田口成浩

「決勝も『やってやる』という気持ちがありました」

5月11日、千葉ジェッツは今年こそアルバルク東京を倒すべく、Bリーグファイナルの舞台である横浜アリーナに乗り込んだ。

レギュラーシーズン52勝8敗という圧倒的な勝率で東地区優勝を飾り、チャンピオンシップでもホームコートアドバンテージを生かして無敗でファイナルまで登りつめた千葉は、王者となる資格を十分に満たしていた。しかし、勝負はやってみなければ分からない。一発勝負に無類の強さを見せるアルバルク東京にあと一歩及ばず、今シーズンも準優勝に終わった。

両者一歩も譲らない展開となった前半、中でも第2クォーターに大仕事をしたのが田口成浩だ。このクォーターで4本の3ポイントシュートを決め、警戒を強められてタフショットを強いられても見事にねじ込み、12972人と大入りの横浜アリーナを沸かせた。

昨夏に千葉に移籍してきた田口にとっては、これが初めてのチャンピオンシップであり、ファイナルとなる。「チャンピオンシップが始まってから、ちょっとずつ自分の良いところは出つつありました。そういったところでファイナルも『やってやる』という気持ちがありました」と、ここまでのクォーターファイナル、セミファイナルで得た経験と自信をファイナルの場でも見せつける自信があったと言う。

「1本目が入って『よし来た』という気持ちがあった」と3ポイントシュート連発を振り返るが、やはり敗れた悔しさのほうがずっと大きく、景気の良い言葉は続かない。「悔しいの一言。言葉に出ないぐらい悔しいです。その時間帯は良かったと思いますけど、終わってしまえば負けとなると、むしろそれはゼロに等しい。自分にとってはあんまり、個人的には良いかもしれないですけど、どうでもいいかなって」

「緊張はほぼなく、良い緊張感の中でやれました。ずっとチャンピオンシップは最高のお祭りだと言っていましたので、そのお祭りを最高の形で終われなかったことが悔しいです」

田口成浩

「自分は何度転んでも立ち上がるだけです」

チームとしては満足のいかない結果に終わったが、個人としては収穫の多いシーズンとなった。移籍1年目で様々な試練と向かい合ったが、シーズン終盤に調子を上げて自身初となる優勝争いで『田口成浩らしいプレー』を見せることができた。

「決勝でシュートを決められましたし、コートに立てたことには、すごく満足しています。ただ、簡単にこのような結果になったわけではなく、最初の試合に出れない時の悔しさも経験して、それに対してめげずに腐らずにやってきたことが、今日の結果になったと思います」

田口はこれまでのインタビューでも何度も「腐ったら終わり」という言葉を口にしていたが、このファイナルの後にも、「自分は何度転んでも立ち上がるだけです。また、立ち上がって自分のやるべきことをやっていきたいと思います」と力強く口にした。

闘志を前面に押し出して戦う田口の姿には、チームメートも観客も巻き込む力がある。シーズン前半戦は千葉のシステムに慣れるだけでも大変で、プレータイムを得られず苦労したが、まさに「何度転んでも立ち上がる」の精神で一つずつ試練を乗り越え、大一番で見事な働きを見せた。勝敗は別として、ファイナルで爪痕を残したことは成功体験として自信になるはず。来シーズンのさらなる飛躍に期待したい。