『3&D』を脱却して攻撃のファーストオプションに
クエンティン・グライムスはNBA最初の2シーズン半をニックスで過ごし、昨年2月にピストンズにトレードされると、この1年でマーベリックス、セブンティシクサーズと3チームを渡り歩くことになった。ニックスでは高く評価されていたが、ジェイレン・ブランソンを軸に実績ある選手の獲得が続く中で放出された。移籍先のピストンズでは膝のケガのためほとんどプレーできなかった。
昨年オフにティム・ハーダウェイJr.とのトレードでマブスへ移籍。ルカ・ドンチッチとカイリー・アービングがバックコートでコンビを組むチームの3番手として、あまり注目されないまま彼はキャリア4年目のシーズンを迎え、マブスにケガ人が相次いだことで予想以上の出番を得たものの、シーズン途中にドンチッチ放出という決断を下したマブスの再編に巻き込まれ、再びトレードされた。
キャリア序盤の大事な時期に外的要因に振り回されているように見えるが、グライムスは前向きに受け止めている。マブスでは47試合に出場、うち12試合は先発を任された。
「ルカの欠場もあったし、自分の力を試す機会は与えられた。みんな僕にボールを預けて、プレーメークを任せてくれた。それに、ルカ、カイリー、クレイ(トンプソン)を間近で見ることで、彼らのバスケへの取り組み方を学べたのは大きいよ。シクサーズに来て良いプレーができているのは、マブスで良い経験ができたからだと思っている」
シクサーズはケガ人続出に苦しみ、トップ6の保護された指名権を確保するために勝利が最優先ではないが、個々の選手に自分の力を示すチャンスは残されている。グライムスは加入早々にオフェンスのファーストオプションを託されることもあり、ここまでの15試合で32.7分出場、19.3得点、5.2リバウンド、3.7アシストと軒並みキャリアハイのスタッツを残している。
マクシーとは2018年のU18アメリカップの優勝メンバーであり、ケリー・ウーブレイJr.とは同郷。さらにエリック・ゴードンとはオフのワークアウト仲間だった。すでに関係性を築いていたこともプラスに働いた。
「みんな僕を歓迎してくれた。コーチは『自分の力をすべて出してこい』という言葉で励ましてくれる。ポイントガードを務めること、チームメートのために正しいプレーをすること、時には自分で攻めてること。目の前の試合に集中し、常に積極的な姿勢で自分のベストを尽くすことを考えている」とグライムスは言う。
昨シーズンまでのグライムスは『3&D』の役割に留まっていたが、今はオフェンスの舵取り役を担っている。特に今月に入ってからは7試合中5試合で25得点超え、平均26.1得点と絶好調だ。
ケイレブ・マーティンとトレードされた時点ではサラリー削減が獲得の意図だったかもしれないが、もはや今シーズン終了後にフリーエージェントになれる彼をどう引き留めるかがシクサーズの関心事となっている。残留するにせよ移籍するにせよ、グライムスは自分の価値を大きく引き上げ、活躍の場を広げるはずだ。