ドノバン・ミッチェル

故障者続出、シーズンを通して見せた強さを発揮できず

ドノバン・ミッチェルはすべてを絞り尽くし、もう何も残っていなかった。38分の出場で35得点を記録。第3クォーターまではフィールドゴール16本中4本成功、3ポイントシュートは7本打ってすべて外しており、19得点を挙げてはいたもののふくらはぎのケガがシュート精度を狂わせていた。それでも第4クォーターに3ポイントシュート4本成功を含む16得点を挙げ、残り5分で1点差に詰め寄る展開を作り出した。

しかし、そこが限界だった。本当の勝負どころを前に、両膝に手をついて肩で息をする状態。それでもチームオフェンスが機能しない中で、エースの力で劣勢を打開しようとしたが、体力だけでなく気力も尽きた。残り2分を過ぎて得た3本のフリースロー、すべて決めれば1ポゼッション差だったが、すべて外した。この時点でもうキャブズに逆転の可能性は残っていなかった

レギュラーシーズンで64勝を挙げ、終盤はコンディション調整に徹してプレーオフを迎えたキャブズは、ファーストラウンドでヒートを一蹴。この時点でもチーム状態は万全だったが、ペイサーズとのセカンドラウンドが始まると途端に瓦解した。ダリアス・ガーランド、エバン・モーブリー、デアンドレ・ハンター、サム・メリルが次々と離脱。ミッチェルもシリーズを戦う中で、もともと抱えていたふくらはぎのケガがぶり返し、足首も痛めた。

どんな試合展開にも対応できる選手層も持ち味だったはずが、ジャレット・アレンやタイ・ジェローム、マックス・ストゥルースといった選手は劣勢を跳ね返すだけのパフォーマンスを発揮できず。そしてチームが機能不全に陥ると、その問題解決はミッチェルに委ねられた。レギュラーシーズン平均24.0得点の彼は、ロースコアになる傾向の強いプレーオフで29.6得点とスタッツを伸ばした。それでも第1戦で33得点、第2戦で48得点を奪ったにもかかわらず敗れ、ホームでの連敗スタートでシリーズの流れは決まってしまった。

指揮官ケニー・アトキンソンはケガを言い訳にせず、「ペイサーズのペースは信じられないほど速い。それでフィジカル的な挑戦を仕掛けてきた。それはメンタル面の勝負でもある。我々は彼らのバスケに疲れさせられた」と語った。

「よくやったとは言えない。期待値はもっと高かった」

試合後の会見でのミッチェルは疲れ果て、打ちひしがれていた。「僕らは精神的に負けたんだと思う。プレーオフでは初戦を落とすと苦しくなり、第2戦を落とせばさらに苦しい。追いかけるけど、そこで多くのエネルギーを失うことになる。しかも相手はリーグ史上最速のペースを誇るチームだ」

命懸けでチームを引っ張った自身の奮闘についても「どんなに疲れていても、あの場面でフリースローを3本落とすようじゃダメだよ」と全く評価はしなかった。

チームメートが早々に引き上げる中で、ミッチェルはしばらくベンチに座っていた。この時の心境を「信じられなかった。信じたくなかった」と彼は説明する。

「正しい方向への一歩は踏み出した。でももう一歩先には進めず、最終目標を達成できなかった。よくやったとは言えない。期待値はもっと高かったわけだからね。今シーズンの僕らは多くの成功をつかんだけど、結局はこの結果で判断され、滅茶苦茶に批判されるだろう。僕らはそれをモチベーションとして活用しなければいけない」

「僕たちは良いチームで、実力を発揮できなかったのはほんの数試合だ。でも、結局はそれがチームの評価になる。批判をエネルギーに変えて、また練習コートで、ウエイトルームで、栄養管理の面で、とにかくすべてを頑張りたい。批判されるだろうけど、期待を裏切ったのだから仕方ない。だけど、僕たちは必ず戻って来る」