文=丸山素行 写真=B.LEAGUE、野口岳彦

「一つひとつのプレーの積み重ねで最終的に勝てた」

昨日行われた栃木ブレックスとの6度目の試合で、レバンガ北海道はディフェンシブ・ゲームを制し、初めての『栃木超え』を達成した。

多嶋朝飛のバックアップを務めるポイントガードの松島良豪は「誰か一人が頑張ったのではなく、一つひとつのプレーの積み重ねで最終的に勝てたと思います。レバンガ自体、みんなでやらないと勝てないチームなので、勝てて良かったです」とチーム一丸の勝利を素直に喜んだ。

「誰か一人が頑張ったのではなく」との言葉どおり、チームハイの得点が12点(ダニエル・ミラーと多嶋)で、特定の得点源に頼るのではなく、コートに立つどの選手もバランス良く得点を挙げた。

松島は13分の出場で、6得点2アシスト3リバウンド。スタッツだけを見ると平凡だが、それでも水野宏太ヘッドコーチがポイントと話した第1クォーターでは、4得点を挙げ12-8と栃木の出鼻をくじく効果的な働きを見せている。さらにそのうちの1ゴールは試合の鍵を握った『オフェンスリバウンド』から生まれた得点で、相手にダメージを与えるセカンドチャンスポイントだった。

「攻撃意識を持て」とのアドバイスを受け果敢に

185cmの松島はスタッフのある一言から、リバウンドへの意識を高めたという。「シーズン途中に、リーグの中でもサイズがある割にはオフェンスリバウンドが少ないとスタッフ陣から指摘されました。ポイントガードでは大きい方なので、それを生かすにはオフェンスリバウンドに飛び込んでいかないと、と意識し始めました」

自分の役割を『ディフェンス』と『ゲームメーク』と語る松島。だが試合前に「攻撃意識を持ってやればオプションが増える。そこを意識すれば松島はもっと良くなる」と水野コーチからアドバイスされ、いつもより強気で行くことができたと明かす。

それが第3クォーターの一場面で表れた。両チームとも速攻が1本も出ない中で、松島はボールをプッシュしたまま迷わずシュートまで持ち込み、田臥勇太からシュートファウルを得て、フリースローを2本成功させている。

すべてのプレーが大事なのはもちろんだが、ロースコアゲームになればなるほど、1点が持つ意味は大きくなる。そういう意味で言えば、松島の6点は6点以上の価値があった。

ベンチが盛り上がる輪の中心には必ず松島の姿がある

松島は巷で有名な『お笑い担当』の選手だという。彼の言動や行動がチームの雰囲気を明るくポジティブに変え、ベンチが盛り上がる輪の中心には必ず松島の姿がある。

「僕が面白いプレーをするとみんなバカにするんですよ」と彼は苦笑する。上に挙げた、オフェンスリバウンドからのシュートは非常に価値のある得点になったが、「ごっつあんゴールというか、あんなの見たことない」と笑いのネタになっていたようだ。

またフリースローライン付近からノーマークで決めた最初のゴールに関しても、大先輩の折茂武彦から「俺のところにマークがベッタリ付いて、お前だからドフリーになった」とイジられたと言う。

それでも松島は、イジってくる大先輩から多くを吸収している最中だ。「頭が良く経歴がある方なので、20何年分の経験をこの1、2年で学べるというのは、他のチームの選手には味わえないこと。『お前がガードとして生きる道はこうだ、そうすればこのリーグでやっていける』と言ってくれるので、そういうのを参考にしながらやってる状況です」と松島は言う。

「ただ鵜呑みにするのではなく、それに自分の色を加えていきたいです。だいぶ参考にしてますけどね」と松島は屈託なく笑った。

どんな世界でも選手の善し悪しを判断するのは数字だ。ただ一方でそれと同じくらい、数字に表れない、見えない貢献度も選手を測るうえで大事な要素となる。松島が笑顔を与え続けることで北海道は頑張れるのかもしれない。