文・写真=丸山素行

日本代表の合宿で身に着けた『アジャストする力』

男子日本代表の第4次強化合宿、4月25日と26日の第2班に参加した笹山貴哉は、「今まで3回合宿に参加してたので、意図していることは分かりながらやっていたつもりですが、それに新しいことがプラスアルファされるので、頭を使う練習が多かったです」と感想を語った。

トランジション強化を目的とした、運動量の多い練習メニューに、「チームでもあそこまでハードに走るメニューはないですね。結構疲れました」とやや疲弊気味の様子。それでも「レベルが高い人たちが集まっているので、楽しいっていうのは少しありますね」と高い向上心を見せた。

ルカ・パヴィチェヴィッチコーチは、今まで以上に高度なピック&ロールの習得に力を入れている。名古屋ダイヤモンドドルフィンズでもピック&ロールから得点を重ねる笹山だが、代表ではまた異なるスタイルのピック&ロールを使うことで新たな刺激を感じている。

「ガード3人がどこでもポジションをこなせるようにとコーチが言っているので、チームではポイントガードとしてピックを使い、コントロールしながら攻撃していますが、代表に来るとコントロールしないで攻めることに意識を強く持てるので、僕自身はやりやすいです」

「チームとやってることが違うので、そこにアジャストする力というか、対応力がついたと思います。最初の方は戸惑いながらやってましたが、今は言われてすぐにできるようになってると感じています」と、これまでの合宿の経験が笹山に『対応力』をプラスした。

Bリーグで結果を残すことをスタンダードの考え方に

日本代表が新体制になった昨秋、開幕から間もない時期の名古屋Dは好調だった。笹山を含め、張本天傑、中東泰斗の3人が若さを前面に押し出したエネルギッシュなプレーでチームを引っ張っており、その活躍が3人揃っての代表入りを実現させた。ただ、終盤戦に入ってチームは失速。3月以降3勝11敗と急激に失速し、現在は5位にまで順位を落としている。

「結果論で言うと、ジャスティン(バーレル)と石崎(巧)さんが抜けて、落ち着きがなくなって、若さが出たと言われました。負け続けた時に『もっとこうできた、ああできた』というのをしっかり共有できていれば……」と笹山は言う。

「若さが出た」が笹山を含む代表トリオに向けられた批判であることは明らか。笹山自身も「3人とも『俺がやってやろう』っていう意識を強く持ちすぎてしまい、個人で打開しようとして、チームが悪い方向に行ってしまいました」と、責任感が裏目に出た、つまりは「若さが出た」ことを認める。

幸いにも先週の京都ハンナリーズとの第2戦で連敗を止め、多少なりとも好感触を得て代表合宿に臨むことができた。しかし、東アジア選手権へ向けた代表の生き残り競争はこれからが本番。代表合宿はあくまで鍛錬の場であり、選考の場はむしろBリーグのレギュラーシーズン残り5試合と見るべきだ。笹山もそれは理解しており、「Bリーグで結果を残すことをスタンダードの考え方にしています」と言う。

「日本代表に主軸として残れるよう、自分の目標をしっかり持って頑張りたいです」。そう語る笹山の言葉に迷いはないし、もう必要以上に気を張ることもないようだ。シーズン最終盤、笹山のプレーに注目したい。