注目されることに最初は驚いたけど、うれしいものだよ」と、反響の大きさを楽しんでいるようだ。

三遠はダークホースとして軽視できない存在

Bリーグはいよいよチャンピオンシップに突入する。三遠は中地区2位で、クォーターファイナルでアルバルク東京と対戦することになった。成績上位の『5強』が優勝候補と見なされる中、ダークホースに三遠を挙げる声は少なくない。

これは短期決戦でより重要視される爆発力に関して、リーグトップレベルのポテンシャルを秘めたチームだからだろう。また、旧NBL勢が未経験であるファーストラウンド、セミファイナルにおける1勝1敗で迎えた際の『前後半5分の第3戦』を、bjリーグで経験している強みもある。

チルドレスは、チャンピオンシップで勝ち進むためには「自分たちにはスピード、得点力がある。それだけにリバウンドをどれだけ取れるかが鍵となってくる」と語る。

チャンピオンシップのような緊迫した試合では、いつも以上に一つのビッグプレーが試合の流れに影響を与えることになる。そしてチルドレスは、こういったプレーを生み出す能力に優れている。大一番になればなるほど、相手にとってチルドレスは脅威となる選手。NBAで最も経験のある彼が、シーズン最後の勝負どころにどう仕上げ、チャンピオンシップでどんなパフォーマンスを見せるか。三遠のファンならずとも注目せずにはいられない。