「一言でいうと大変なレギュラーシーズンでした」
今シーズン開幕前、千葉ジェッツは渡邊雄太を獲得し、リーグ屈指のタレント集団としてシーズンを迎えた。しかし、渡邊は故障に悩まされ35試合出場に留まり、鉄人の富樫勇樹も4月に10試合欠場。ディー・ジェイ・ホグ、ジョン・ムーニーの両ビッグマンが同時期に離脱する非常事態にも見舞われるなど、ベストメンバーで戦えた試合はわずかだった。
この満身創痍の中でもチームは崩れることなく42勝18敗の好成績を収め、レギュラーシーズン9連勝と上昇気流に乗って、アルバルク東京とのチャンピオンシップクォーターファイナルを迎える。
千葉Jのトレヴァー・グリーソンヘッドコーチは、チーム全体のハードワークを称える中でも「原(修太)選手、田代(直希)選手、金近(廉)選手などがステップアップし、苦しい時を耐え抜いた結果、良い形でチームを作れています。今、良いリズムを生み出すことができています」と語る。
そして、チャンピオンシップへ向けて「良いチームから偉大なチーム、そしてチャンピオンチームになっていくには、様々な勝つ方法を見出すことが大事です。今、それができているのは良いことだと思います」と、チームの成長に手応えを感じている。
レギュラーシーズン、原修太は平均得点が前年の8.7から5.2に減少するなど、スタッツ面では過去2シーズンに比べると地味だった。しかし、故障者続出のチームで持ち前の圧倒的なフィジカルを生かし、自分より一回り以上も大きい外国籍フォワードを守り、オフェンスでは富樫離脱の際にポイントガードの役割もこなすなど、オールラウンダーとして大きく飛躍。スポットライトを浴びる機会は少なくなったが、60試合フル出場を果たし、縁の下の力持ちとしてチームを大きく支えた。
状況によって役割が様々に変わる、波瀾万丈のレギュラーシーズンを原はこう振り返る。「一言でいうと大変なレギュラーシーズンでした。チームとしてコンディションも含めて波が激しかったです。最初、雄太が故障をしましたが、11月中旬のバイウィークまでは2敗だけで、このままいけば勝てる自信がありました。そこからムーニー、ディー・ジェイのケガがあって、常に目の前の試合に勝つことに必死でした」
「新しい自分に会えて、調子が上がってきています」
昨シーズンまでの2年間、原は前指揮官のジョン・パトリックから自由を与えられ、打てるタイミングでシュートを打たなかったら怒られるなど積極的にアタックすることを何よりも求められていた。それが今シーズンは、平均シュート試投数の8本から4.6本への減少が示すように、他の選手にシュートを打たせることを優先する黒子的な役割を担うことが増えた。
「個人として役割が変わっていく中で、後半戦になるとプレーに制限がかかることも出て、ちょっと受け入れられない時も1時間とかですけどありました(笑)」こう語るように少なからず葛藤もあったが、チームファーストで変化を受け入れた。そして今は、新たな挑戦による進化に自信を見せる。
「ポイントガードの時間帯は僕のコール、オフェンスの組み立て方が、チームのオフェンスの良し悪しの責任になるので、そこを考えるのはすごく楽しかったです。前までは自分がピック&ロールしてズレができて得点が生まれたら仕事をしているな、という感覚でした。それがポイントガードの役割をして、自分がコールをしてボールを触らなくてもうまくプレーが行ったら良かったなと、違った喜びを得られました。その前は『4番ポジションをやってくれ』と言われたることもありましたし、こんなに求められるモノが変わることあまりなかったです。それによってプレーの幅を広げることができました」
そして、「今は連勝が続いて、個人としても新しい自分に会えて、チャンピオンシップを前に調子が上がってきています」と語る。
Bリーグ初年度からチャンピオンシップに全て出場しているのは千葉Jと琉球ゴールデンキングスだけ。原はチャンピオンシップ皆勤賞を果たす数少ない選手だ。
「最初の数年は地区優勝もして勝ち続けていたので、チャンピオンシップには出なければいけないくらいの感じでした。それが年々、他のチームもレベルアップしてきて、土日の連勝も簡単ではなくなりました。今年、チャンピオンシップに出られるのは素直に嬉しいです。ずっと出ている選手は富樫、僕、西村(文男)くらいなのでそこは誇りに思います。引退までそういう選手であり続けたいです」
ポストシーズンへの思いを語った原は、A東京戦への意気込みをこう続けている。「レギュラーシーズンで何回も負けているとはいえ、勝てない相手ではないと思っています。ただ、小さい積み重ねをしっかりやらないと勝てないです。しっかりと自分たちのバスケを貫いて勝ちたいです」