タイラー・ヒーロー

ケビン・ラブ「新体制でも前進できる安心感がある」

ヒートの選手たちは、ジミー・バトラー不在のまま戦うことに慣れつつあったが、ベンチ裏の観客から決まったばかりのトレードを伝えられてはさすがに当惑した。現地2月5日のセブンティシクサーズ戦の試合途中にバトラーのウォリアーズ移籍がスクープされた。ファンはコート上で行われているプレーを見ながらスマホでトレードの最新情報をチェックしており、ヒートの選手たちに最新情報を投げ掛けた。

バム・アデバヨは目の前の試合に集中しようとし、普段と同じようにハーフタイムにロッカールームに戻ってもスマホは見なかったが、他のチームメートからトレードを聞かされた。「驚いたけど、すぐに試合に集中しなきゃと気持ちを切り替えた。これが原因で勝てるはずの試合に負けるようなことがあっては絶対にダメだ。僕はこのチームのリーダーとして、それをみんなに伝えたかった」

ヒートはハーフタイムの時点でセブンティシクサーズを相手に62-57とリードを奪っており、後半も気を緩めることなく攻守に締まったプレーを続け、108-101で勝利した。

一方でバトラーのトレードは目の前の勝敗以上にチームにとっての重大事項であり、ケビン・ラブは正直にこう明かした。「後ろから声を掛けられたから振り返って聞いた。もちろん、何がどうなったかは気になっていたし、すべてを知りたかった」

ラブはバトラーと公私ともに仲が良く、バトラーの引き起こした今回の騒動にもある程度の理解を示している。「僕はジミーのことをよく知っているから、望んでいた契約を得られて良かったと思う。攻守両面で全力でプレーし、健康でさえあれば彼はどんな選手でも打ち負かす。勝利を求める男であり、勝利を収めてきた男だから、今回の行動は自然なことだと思う」

それと同時にパット・ライリー球団社長の毅然たる態度もラブは評価した。「フロントが明確な方針を示したおかげでチームは混乱しなかった。新体制になっても前進できるという安心感が僕らにはある。ジミー以外のコアメンバーは残って、その何人かはステップアップのチャンスを得る。この6週間でそうだったようにね」

キャリア3年目のニコラ・ヨビッチは、NBAでは『バトラーのチーム』しか経験していない。「頼れる兄貴だった。彼がいなくなるのは本当に寂しいし、みんな同じ気持ちだと思う」とバトラーについて語る。「個人的にもたくさん助けてもらって、彼がいなかったら僕はここにいなかったかもしれない。でも、移籍は彼が望んだものだ。実現して良かったし、幸運を祈るよ。そして、また近いうちに会えたらいいなと思う」

シクサーズ戦を終えたばかりの段階では、トレードがまだ正式発表ではなかったこともあり、タイラー・ヒーローはバトラーの退団についてのコメントを避けた。しかし、ヒートのオフェンスを引っ張る役割が自分にシフトすることでバトラーがフロントに反発した面もあり、ヒーローにとっては話しづらい話題だったのかもしれない。

「一番大事なものを守りたかった。前日の悔しい敗戦から立ち直って勝つことだ」とヒーローは言う。「今このチームに問われているのは一貫性だ。何が起きても個々が自分の役割を理解して戦い続けること。だから何があっても良いコンディションを保ち、一貫性を見出していきたい。今日は努力、エネルギー、集中力を見せられたと思う。これをすべての試合でやっていくのが僕らの目標なんだ」

トレードデッドラインを前にバトラー問題は解決し、ヒートにとっては最善の形で終結したと言える。テリー・ロジアーはこう語った。「これでみんなの肩に乗っていた重荷が消える。すべてが終わり、ようやく前に進めるんだ。この1カ月は様々な噂が出たけど、チームは常に一致団結していた。それがこれから大きな意味を持つと思うよ」