「ボールを大事にしてシュートを決めるだけ」
歯車が噛み合わない時のナゲッツは、ニコラ・ヨキッチが超人的なパフォーマンスを発揮しても勝てない。今シーズン、過去2回のクリッパーズ戦はその典型で、ヨキッチが41得点した開幕2戦目も、28得点14リバウンド11アシストを記録した2週間前の試合も敗れている。
だが、歯車が噛み合えばヨキッチの40得点超えもトリプル・ダブルも必要ない。ここまで得点(32.3)とアシスト(10.2)でリーグ2位、リバウンド(13.6)でリーグ1位のヨキッチにとって、30分の出場で16得点7リバウンド2アシストは平凡すぎる数字だ。それでもナゲッツは第3クォーターにクリッパーズを突き放し、第4クォーターはヨキッチをベンチに置いたまま点差を広げて120-98の快勝を収めた。
ナゲッツはこれで13勝10敗。勝率5割はキープしているものの、2連勝は1カ月ぶりで、優勝候補の戦いぶりとしては物足りなさが否めない。ただ、この試合はそのモヤモヤを払拭するものだった。ジャマール・マレーがチームトップの20得点、マイケル・ポーターJr.がそれに続く17得点を記録。ヨキッチの孤軍奮闘が目立つ中で批判されてきた2人が結果を残した。
特にマレーはヨキッチと並ぶエースのはずが、コンディションが整わずに得点力を落としている。フィールドゴール成功率42.0%、3ポイントシュート成功率33.3%は、ルーキーイヤーの次に悪い数字。スタッツ以上に、クラッチタイムでの勝負強さという最大の武器まで失っている。先の2試合は右足のハムストリングを痛めて欠場しており、この試合もプレーできるかの判断は当日まで待たなければならなかった。
23-5のランを含む猛攻で試合の流れを一気に持っていった第3クォーターには、ポーターJr.が12得点を固める活躍を見せた。マレーが仕事をしたのはヨキッチがベンチに下がった時間帯、『マレーとベンチメンバー』のユニットを機能させたことだ。これができればナゲッツのローテーションは上手く回り、ヨキッチが無理をせずとも48分間を戦える。
「何分プレーできるか分からなかった」とマレーは言う。「でも、自分でコントロールできるのは努力とエネルギーだ。コートに立った以上はまずディフェンスから、そしてチームを引っ張り、観客を盛り上げて、その歓声からパワーをもらおうとした。自分なりにベストを尽くしたし、それで結果が出て良かった」
そして彼は、勝利に必要なのはローテーションを上手く回すことやタフショットを決めることではない、という持論を述べた。「そのへんは心配していない。大事なのは自分たちのペースで、まずはディフェンスから入ってオフェンスへと繋げること。相手の勢いに押されず堅実なプレーをして、自分たちのゲームプランを遂行することだ。あとはボールを大事にして、ちゃんとシュートを決めるだけ。そうすれば勝てる」
インシーズン・トーナメントが佳境を迎えた今、すでに敗退が決まったチームのスケジュールは変則的なものとなっている。ナゲッツはこのクリッパーズ戦の前に4日間の空きがあった。すべての選手とスタッフは強制的に1日は休みを取らされ(練習施設への立ち入りが禁じられた)、翌日はケガを抱えている者だけがリハビリや調整のために軽く汗を流しただけで、心身をリラックスさせることを優先した。
この先もそれぞれ中2日でキングス戦、トレイルブレイザーズ戦、ペリカンズ戦と余裕のあるスケジュールが続く。ここまで低調なパフォーマンスを続けていたナゲッツだが、ここで歯車が噛み合い、本来のポテンシャルを発揮できるようになれば、巻き返しはまだまだ可能なはずだ。