川崎との第2戦、攻撃の起点として10アシストを記録
3月23日、大阪エヴェッサは敵地で川崎ブレイブサンダースと対戦。試合を通して、攻守に渡り強度の高いプレーを遂行して85-78で勝利し、92-99で敗れた前日のリベンジを果たした。
大阪は西地区3位で、2位の島根スサノオマジックと5ゲーム差、ワイルドカード2位争いでは千葉ジェッツと6ゲーム差と、チャンピオンシップ出場へ崖っぷちの状況だ。そんな中、ゲーム1は序盤から守備が崩壊し、川崎に次々とトランジションを許す痛恨の敗戦。藤田弘輝ヘッドコーチが「チャンピオンシップに向けて負けられない試合を、やってはいけない戦い方で負けてしまいました。非常に苦しい夜を過ごしました」と、内容的にも悔いの残る黒星だった。
迎えたゲーム2では開始直後に合田怜が負傷退場。「開始何秒かで合田がまたケガをしてしまいました。普段からチームのグルーガイ(まとめ役)として一生懸命にやってくれているので心が痛いです」と藤田ヘッドコーチも語る痛恨のアクシデントに見舞われながら、自分たちのやるべき泥臭いハードワークを貫いた。
指揮官は次のように選手たちを称える。「戦術的に変えたことは一つもありません。僕たちが今まで積み上げてきたものをもっとより良いクォリティでやるという強い気持ちで臨み、選手たちがそれを体現してくれました」
大阪はアドバンテージのあるインサイドを起点に着実に得点を重ねた。司令塔の牧隼利は2得点ながら巧みなゲームメークで10アシストする活躍だった。
「昨日は99点を取られてしまって、戦術云々の前にフィジカル、インテンシティと自分たちのテーマにしているところが出せませんでした。そこでカムバックできたのは良かったです」と牧は試合を振り返るが、自分のプレーへの評価は厳しかった。
「アシストだけを切り取れば、僕よりパスを決めてくれた選手が一番です。アシストの数よりも流れを作るところで、ケガ人も多い中で少しずつできている感触はあります。ただ、勝負どころ、引き離すチャンスで決めれきれなかったところは僕の実力不足です」
「やるべきことをやり続ける、信じ続けられるかが鍵」
この勝利で大阪のチャンピオンシップ進出は、首の皮一枚で繋がった。水曜ゲームの横浜ビー・コルセアーズ戦を挟んで週末には島根との直接対決があり、ここが最後の巻き返しのチャンスとなる。
どうしても目先の勝ち負けに一喜一憂しがちな時期でも、牧はやるべきことを遂行することに意識を集中させている。
「僕たちは全員でオフェンス、ディフェンスをやるバスケットを作っていて、自分たちが頑張れなかったらどのチームにも勝てません。逆にやるべきことを全員でできればどのチームにも勝てるチャンスはあります。チャンピオンシップを意識するところもありますが、常に自分たちにベクトルを向けてやり続ければ、良い結果がついて来ると考えています」
そして牧は、レギュラーシーズンの正念場に向け「チーム全員でやるべきことをやり続ける、信じ続けられるかが鍵」と語る。
昨シーズンまで琉球ゴールデンキングスに在籍した牧は、ファイナル進出3度、そして一昨シーズンの優勝と多くの勝利を手にしてきた。そこで得た勝者のカルチャーを大阪に還元する中心選手としての期待について、「意識している部分はあります」と話す。
「僕は20点、30点を取れる選手ではありません。そこを考えて状況判断の良いプレーをしていくことを、琉球の時と変わらずにやっていくべきです。今日の第3クォーターのノーマークの3ポイントシュート、終盤のジャンプシュートを決め切ってチームを勝ちに導いていきたい。ここ一番で決めるのは琉球だと(岸本)隆一さん、今村(佳太)さんがやっていたことで、それを僕ができるようにならないと、チームとしてステップアップしていかないという自覚を持ってやっています。だからチームの勝ちはうれしいですけど、個人的には後味が悪い感じがあります」
今の大阪は、安定した結果を残す強豪へのステップアップのため、目先の結果だけにとらわれない中長期的な視点も大切にしている。藤田ヘッドコーチは「今シーズン、まずはチームのカルチャーを作るところ」と語る。
「シンプルだけど大変なことを40分間、高い意識でやれるかどうかを突き詰められるチームになりたい。それが強いチームだと、天皇杯の決勝を見ても思いました。フィジカルレベル、インテンシティが高いチームが勝つ。そのために目指すプレーを今日はやりきれましたし、若い選手が引っ張ってくれるとチームの底上げにもなる。そういう高い意識でのプレーを重ねることで、カルチャーになると思います」
この新たなカルチャーを作り上げるためにも、多くの成功体験を持っている牧の存在は重要となってくる。