
ミリングHC「チームを1つにしてプレーするだけ」
群馬クレインサンダーズは39勝21敗の東地区3位でレギュラーシーズンを終えて、クラブ史上初のチャンピオンシップに挑む。5月7日に行われた公開練習後、カイル・ミリングヘッドコーチは5月10日に控えた三遠ネオフェニックスとのクォーターファイナルについて次のように展望を語った。
「群馬のファンの人が多く来てくれると思いますが、アウェーゲームは簡単な戦いにはならないです。ただ、三遠は全体2位で進出しているので、彼らのほうが『勝たなければいけない』プレッシャーが大きいはず。自分たちはやるべきことをやって、チームを1つにしてプレーするだけです」
両者の今シーズンにおける直接対決を振り返ると、群馬は1月の天皇杯クォーターファイナルで三遠に79-77と惜敗。4月のリーグ戦ではホームで2連敗を喫したが、いずれも点差は1桁で、インサイドの一角を担うヨハネス・ティーマンが欠場していた。ミリングヘッドコーチは「三遠は良いチームですし、私たちは今季3敗していますが、相手が速いチームだからこそ戦える手段はある。そこをしっかり準備しています」と話す。
指揮官の言葉の通り、群馬と三遠はまったくスタイルが異なる。オフェンシブでハイペースな三遠に対して、群馬はディフェンスを重要視してスローペースで試合を展開する。
さらに、ミリングヘッドコーチと三遠には遠からぬ因縁もある。ミリングヘッドコーチは広島ドラゴンフライズを指揮した昨シーズン、クォーターファイナルで三遠を破ってチームをチャンピオンシップ優勝に導いた。
三遠からすると、チームは違えど昨シーズン苦杯をなめたミリングヘッドコーチへのリベンジの気持ちは強いだろう。しかし、本人は意に介さない。「去年は去年、今年は今年です。特に今回は新しい環境でのCSになるので、比べるものではないです。コーチ対コーチではなく、三遠対群馬です」
また、ミリングヘッドコーチは自身の優勝経験もさることながら、選手の経験値の高さにも自信を持っている。「チームとしては初めてのCSですが、経験豊富な選手が多くいることは私たちの強みであり、自信を持っているポイントです。キャリアの浅い選手には経験がある選手が話を共有していますし、この舞台を経験することで彼らが成長することにも期待しています」
辻「出るからには優勝を狙う」
キャプテンの辻直人も指揮官と同様に自信をのぞかせる。「ワクワクしていますし、CS進出は1つの目標だったので、やっとスタートラインに立てました。チームの雰囲気も本当に良いですし、経験のある選手が多いので、それぞれが週末に向けていい準備ができています」
辻自身も川崎ブレイブサンダースと広島で、チャンピオンシップ出場や天皇杯制覇を経験している。「先のことを考えすぎに、目の前の試合に集中するのが大事です」とトーナメントを勝ち上がる上でのポイントを語る辻は、「2シーズン前に広島でCSに出て、千葉ジェッツ相手に初戦を取れたのはいい経験になりました。その後の第3戦で惜しくも敗れたことも、今回のCSでは生かせると思っています」と続けた。
対戦相手の三遠については「フィジカルがあってサイズもある選手が揃っていますし、攻守に渡ってアグレッシブなチームです」と評す。そして、ここまで3戦全敗であることへの負い目はまったくないと話す。「三遠戦には良いイメージを持っています。全敗しているので不安に感じるのが普通なのかもしれませんが、チームの完成度もピークになっているので、この状態で戦えることにワクワクしています」
辻がこのように思えるのは、自身のパフォーマンスが向上していることも大きいただろう。辻の直近6試合における3ポイントシュート成功率は、5試合が66.7%、残りの1試合は100%。合計30本試投し、うち21本を沈めている。ベスト3P成功率賞の受賞にはあと一歩およばなかったものの、この圧巻の数字を残した3ポイントシュートはチャンピオンシップでも大きな武器となるのは間違いない。
「シーズン序盤のような身体の感覚があります。このタイミングでこの状態なのは嬉しいですし、自信を持って臨めるシリーズになります。成功率だけ見ればキャリアハイなので、1位を取りたかったですけどね(笑)」
辻はそう笑いながらも、最後は力強い言葉で締めくくった。「出るからには優勝を狙っています。そのためには三遠との第1戦はすごく重要になります。まずはそこに100%で臨めるようにします。1勝1敗になったらチームとしての遂行力が問われます。今シーズンは遂行力の向上を大事にしてきたので、そこだけを意識していきます」