チャンピオンシップに先駆けて行われたティップオフイベントに参加した各選手に、自分たちのチームの「ここだけは負けない」ポイントを書いてもらった。栃木ブレックスの遠藤祐亮は『アグレッシブ』を選択。写真からもそのアグレッシブさが伝わってくる。
「アグレッシブにやることが自分たちのリズム」
栃木ブレックスは49勝11敗でレギュラーシーズンを終えた。全体1位の千葉ジェッツにわずかに届かなかったが、これは初年度の川崎ブレイブサンダースと同率で歴代2位タイの勝率。また、栃木は千葉でさえ成し遂げられなかった『不連敗』のまま、チャンピオンシップへと臨むことになった。
この好成績の背景には、遠藤祐亮が選択した『アグレッシブ』が大きく関係している。遠藤は「選手全員がアグレッシブさを出せるし、それをチーム全体で体現できるから」と、その言葉を選んだ理由を説明した。
この言葉を目標に掲げる選手は多い。なぜなら60試合、40分間の中で常に積極的でいることは想像以上に難しいからだ。鉄壁のディフェンスが強みの栃木にとって、アグレッシブは必要不可欠な要素。遠藤も「ディフェンスでアグレッシブにやることが自分たちのリズムになる」と話し、「オフェンスでもディフェンスでもアグレッシブにやろうというのは、今シーズンにかかわらず意識してやっています」と、チームが一貫して目指すテーマだと続けた。
今シーズンの栃木は主力のケガが相次いだ。喜多川修平が開幕前に右膝前十字靭帯断裂の重傷を負い、栗原貴宏もシーズン後半に負った右手舟状骨、月状骨 骨挫傷で現在も復帰できていない。また、田臥勇太も腰痛のため15試合の出場に終わった。それでもこの好成績を収められたのは、遠藤が言うように全員がアグレッシブにプレーし続けたからだ。
『アグレッシブ』には一般的な「積極的」の他に「攻撃的」や「侵略的」も意味し、相手にターンオーバーを多発させる栃木のトラップディフェンスを見ても、その言葉がよく似合う。
勝負を決める一発で、出るか『デレ・アリポーズ』!?
クォーターファイナルの相手は川崎ブレイブサンダース。レギュラーシーズンでは4戦全勝と相性の良い相手に見えるが、「全試合競った試合で、そのうち1試合はほぼ負け試合でジェフ(ギブス)が最後に決めて勝ちました。勝ち癖とか、そういう気持ちは全然ない」と遠藤は言う。
どの選手も「チャンピオンシップは別物」と言う。遠藤も例に漏れず、「レギュラーシーズンでどういう結果であろうと、チャンピオンシップの怖さもある」と警戒を緩めない。「川崎さんも、自分たちに対してすごい準備をしてくると思うので、そこで自分たちのアグレッシブさを出さなければ、勝ちは見えてこないと思う」
初代最優秀守備選手賞を受賞した遠藤のディフェンス力は周知のとおりだが、今シーズンの遠藤はオフェンス面で飛躍的な向上が認められる。キャリアで初めて2桁得点を超える平均11.7得点を記録。3ポイントシュートでは、トップの石井講祐に0.5%及ばなかったものの、リーグ2位の44.7%という数字を残した。
勝敗を分ける3ポイントシュートを数多く沈めてきた遠藤だが、最も印象的だったのは1月6日に行われたアルバルク東京戦での1本だ。最終クォーター残り15秒、ショットクロック残り3秒の状況で3ポイントシュートを沈め、リードを5点に拡大した栃木が勝利した。シュートを決めた直後、手で作ったOKサインをのぞき込むようなポーズを取って遠藤はベンチへと戻っていった。
そのポーズについて質問すると、イングランド代表のサッカー選手デレ・アリの模倣だということが判明した。「あれは『デレ・アリポーズ』です。たまたまチームの撮影の時にやってたのを見て、どうやってるんだろうから始まって、それからSNSを見ました。最初は3ポイントを決めたらやろうとか、そういうのじゃなかったんですけど(笑)。たまたま形も『3』だし、自分の3ポイントも結果がついてきて」
「レギュラーシーズンは出せる機会がほぼなかった」と言うように、このポーズは勝負を決定づける、ここぞの場面で3ポイントシュートが決まった場合にのみ発動させるもの。「一試合に懸ける気持ちも強いので、自分でも出せたらいいなとは思います」と、控えめながらチャンピオンシップでの披露を約束してくれた。
チーム全員がアグレッシブにプレーする栃木の中でも、それを象徴する存在となった遠藤。『デレ・アリポーズ』の機会が増えれば増えるほど、栃木の王座奪還は近づく。