ニック・ファジーカス

文・写真=鈴木栄一

「質の高いプレーをして、チームに勢いを」

川崎ブレイブサンダースはレギュラーシーズン最終節でシーホース三河とのアウェーゲームに連勝を収めた。すでに中地区2位でのチャンピオンシップ出場が決まっている川崎に対し、三河はワイルドカード下位の当落線上と、モチベーションの面では三河がより高められやすい状況だった。しかし、川崎は20日の第1戦に終了間際の篠山竜青の決勝シュートで75-74で競り勝つと、第2戦は第1クォーターで2桁のリードを奪い、そのまま危なげない展開で83-66と快勝した。

この2試合、言い方は悪いが川崎にとっては消化ゲームであり、コンディション調整のことを考え主力のプレータイムを抑えることも妥当な選択肢だった。しかし、大黒柱ニック・ファジーカスが2試合ともに30分以上プレーするなど起用法は変わらなかった。

この起用法に至った理由を、川崎の北卓也ヘッドコーチは次のように明かす。「前節、新潟に連敗してチームの状態は良くなかったです。その中で選手の意見を聞き、チャンピオンシップに向けてやらなければいけないと気迫が伝わってきた。それで普段通り、勝利にこだわってプレーしましょうと話しをして戦いました」

さらに指揮官は、この2試合を「内容も良かったですし、勝利することで雰囲気を良くすることができました。連勝で終えることができて良かった」と総括する。

北と同じく大黒柱ニック・ファジーカスも戦いぶりには手応えを得ている。先週、新潟アルビレックスBBに連敗を喫し地区優勝を逃したあとには「これは恥ずべきことだ」と怒りを露わにしていたが、今回は「良いプレーだった。今日は昨日と比べても特にディフェンスがかなり良かった。先週のことをもう忘れて前に進まないといけない」と柔らかい表情で言う。

今節は特に内容重視でプレーしたと振り返る。「消化試合ではあったけど、もちろん勝つために来た。ただ、勝ち負けへのこだわりというより、まずは質の高いプレーをしたいという気持ちが強かった。それが来週から始まるチャンピオンシップに向けてチームの勢いになる。今週はみんな集中していたし、良いバスケットボールができたことは本当に大きい」

ニック・ファジーカス

栃木との決戦に「やれるという自信に変わりはない」

いよいよ始まるチャンピオンシップについてファジーカスは、「とてもエキサイティングだ。レギュラーシーズンが終わり、0勝0敗からの新しいシーズンがスタートするようなもの。みんなリスタートとなる」と心機一転で臨む。

クォーターファイナルで対戦する栃木ブレックスは、今シーズン4戦全敗に終わっており、厳しい戦いとなることは間違いない。「自分たちのプレーをいかに続けられるか。栃木はミスの少ないチームで、逆に僕たちはこれまでの試合で多くのミスがあった。ターンオーバーをできるだけ少なくし、リバウンドをしっかり取れば対抗できる」と鍵となるポイントを分析する。実際、ファジーカスが言うように川崎は栃木との4試合のうち3試合で2桁のターンオーバーを献上。一方、栃木が2桁のターンオーバーを喫したのは1試合のみだ。

ファジーカス個人で見ても、今シーズンの栃木戦は4試合すべてで20得点以下、最後の試合となった1月26日は16得点に留まり、5ターンオーバーを喫している。中でもサイズと機動力に長けたライアン・ロシターの密着マークに苦しめられている印象も強いが、そこを意識することはないと言いきる。

「確かに抑えられたことはあるけど、ロシターとギブスを相手に活躍をした試合もある。彼らに対して、自分がやれるという自信に変わりはないよ」

そして「メンタルが何よりも大事となる」と気を引き締め、「アンダードッグだけど、自分たちには勝てる力がある。最後、試合終了で勝ちが確定するまでタフなメンタルを持ち続けることだ」と締めくくった。

辻直人の故障という痛恨のアクシデントはあったにせよ、川崎は先週の嫌な雰囲気を払拭し、チャンピオンシップを迎えることに成功した。栃木の強烈なプレッシャーに対し、強い気持ちを保って戦い続けることができれば勝機が生まれてくる。そのためには、ここぞの場面で得点、リバウンドを取ることで相手に傾いた流れをどれだけ早く断ち切るかが大切であり、ファジーカスの攻守に渡るいつも通りの活躍が欠かせない。