琉球で開幕から主力として活躍「スタートで出るとは思っていませんでした」

男子日本代表は11月21日、24日に『アジアカップ2025予選Window2』を戦う。パリ五輪終了後から初の実戦となる21日はモンゴル代表、24日はグアム代表といずれも格下との対戦となる。

こうした背景もあり、大きなテーマの一つが新戦力の台頭だ。特に今回は招集メンバーの内、海外組に加え渡邊雄太、テーブス海など複数がコンディション不良で合宿参加を辞退。また、先週のBリーグを欠場している馬場雄大もプレーが難しい状況であり、必然的にこれまで出場機会が少ない、もしくは新しいメンバーの出番が増えていくはずだ。

今回、フル代表の合宿参加が初めての選手は複数おり、琉球ゴールデンキングスの脇真大もその1人だ。脇は今回の招集を「率直にうれしいです。トップの選手たちと初めて合宿ができるので、精一杯楽しみたいです。自分の持ち味を生かしていければいいと思います」と語る。

昨年、脇は白鷗大の4年生エースとして、インカレMVPを受賞する活躍でチームを日本一へと導いた後、12月中旬に特別指定で琉球に加入。2月10日の試合で左肩関節脱臼の重傷を負って残りシーズンを欠場するが、順調に回復すると、今シーズンは開幕からここまで14試合すべてに先発出場し、平均22分19秒のプレータイムで8.6得点、2.7リバウンド、1.5アシスト、1.4スティールを記録している。また、特筆すべきは出場時間の得失点差において、チームトップのプラス10.2であること。現時点で今年のルーキーの中で一番の活躍を見せ、琉球が11勝3敗の好成績でバイウィークを迎える立役者となった。この活躍ぶりから今回の合宿招集もサプライズではないと言える。

脇は「まさか僕がこうやってスタートで出るとは思っていませんでした」と率直な気持ちを語ると共に、現状に満足していないと強調する。「評価されてこうやって出られているのはうれしいですし、出たら自分のやるべき仕事を絶対にやろうと決めていました。まだまだ足りない部分はたくさんあって、納得できているプレーはありますけど、悪い方が多いです。課題をしっかり直したいですし、自分のベストパフォーマンスができているとは言えないです」

大学時代の脇といえば、193cmのサイズとフィジカルを生かした力強いドライブからの得点を大きな武器としていた。しかし、Bリーグには屈強な外国籍ビッグマンが相手チームに複数おり、ゴール下で決め切る難易度は桁違いとなる。大学時代にインサイドで得点を重ねていた選手がBリーグに入ると、シュートを打つ位置がリングから離れていくことは珍しくない。脇に関しては、それまでのようにスムーズにはいかないものの、引き続きゴール下へのアタックから得点が取れている。フィジカルは大学時代からさらに強靭となり、相手ビッグマンの動きをしっかり見てリバースレイアップにもっていくなど、技術もに向上したことで高い壁を乗り越えつつある。「14試合、このBリーグでやってきて自信もついてきて、(インサイドで決め切る)感覚も分かってきたので手応えを感じています」と本人が語るように、Bリーグの高さ、強さに早くもアジャストしているのは見事だ。

「日本代表に入って活躍できれば、これまで教えてもらった人への恩返しにもなる」

ディフェンスでも持ち味のフィジカルを生かし、琉球のインテンシティの高い守備をこなせている。脇は、以下のように手応えを語る。「僕のポジションではスイッチで外国籍につくことも多く、そこの自信はついてきました。昨シーズンにケガをした後に体重も増えて、トレーニングをして当たり負けはしなくなりました。今、外国籍が来ても身体を張れて1対1で守れていると思います」

今後の課題は3ポイントシュートだ。3ポイントシュートの試投数はここまで14試合で24本と多くない。ただ、「ディベロップメントキャンプに呼んでもらった大学生の時は3ポイントは得意ではなかったですが、最近はノーマークだったら打ち切るし、少し決めているので変わっている自分を見せたいです」と、確実に成長も見せている。アップテンポな展開からの3ポイントシュートを多投するトム・ホーバスのスタイルだけに、脇がサバイバルレースに生き残るには、長距離砲の精度も少なくない影響を与えるはずだ。

今回、21日の試合会場は宇都宮の日環アリーナ栃木となる。脇の母校、白鷗大は栃木県小山市にキャンパスがあり、12名のメンバー入りができればこれ以上ない形での栃木凱旋となる。脇は「僕が日本代表に入って活躍すれば、これまで教えてくれていた人たちもうれしいと思います。恩返しにもなるので、その気持ちは忘れないようにしたいです」と語る。

そして、恩師である白鷗大の網野友雄ヘッドコーチについて聞くと、「(網野コーチは)多分、会場に来ると思うので……」と、12名の切符を自分が掴み取れば代表デビューの晴れ舞台を見てくれると信じている。

当初は予想外だった琉球での先発起用と同じく、今回の招集についても「合宿に呼ばれる前は、A代表は早いと思っていました」と脇は率直な気持ちを明かしたが、「呼ばれた以上はワールドカップ、オリンピックを目標にしていきたいです」と前だけを見ている。

正直な話、モンゴル代表とグアム代表のインサイド陣はBリーグに比べ高さ、サイズともに劣っている。12名のメンバー入りを勝ち取れさえすれば、脇がこれまで以上にゴール下へのドライブで躍動する姿が見られてもそれは驚きではない。