「試合をしながらしっかりと自分のプレーを取り戻したいです」
千葉ジェッツは11月30日、バイウィーク明けの初戦で琉球ゴールデンキングスと対戦。渡邊雄太が開幕2試合目以来の復帰を果たすと、40分を通して集中力の高いプレーを維持し、フィジカル勝負で上回り77-65で勝利した。
試合の立ち上がりは、ともにインテンシティの高いディフェンスを見せロースコアとなったが、千葉Jは原修太、クリストファー・スミスが終盤に3ポイントシュート成功と決定力で上回り、23-14と先手を取る。第2クォーターに入ると、琉球が持ち味の強力なインサイドアタックで追い上げるが、千葉Jはトランジションから渡邊がダンクを2本叩き込むなど要所で得点を重ね、6点リードでハーフタイムを迎える。
第3クォーター、千葉は出だしからエンジン全開で、攻守ともに琉球を圧倒する。引き続き激しいプレッシャーをかけて琉球にアウトサイドからタフショットを打たせると、このクォーターでともに8得点を挙げた富樫勇樹とディー・ジェイ・ホグを軸に攻守の素早い切り替えから守備のズレを作り出す。こうして3ポイントシュート9本中5本成功と確率よくシュートを決め、27-13とビッグクォーターを作った。この結果、第4クォーター開始の時点で、20点の大量リードを得た千葉Jは、そのまま余裕を持って逃げ切った。
10月6日以来の実戦となった渡邊は、28分39秒のプレータイムでフィールドゴール15本中4本成功の8得点とシュートタッチに苦しんだが、7リバウンド1スティール1ブロックを記録。また、1対1に加え、抜群の機動力を生かしたヘルプなどスタッツに出ない部分での働きも大きく、65失点に抑え込む堅守に大きく貢献した。
会見に登場した渡邊は、まず周囲のサポートへの感謝を第一に語る。「2カ月ぶりの試合でパフォーマンスは悪かったですが、無事に復帰できて足首も痛みなくプレーできました。トレーナー陣だったり、リハビリのプロセスに携わってくれた皆さんに感謝したいと思います」
そして自身のパフォーマンスについてはこう振り返る。「(確率の悪かったシュートに関して)ここ最近、練習中の確率は良かったので一切心配していないです。体力面では開始早々にバテたのでこれはまずいなと思っていたら、案の定、最後に足をつりました。もちろん2カ月も試合を休んでいたら体力も落ちますし、パフォーマンスも落ちます。ただ、コートに入っている以上、そこは言い訳できないので、試合をしながらしっかりと自分のプレーを取り戻したいです」
復帰初戦でフル稼働も厳しい自己評価、「28分でへばっているようではダメです」
周囲から見れば、2カ月ぶりの復帰で28分もコートに出て、守備で高い強度をキープしたのは素晴らしいという感想しかない。だが、渡邊は、出場時間について「正直、もうちょっとできると思っていました」と語り、厳しい自己評価を下す。「思ったよりしんどかったですし、接戦になればなるほどプレータイムは増えていくと思います。28分でへばっているようではダメです。試合を重ねていくことが一番良いゲームシェイプに戻す方法だと思っています」
この日、多くの時間で渡邊のマッチアップについたのは、ルーキーの脇真大だった。206cmの渡邊に対し、193cmの脇と一回りサイズで劣る脇だが、前から激しくフィジカルで当たるディフェンスで奮闘した。渡邊は脇の印象をこう語る。「彼はとにかくフィジカルに来て、フルコートでピックアップしてきたりとか、死ぬ気で僕を止めるという気持ちを試合を通してすごく感じていました」
今回の脇に限らず、渡邊のBリーグ参戦によって、彼とのマッチアップを楽しみにする日本人選手は多いだろう。千葉Jは来週の12月7日、8日にアウェーで三遠ネオフェニックスと対戦するため、日本代表のチームメートである吉井裕鷹とのマッチアップは大きな注目を集めるはず。憧れの渡邊に一泡吹かせてやろうと挑んでくる若手に対し、もちろん渡邊は千葉Jの勝利のためにも高い壁として君臨し、負ける気は全くない。ただ、同時に自分に闘志剥き出しで向かって来る新星たちのチャレンジを楽しみにしている。そこには、日本バスケ界の発展に寄与したいという強い思いが根底にある。
「本当にこうやってフィジカルに恐れずやってくる選手は大好きです。だから吉井と3年前に初めて会って練習した時、彼をすごくリスペクトしました。日本人はどうしても優しすぎる選手が多い中、良い意味でクレイジーなメンタリティーを持った選手がどんどん出てくれば、日本のレベルアップに繋がります。そして彼らが代表に入って世界を経験したりすることで、日本のバスケはまた次のレベルに行くことができると思います。もちろん僕は僕で彼らに簡単に負けないようにプレーします。ただ、代表ではチームメートになることもあると思うので、彼らの成長を楽しみに見守っていきたいです」
渡邊の復帰は、千葉Jのさらなるレベルアップはもちろんだが、Bリーグ全体にも大きなインパクトをもたらす。ビジネス面でいえば、渡邊のプレーを生で見たいとアウェーの観客動員アップなどが挙げられる。そして競技面でいえば、渡邊と実際にマッチアップすることで文字通りの世界トップレベルを肌で感じることができる。今日の脇のように、渡邊に果敢に挑んでいく日本人の若手選手を多く見られることに期待したい。