白濱僚祐

「激しく戦う僕らのバスケットを最後に体現できた」

秋田ノーザンハピネッツの2018-19シーズンが終了した。初年度の18勝を下回る17勝(43敗)と苦しい戦いを強いられたが、最後までチームの結束は崩れず、戦う姿勢を貫いたことがプレーオフなしでの残留へと繋がった。

ジョゼップ・クラロス・カナルス就任2年目。闘志を前面に押し出すディフェンスで踏ん張る戦いぶりがチームに定着したのが、初年度との違い。レギュラーシーズン最終戦となった栃木ブレックス戦でも、残留が確定して消化試合だったにもかかわらず、勝利への執念が感じられた。

相手指揮官に「甘い気持ちやプレーの自分たちを目覚めさせてくれた」と言わしめたパフォーマンスを、白濱僚祐も「激しく戦う僕らのバスケットを最後に体現できた」と評価する。

選手層は厚くなく、過酷なレギュラーシーズンの最後で誰もが満身創痍。それでも栃木相手に奮戦できたのは、ファンへの思いがあったからだと白濱は言う。

「アウェーにもかかわらず、たくさんの秋田ブースターが栃木に足を運んでくださいました。シーズンは苦しかったんですけど、最後まで応援してくださっていたので、その方々に僕たちらしいバスケを見せたかったです。最後に変な姿を見せたくないという思いがモチベーションになりました」

白濱僚祐

「僕一人で背負うのではなく、みんなでチームになる」

昨シーズンは最短でのB1復帰を決めて締めくくったが、今シーズンは『秋田の顔』として長年チームを牽引してきた田口成浩の退団という、ネガティブなサプライズからスタートした。戦力としてはもちろん、チームをまとめる求心力を失った意味でも田口の流出は痛かった。その穴を埋めたのは、ベテランと呼ぶにはまだまだ若い27歳の白濱だった。

「ずっと応援してくださった方々を、そのまま応援してくださるようにするには、僕が何かしなきゃいけないとは思っていた」とチームリーダーを買って出たが、そこであらためて田口の影響力の大きさを感じることになった。

「これまで秋田に貢献してきた姿って本当にすごいと思っていましたし、シゲさんの背中は大きかったです。最初の頃は僕一人では役不足じゃないかなって気持ちでした」

秋田ファンの応援の熱さはリーグ屈指だが、期待と情熱の大きさはプレッシャーにもなる。チームが勝てないとなれば尚更だ。それでも彼は、考え方を変えることでこの壁を乗り越えた。

「昨シーズンを経験している(谷口)大智もいますし、タク(中山拓哉)もいます。後半からは僕一人で背負うのではなく、みんなでチームになっていけばいいかって気持ちになりました。そういう意味では重荷に思うことは途中からなくなりました」

白濱僚祐

「来シーズンはチャンピオンシップ争いを見せたい」

地区制が刷新されない限り、秋田は激戦区である東地区を生き延びなければならない。今シーズン、激戦の東地区で秋田は上位3チームに一つも勝てなかった。白濱は彼らとの差をこのように語る。「最後まで競れるところまで行くこともありましたが、終盤でのターンオーバー、シュート1本の精度。上位チームは勝負どころでの勝ち方を分かっています。僕らはそういう場面でたくさんミスをしてしまった」

秋田が来シーズンから急に3強を圧倒するような強さを備える、というのは現実的ではない。ステップアップを重ねてライバルに競る力を養い、一つずつ勝ちを増やしていく必要がある。白濱が指摘する『接戦を勝ちきる勝負強さ』は練習では身に着かないもの。接戦に敗れた経験、痛い思いを糧にして、チームとして学んでいくものだ。そう考えれば、降格してB2で強さを示すことには意味がなく、どんな形であれ残留を成し遂げ、経験を積んで力を蓄えていく流れを続けることが大事だ。

「勝って反省じゃないですけど、残留して反省できたというのは大きいこと」と、白濱も言う。「結果論ですけど、シーズン序盤から中盤にかけて、勝てた試合を何試合も落としてきました。そこを落とさずに勝ち切れていれば、運がなくても残留プレーオフを争う位置にはいなかったと思います」と、勝負強さの課題さえクリアすれば、激戦の東地区でもでやれる手応えはある。

秋田のチームリーダーとなった白濱は、ブースターへの正直な思いで激動のシーズンを締めた。「たくさん応援してくれているのに、勝ちを見せてあげれないという状況で、ブースターさんにとっても苦しいシーズンだったと思います。でも、いろいろな運が重なって残留できて、来シーズンも1部で戦う姿を見せられるのが何よりも恩返しと思っています。来シーズンは下位争いではなくチャンピオンシップを争ってる自分たちを見せたいです。成長した姿を見せたいなって、そうつくづく感じた1年でした」