渡邉裕規

栃木ブレックスの渡邉裕規はレギュラーシーズンの60試合すべてに出場し、49勝11敗という歴代2位の好成績に大きく貢献した。過去2シーズンはシックスマンでの起用が多かったが、田臥勇太のケガによる影響で52試合で先発を務め、今まで以上の存在感を発揮した。先発起用の増加は渡邉に新たな感情を芽生えさせた。

「嫌なことはやられるんじゃなく、やるほうがいい」

──今シーズンも『堅守速攻』を徹底した栃木で、安齋竜三ヘッドコーチは「ディフェンス面で替えられない選手がいる」と話し、特に先発陣のディフェンスに絶対的な信頼を寄せていました。

どうなんでしょう。ディフェンスに関しては、本当に今シーズンも散々言われてきましたから。あの中(遠藤祐亮、鵤誠司)だと僕が最下位ですし、チームの中でもかなり低い方だと思っています。

僕の場合はオフェンスのところじゃないですかね。ディフェンスの課題は多かったと思います。主力級になったって言われちゃうと、今まで主力じゃなかったみたいな感じで、だんだん発言する気がなくなってきちゃいましたよ(笑)。

──語弊がありました。シックスマンとしてのイメージが強く、栃木での過去5シーズンと比べてみても、先発起用が最も多かったシーズンだったので。

確かにスタートのイメージは今までなかったですね。自分も向いてないと思ってましたけど、いざ出てみたらやれましたね。

──特に今シーズンは、前線からプレッシャーをかける激しさが印象に残りました。相手が嫌なことを理解して、ディフェンスをしているなという印象を受けました。

もちろんヘッドコーチの指示です。しんどいのであんなのしたくないです(笑)。でも、以前うちの外国籍選手が前から行かなくてブチギレられたことがあって、それぐらいチームとしての大切なルールなので。怒られたくないので、もう意地になってやっていましたよ。

もちろん僕が相手だったら、ああいうふうにいきなり『ばっ』って来られたら嫌です。嫌なことはやられるんじゃなくて、やるほうがいいんです。僕はディフェンスのセンスはないんですが、プレッシャーをかけて嫌がらせることはできたかなって思いますね。

渡邉裕規

「栃木は田臥さんが歴史を作ってきたチーム」

──先発を任されたことで、気持ちやプレー面での変化はありましたか?

スタメンで出る責任感や大変さは、今年知りましたね。少し話がそれちゃうかもしれませんが、ウチは田臥さんが歴史を作ってきたチームなので。僕らはその支えというような見られ方をします。

今年は田臥さんがケガをして、僕がスタートで出るようになりました。だからこそ、主力がいなくなって、新しいヤツが入ってきて勝てなくなったって言われるのがすごく嫌だったんです。負け続けたら『やはり田臥の復帰が待たれます』みたいなことを絶対言われますもん(笑)。こっちだって頑張ってんのに、言われたくないじゃないですか。

もちろん田臥さんに対しての尊敬はあります。それだけの経験をして、個人的にも成績も残して、誰もが知っている選手なんですから。でも、その田臥さんが出なくても観客が来てくれるのは、試合に勝つからじゃないですか。それを保ち続けることはなかなか疲れることでしたね。出てみて分かりました。それをもう何年もやってきたわけですから、やっぱり田臥さんはすごいです。

渡邉裕規

バスケ人気の向上を実感「やっぱりBリーグってすごい」

──オフの期間も、やはり街で話しかけられたりしますか?

今までは全然なかったですが、最近やっとあるようになりましたね。

──渡邉選手はリーグでもトップクラスの人気じゃないですか!?

今までは本当になかったです。Bリーグで優勝してからですかね。そう考えると、やっぱりBリーグってすごいなと思いますね。

──それは意外でした。変装しているから声を掛けられなかったとかではなく?

したことないです(笑)。ブレックスが盛り上がっているのは間違いなく一因としてありますけど、前は企業チームだったから、誰が声かけてくるんだって話ですよ(笑)。会社の人だって知らないし。だから地域に根付いてプロチームで、Bリーグがこれだけ露出するようになってからは、有難いことに声を掛けてもらうことが増えましたね。

僕が大阪のチーム(旧パナソニックトライアンズ)にいた頃なんて、そもそもバスケットを観に行く文化すらないですから。昔は初めて会う人に『バスケットをやっているんです』と言っても、みんなbjリーグは知ってても、JBLのことは知らないんですよ。その時代を経て、今はファイナルにお客さんが1万2000人も入ったり、テレビで放送したりと、当時からは考えられません。そういう意味では、プレーヤーとしても本当にバスケットの人気が出てきている実感はあります。