6勝8敗の現状にデニスHC「今の逆風を乗り越えれば強くなっていきます」
名古屋ダイヤモンドドルフィンズは11月10日、アウェーで千葉ジェッツと対戦した。前日、全く良いところなく72-99の大敗を喫した名古屋Dはリベンジを果たすべく後半途中まで互角の勝負を演じたが、17得点の富樫勇樹、36得点のディー・ジェイ・ホグと、千葉Jの中心選手に決定力の違いを見せつけられ82-96で敗れた。
これで名古屋Dは6勝8敗。島根スサノオマジック、千葉Jと強豪との対決が続いたとはいえ、11月は1勝4敗と失速して、約2週間のバイウィークを迎えることになった。昨シーズン、名古屋DはBリーグ誕生後では初の地区優勝、さらにチャンピオンシップでも初めてクォーターファイナルを突破と大きな躍進を遂げた。それだけに今シーズンはさらなるステップアップが期待されたが、オフに須田侑太郎や外国籍2選手などローテーション入りしていたメンバー5人が去った。
新戦力も今村佳太、ルーク・メイ、ザイラン・チータムなど実力者を揃えたことでタレント力の低下はないが、今村は開幕前の故障で今節がようやくのシーズン初出場など、新たなチームはまだまだ連携不足が否めない。昨シーズンにリーグを席巻した、活発なボールムーブから爆発力のあるオフェンスを継続して発揮することができていない。
名古屋Dのショーン・デニスヘッドコーチは「第3クォーターの終わりから、相手は重要なポゼッションでリバウンドを取り、3ポイントシュートを決め切りました。それが私たちはできなかったです」と敗因を語る。だが、「昨日より良くできました。前に一歩進んでいると思います。今日やったことを起点に、ここから積み重ねていきたいです」と、スコアと共に内容面でも進歩があったと続ける。
多くのファンにとって、黒星先行の今の状況は予想外と言えるが、デニスヘッドコーチは「メンタル面で焦りは感じないです。新しい選手を5人も入れているので、チーム作りに時間はかかります」と冷静だ。そして、今の状況は昨シーズンからの進化を目指す上で、避けられない産みの苦しみと考えている。「今の逆風を乗り越えれば強くなっていきます。筋肉を大きく強くするには一回壊す必要があります。鍛えて壊す、その繰り返しです。今の私たちはうまくいった後で壊したところで、ここからどんどん強くなっていく。12月になると素晴らしいチームが見えてくると思います」
この新しい名古屋Dにおいて、試合を重ねるごとに存在感を高めているのが新戦力の加藤嵩都だ。24歳の加藤は明星大学から2022-23シーズンはB3さいたまブロンコスに所属。昨シーズンはB2の福島ファイヤーボンズでそれぞれ結果を残し、今オフに名古屋Dに加入した。
178cmの加藤の持ち味はなんといっても卓越したスピードを生かしたドライブだ。特に傑出した加速力でトップスピードに到達するまでが速い。だからこそ、彼はゴール下に切れ込み、他の選手ならばビッグマンにブロックを食らいそうな状況でもそのままレイアップを沈めることができる。この試合でも、この高速ドライブからレイアップを決めるなど11分32秒のプレータイムで8得点と大きなインパクトを与えた。
富樫勇樹とのマッチアップ「中学校、高校で富樫さんをSNSのアイコンにしていました」
「チームは苦しい状況ですが、一歩一歩、毎試合、課題に向かってちょっとずつ良くなっている手応えを感じていますし、ヘッドコーチの求めていることを遂行するだけです。個人としてもヘッドコーチの求めることをやりつつ、試合を重ねていくにつれて、自分の武器を出せる余裕が出てきたなと感じています」
このように加藤はチーム、自身の現在地を語る。そして、持ち味のスピードについて「常に切り込みたい。スピードは一番自信があるので、いつでもチャンスがあればアタックはしたいです」と意欲を見せる。
ただ、彼は同時に司令塔たるもの自身の強みを常に押し出すだけではいけないことを理解している。「ポイントガードとしてまずやらないといけないのは、チームオフェンスのリズムを良くすることです。今日はシステムの中で、自分の良さを出せたと思います」
だからこそ、Bリーグ屈指の司令塔であるチームメートの齋藤拓実からはいろいろと学ぶことが多いと続ける。「シュートだったらフローターとか、足の位置とか細かいことはいろいろありますが、大まかなところで言うと、スピード感を一番勉強しています。(齋藤のように)軽やかなプレーで、ゲームコントロールをすることをすごく意識しています」
ちなみに千葉Jの富樫は、加藤にとって目標としてきた存在で今節の対戦を「内心、めちゃくちゃ喜んでいました」と笑顔を見せる。「昨日、試合が終わってホテルで『これ現実なのかな?』と思うくらいでした。中学校、高校で富樫さんをSNSのアイコンにしていたので、まさかマッチアップできる時がくるなんてと驚きもありました。今同じ舞台に立っている以上は、追い越すことを目標に頑張っていきたいです」
冒頭で紹介したが、加藤はプロ入りをB3でスタートしていた。当時、B1のトップスターである富樫との位置は大きく離れていたが、わずか2年で試合でマッチアップするまでになった。2年続けて個人でカテゴリーを上げ、今はトップリーグのB1でも定位置を確保しつつある。外から見れば、特筆すべきサクセスストーリーを歩んでいるところだが、加藤はしっかりと足元を見つめている。
「チーム外で意識することはないです。相手がどうだからというのはなくて、課題は常にチーム内でどうして行くか。ヘッドコーチの求めることをやっていれば自然と日本一のチームになっていける、日本一の選手になれると信じているので、チーム内における役割を徹底することを意識しています」
一瞬でトップスピードに到達する爆発的な加速力を持つ加藤だが、そのスピードに固執することはなく、聡明さも持ち合わせている。これから名古屋Dが巻き返していく中で、加藤の存在はより大きく認知されていくはずだ。
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