桶谷大

一発勝負の強さの理由は「岸本隆一だと思っています」

琉球ゴールデンキングスは3月5日にBリーグの広島ドラゴンフライズ戦を終えた後にマカオに飛び、EASL(東アジアスーパーリーグ)ファイナル4に挑む。7日に桃園パウイアンパイロッツとの準決勝を戦い、勝てば9日のファイナルへ。過密日程ではあるが『沖縄を世界へ』を掲げる琉球として、EASLは是が非でも勝ち取りたいタイトルとなる。

昨シーズンは3勝3敗でグループステージ敗退となったが、今シーズンはきっちり準備を整えて5勝1敗でファイナル4へ。桶谷大ヘッドコーチは「まずは今回、ファイナルラウンドに進めたことがチームにとってすごく良い経験ですし、このファイナル4もスケジュール的にはタフですが、その中で得られるものもたくさんあると思います」と語る。

EASLはまだ歴史の浅い大会だが、キングスは国内市場だけでなく海外にも目を向けており、そこで成功を収めることに強い意欲を持っている。「優勝できればキングスの歴史にも日本のバスケの歴史にも語り継いでいけるようになると思っています。今はそこまで認知されていないかもしれませんが、アジアで一番を決める大会として今後もっともっと盛り上がってくる。だからこそ、このチャンスでアジアの一番になりたい」と、桶谷ヘッドコーチは強い意気込みをもってタイトルを奪いにいく。

琉球はここ数年、Bリーグのチャンピオンシップでも結果を残しているように『一発勝負』に強い印象があり、今回もファイナル4には自信を持って臨めそうだ。琉球の一発勝負での強さは何が要因となっているのだろうか。それを桶谷ヘッドコーチに聞くと、「やっぱり選手、僕は岸本隆一だと思っています」との答えが返ってきた。

「勝負強い選手がいることは、接戦になった時に出てきます。岸本隆一がいることはキングスにとってはすごく心強いものだと思います。他には脇真大も今シーズンに入って勝負強さを出してくれています。一発勝負ではどんな状況になっても諦めない、最後までゲームを作る、やりきるところが大事で、そこで最終的に岸本がいるから接戦もモノにできると思います」

岸本隆一

「日本を代表するチームだと言える結果を残す」

キングスのエース、岸本隆一はヘッドコーチが自分の名前を挙げたことに「本当ですか?」と少々照れながらも、それを光栄に受け止めるとともに、大事な任務を背負う覚悟がある。勝負どころを託されるエースの仕事は、やりがいはあるがプレッシャーも大きい。

「本当に軽い仕事ではないと思っています。重さになるのか、それともそれを超えて自分の自信になっていくのかは本当に紙一重のところです」と岸本は言い、紙一重でも重圧を力に変えて結果を残している理由をこう語る。

「それを紐解けば自分なりに練習の段階からそういうシチュエーションを意識しているつもりなので、それが今のところ試合に繋がっているかなという感じです。接戦にしなくて済むのであれば、それに越したことはないのですが、試合の序盤から一つひとつ積み上げた先に、最終的に最後を任される状況に繋がるので……」

そうやって少し考え込んだ後、岸本は「いろいろ言ってますけど、あまり深く考えていないですね」と笑顔を見せた。「それが自分の役目だと思って受け入れていく。結果はいろいろありますけど、いずれにしても次に繋がると信じてやっていけたらと思います」

日本を代表してアジアに打って出る今の状況について、岸本は「僕の中ではそこまで日本を代表して戦っているという意識はおこがましいというか、そういう気持ちもあります」とあくまで謙虚だが、「自分たちの戦い方が各国にとっての日本のバスケの印象になるという自覚はあるので、言葉が正しいのかは分からないのですが『ナメられないように』という気持ちで戦っています」と続ける。

「自分たちが海外のチームと戦った上で、日本を代表するチームだと言える結果を最後に残せるのがベストだと思っています」

桶谷ヘッドコーチは「なかなか簡単ではない戦いですが、厳しいスケジュールも含めてタイトルを取れるチャンスを楽しみながら。そこに行けるのは自分たちだけ、その価値を理解して、しっかりプライドを持って戦いたい」と言い、岸本は次のように意気込みを語った。

「日本のバスケ、沖縄のバスケに自信と誇りを持てるような結果になったら良いと思います。Bリーグで優勝した時も『こんな気持ちになるのかな』と思っていたのとは全然違う気持ちになったり、優勝は勝ち取らないと分からない部分がほとんどだと思うので、優勝してどういう気持ちになるのか知りたいです」