「一番大事なのは、期待が生まれることだ」
ウォリアーズは「捨て身のトレードはチームのためにならない」と言い、ジミー・バトラーはウォリアーズにトレードされても契約を延長するつもりはないと言った。バトラーはサンズへの移籍を希望し、ウォリアーズはケビン・デュラントの復帰を模索していた。物事が上手く運ばないままトレードデッドラインが近付く中で、両者が譲歩して『第2案』を選び、このトレードが行われた。
ウォリアーズにとって理想のシナリオとは言えない。現地2月5日、ジャズ戦の試合開始前、ヘッドコーチのスティーブ・カーはウォーミングアップしていた選手たちはロッカールームに呼び戻し、そこで選手たちにトレードを通達した。カーは選手以上にNBAのビジネスを理解しているはずだが、3年前の優勝に貢献したアンドリュー・ウィギンズにトレードを告げるのはつらかったと言い、こう続けた。「トレードデッドラインはオールスター期間中に設定すべきだ。そうすれば試合の30分前にトレードを知った選手たちが、感情を殺してプレーせずに済む」
それでもステフィン・カリーは、この状況に理解を示して「ロッカールームで仲間たちとこれまでを振り返り、話ができたのは良かった。彼らがやった仕事に感謝してプレーしたつもりだ」と語る。
バトラーの獲得はウォリアーズが追い詰められた末の決断だったと見られている。カリーはまだトップレベルを維持しているが、すでに36歳になり全盛期の最期の淵にいる。コアメンバーの老朽化とともにウォリアーズは少しずつ沈んでおり、それを止める手立てを見いだせない中で、リスクを無視してバトラーを選択した。バトラーは調子が良い時にはチームをプレーオフで勝たせる異常なまでの勝負強さを発揮するが、そうでない時のリスクが高すぎ、調子はどうあれカリーと同じぐらいの高給を支払う必要がある。
それでもカリーは、バトラー獲得というフロントの決断を支持しており、「彼がNBAファイナルを2度経験しているのは分かっているかい? ヒートでは様々なトラブルがあったようだけど、そこで何が起きたか本当に理解している人はいる?」と、バトラー獲得に否定的であろうメディアに問いかけた。
「僕自身も裏事情を知っているわけじゃないけど、彼にとってしばらく試合に出ていないことはフラストレーションだっただろう。ただ、新たなスタート地点に立てば新たなモチベーションが持てるものだ。契約延長したことは大きい。彼は短い契約期間に全力を尽くす選手だからね。やる気に満ちて献身的なジミーがこのチームに良い影響をもたらすと期待しているよ。彼は新たなエネルギーをこのチームに注入する。ジミーはトップレベルを経験してきた選手であり、自分の実力をあらためて証明しなければならない状況にいる。お互いに助け合い、チームを強くしていきたいんだ。実際に会えるのがいつなのか分からないけど、すぐにでも取り掛かりたい」
トレードで去った選手への思いは消えないものの、カリーはあくまでポジティブな未来を信じ、それを現実のものとするために前へ進もうとしている。
「一番大事なのは、期待が生まれることだ。僕が大好きなものさ。期待通りに行くかはさておき、まずはそういう環境に身を置きたい。みんなが惚れ込み、没頭できる有意義なバスケだ。それは挑戦しようという意欲をかき立ててくれる」
この『挑戦』がカリーを興奮させている。「僕らは勝利を期待されている。西カンファレンスのトップチームに返り咲かないといけない。ジミーの獲得は今の状況を打開するきっかけになる。僕もここから追い込みをかけて、プレーオフに向けて全力を尽くす。そこでどんな結果が出るか楽しみだ」