「ケビンをチャンピオンチームのヘッドコーチにする」 

今シーズン、宇都宮ブレックスは2月末にヘッドコーチのケビン・ブラスウェルを失うという衝撃に見舞われた。精神的に厳しい状況ながらも、チーム一丸となってこの苦境を乗り越え、レギュラーシーズンを48勝12敗と2年連続でのリーグ最高勝率で終えた。

宇都宮の中心選手である比江島慎とD.J・ニュービルは、ともにシーズンMVP受賞経験があり、傑出した個の打開力と爆発的な得点力で、試合の流れを一変させる力を持つガードコンビ。さらに、今シーズンは208cmのビッグマン、グラント・ジェレットが大きくステップアップ。高さと跳躍力を生かしたインサイドアタックに加え、3ポイントシュートにも長けたジャレットは平均得点を昨シーズンの10.7から14.2と増加。今では比江島、ニュービルと並ぶ『ビッグ3』言える存在感を発揮している。 

また、昨シーズンの課題だったベンチメンバーのプレータイムも改善。『3&D』の高島紳司に加え、190cmの大型ポイントガードである小川敦也が後半になって出場機会を増やすなど若手の成長により、選手層も厚くなった。さらに経験豊富なベテランが脇を固めることで、今の宇都宮は昨シーズン以上に隙のないチームとなっている。

40歳のベテランビッグマン、竹内公輔は「あっというまに60試合が終わったと感じています」とレギュラーシーズンを振り返る。 「途中でヘッドコーチが亡くなって、精神的に厳しい時期をみんなで乗り越えました。今、チームみんなが思っているのは、ケビンをチャンピオンチームのヘッドコーチにすることです。彼が夏から言い続けてきた『良い習慣』をチャンピオンシップで見せたいです」

開幕当初はベンチスタートだった竹内だが、59試合に出場し、そのうち54試合で先発を務めた。平均19分25秒の出場時間を記録し、2年連続のレギュラーシーズン1位という素晴らしい成績に貢献した。

「去年より良いチームになれていると思います」 

 Bリーグでは、年々日本人ビッグマンが出場機会を得るのが難しくなっている中、40歳の大ベテラン竹内が、リーグ最高勝率の宇都宮の先発として平均20分近くプレーし続けたことは、日本のプロバスケットボールリーグにおける金字塔と言っていい。

ただ本人は、自身の傑出した活躍を特別なものととらえていない。「チームにケガ人が出たときに、自分はケガせずにプレーできました。途中でスタートから控えに戻ることもありましたが気にしませんでした。使い続けてくれたことに感謝しています。自分が成し遂げたというより、チームメートが助けてくれたおかげです。このままスタートが続いて優勝すれば気持ちも変わるかもしれませんが、今のところは達成感はないです」 

一方でチームの成長については、「自分たちに力があるから、2年連続でレギュラーシーズン全体1位になれました。この結果に自信を持ってチャンピオンシップに臨めます。若い選手たちが頼もしい存在となり、去年より良いチームになれていると思います」と手応えを強調する。 

充実のレギュラーシーズンを終えた宇都宮は、明日からのクォーターファイナルでシーホース三河と対戦する。チームはブラスウェルコーチが強調していた『バスケットボールを楽しむ気持ち』を大切にプレーし勝利を積み重ねてきたが、竹内は「楽しみたい気持ちはありますが、楽しめないんじゃないですかね。正直、負けられない部分の方が勝つんじゃないかなと思います」と率直な気持ちを明かす。 

こう語る大きな理由に、第1シードで臨みながら、初戦で千葉ジェッツに敗れた昨年のリベンジへの強い思いがある。「去年、高い勉強代を払っているので1戦目から相手を圧倒するようなプレーをしたいです。自分たちのやってきたプレーをコートで出し切る。強度の高いプレーを40分間、やり続けることにフォーカスしていきたいです」 

百戦錬磨の竹内は、チャンピオンシップで簡単な試合を期待できないことは熟知している。心身ともに激しいプレッシャーの中で、どれだけ自分たちのスタイルを貫けるかが勝敗を分けるカギとなる。その中で、竹内の経験と安定感は数字に表れなくとも宇都宮の大きな強みとなってくる。