ウォリアーズvsクリッパーズの激闘、ディフェンス担当コーチが繰り広げた知恵比べ

2019/04/28
NBA&海外
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ケビン・デュラント

1試合ごとに対抗手段を練るディフェンス戦略の戦い

レギュラーシーズン1位と8位ファーストラウンドは、オールスター選手を揃えたウォリアーズに対して、クリッパーズが様々な手段を講じてくる非常に見応えのある内容となりました。チーム総得点がリーグ2位のウォリアーズと5位のクリッパーズだけにハイスコアの試合が続いたものの、その中身はお互いのオフェンスに対して1試合1試合それぞれが対抗手段を練り直してくるディフェンス戦略の戦いだったともいえます。

そこには両チームともリーグの中でも評価の高いディフェンス担当のアシスタントコーチを擁したことが見逃せません。クリッパーズはヘッドコーチとともにコートサイドに並び立ち、細かい指示を送り続ける熱血漢のレックス・カラミアン。ウォリアーズには冷静なヘッドコーチ同様にベンチから立ち上がることの少ないロン・アダムス。お互いの得意とするチームディフェンスの違いもまた興味深いものでした。

両チームで初めに目立ったのはステフィン・カリー。第1戦で38点と大爆発しチームを牽引しますが、シリーズが進むにつれてルーキーのランディ・シャメットとシャイ・ギルシャス・アレクサンダーのチェイシングディフェンスに苦しみ始めます。当初はルーキーの2人がカリーに翻弄されていたものの、次第に距離の詰め方やスクリーンをかわす方法、許してはいけないポジションを学んでいきました。6試合で驚異の3ポイントシュート50%を記録したカリーでしたが、2人の「打たれないディフェンス」は次第に苦しんでいきました。

次に目立ったのがケビン・デュラントを抑え込むパトリック・べバリーの驚異的な対人ディフェンスです。サイズ差が20cm以上あるにもかかわらず、距離を縮めて絡みつくだけでなく足腰の強さでポジションを取らせないべバリーに大いに苦しんだデュラント。ただし、全試合でフィールドゴール成功率が50%を上回っており、べバリーもまたデュラントに打たれる前に止めることを目指していました。

そして迎えた第3戦ではデュラントは完膚なきまでにべバリーを叩き潰し27点差という圧勝の立役者になりました。第2戦は終盤のデュラントによる個人技勝負を許さなかったことで大逆転を遂げていたクリッパーズからすると、「デュラントを止める」というシリーズ前に練ったゲームプランが大きく狂った試合でした。

そこでカラミアンは、今度は思いもしなかった手段に打って出ます。スターターからセンターを外し、べバリーがドレイモンド・グリーンとマッチアップする形に変更しました。パワーフォワードとガードのマッチアップはゴール下で大きなデメリットが出そうですが、オフェンス時にアウトサイドでパス回すをすることが多くシュート力が低いグリーンは空けておき、ヘルプディフェンダーとしてべバリーを有効活用しました。185cmしかないべバリーが第4戦以降の3試合で38リバウンドとブロックショット5つと、見事に期待に応えました。

止めるべき選手を定め、激しくチェイスすることで「シュートを打たせない」ことを狙うディフェンスは、スター揃いのウォリアーズの中でも特にデュラントへの対抗策を考え抜いたものでした。べバリーという『ディフェンスのスーパースター』の個人能力を巧みに操る作戦が目立ったクリッパーズでした。

第1戦でデマーカス・カズンズがケガで離脱したこともあり、センターのポジションに困り始めたウォリアーズは、第6戦ではスターターにショーン・リビングストンを起用するなど、変則的なラインナップと選手のローテーションが活発なクリッパーズに対抗するためにスピードを重視しました。

特にルー・ウイリアムスとモンテレズ・ハレルがベンチから登場してくると、2人のコンビプレーに対応できず、そこにサイズとシュート力があるダニーロ・ガリナリの特殊性が加わると「どの選手を止めればよいのか分からない」状態に陥りました。また、クリッパーズの得点力はトランジションの連続で力を発揮するもので、速攻を得意とするウォリアーズですら同じように走り合うと、層の厚いクリッパーズに分がありました。

アダムスがウォリアーズのアシスタントコーチに就任してから徹底してきたのは、ディフェンスローテーションの早さと正確性で、クリッパーズが「打たせない」ディフェンスをするならばウォリアーズは「打たれてもフリーにしない」ディフェンスです。ピック&ロールやハンドオフでディフェンスを引きはがしに来るクリッパーズに対して、空いた選手をカバーしていく的確なローテーションで対抗しました。

そのために必要だったのが、スイッチしても守れるディフェンダーたち。シリーズ序盤は多くの選手を起用していたウォリアーズですが、次第にベンチから登場するのはリビングストン、アンドレ・イグダラ、ケボン・ルーニー、そしてアルフォンソ・マッキーニーという、サイズがあってどこでも守れる選手でした。特にイグダラは1人で2人を守っているのかと思わせるくらい、あらゆるシュートシーンに顔を出していました。

特別なリムプロテクターがいないウォリアーズですが、チームで平均7.5ブロックとしっかりとシュートを防ぎました。それも6試合で計11人がブロックを記録しており、7人のクリッパーズよりも、「ディフェンダーの層の厚さ」を感じさせてくれました。

ガード陣のスピードを活用し、しつこく食らいつくことでターゲットに打たせなかったカラミアンのクリッパーズと、サイズのあるウイングがローテーションディフェンスから、多くのブロックで防いだアダムスのウォリアーズ。オフェンスに自信がある両チームだからこそ、性格も戦略も対照的なディフェンス担当アシスタントコーチ同士の頭脳戦が目立った好シリーズでした。