日本代表の指揮官、トム・ホーバスの野望(前編)「金メダルという夢へ向かって」

2019/04/24
日本代表
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トム・ホーバス

JX-ENEOSサンフラワーズの11連覇でWリーグが閉幕してから1カ月。アジアカップに向けて女子日本代表が始動しようとしている。東京オリンピックを翌年に控えて刺激には事欠かない。今は束の間のオフを満喫している選手たちも、心身ともに万全で代表に戻って来るだろう。ヘッドコーチのトム・ホーバスは「長く待たされたから興奮が抑えられないよ」と、代表活動の再開を誰よりも楽しみにしている。東京オリンピックでのメダル獲得が期待される日本代表、その指揮官に話を聞いた。

「すでに東京オリンピックのチームについても考えている」

──いよいよ代表活動が始まりますが、どんな心境ですか?

ようやく始まる、といった感じだね。他の国と比べて代表活動期間が長いのは、日本にとって最大のアドバンテージになる。しかし、長く練習できる分、精神的に疲れてしまうこともある。そこは諸刃の剣になりえると注意して、日頃から選手たちの状態に気を配らないといけない。

いきなりハードなメニューをこなすのではなく、最初は軽いメニューから入っていく。オリンピックが近づくにつれて、外からのプレッシャーは強くなるだろうね。ただ、私はそういう状況が好きでもある。

──Wリーグで代表選手たちのパフォーマンスはチェックして、どんな印象を受けましたか?

面白いシーズンだったし、ファイナルは見ていて楽しかった。代表でのキープレーヤーの何人かがステップアップしてくれたと思う。JX-ENEOSでは渡嘉敷(来夢)が3ポイントシュートを打ち始めたのは、彼女の成長において本当に重要な前進だ。藤岡(麻菜美)は前のシーズンの酷いケガからまだ回復途中にあるけど、シーズンの最後にプレーが良くなったからOKだ。まずは再びケガをすることなくシーズンを乗り切れたのは大きい。

梅澤(カディシャ樹奈)は経験を積んでとても興味深い選手になっているね。宮澤(夕貴)はまだまだ成長している。JX-ENEOSには吉田(亜沙美)や渡嘉敷がいるからリーダーシップを取るのが難しいが、彼女は声を出しリーダーとしてもたくましくなっている。

町田(瑠唯)は常にグッドプレーヤーだし、本橋(菜子)はとても自信を持ってプレーしている。(馬瓜)エブリンも成長している。根本(葉瑠乃)がファイナルの2戦目でシュートをどんどん決めたのは良かった。これこそ私が彼女を気に入っている部分だ。あとは安定性を高めてもらいたい。彼女は爆発力のある素晴らしいシューターだよ。他にも三菱電機の川井(麻衣)、日立ハイテクの北村(悠貴)など興味深い若い選手たちもいた。

トム・ホーバス

昨年のワールドカップも「戦いぶりには満足」

──今年の代表活動を語る前に、日本代表のヘッドコーチとしての過去2年を振り返っていただけますか。1年目はアジアカップで優勝、昨年はワールドカップでベスト8進出を逃しました。

1年目のアジアカップで、中国、オーストラリアを破って優勝したことは素晴らしかった。すべての試合で、それぞれ違う選手がステップアップしてくれた。

昨年は吉田と大﨑(佑圭)もチームを離れ、渡嘉敷の故障があり、(長岡)萌映子もワールドカップ直前にケガをしてベストな状態ではなく難しい状況で、経験不足の若いチームで戦わざるを得なかった。それでもチームの戦いぶりには満足している。4位のベルギーに予選で勝ち、3位のスペインには負けたけど接戦を演じた。中国に負けたのはキツかったけど、本橋や萌映子はグッド、宮澤はグレイトなプレーを見せた。本当にハードに戦ったと思っている。

層の薄い若いチームで、大会を通して2勝2敗だった。メダル獲得という目標を果たせなかったことに失望しているが、間違いなく若い選手には貴重な経験となった。チームとしても教訓を得られた。例えばツーガードで両方ともサイズが小さかったら、長身のガードを相手に守るのは厳しいことを学んだ。だからガードについて本当にサイズアップしないといけないと思っている。

トム・ホーバス

「東京に向けより大きく、速く、経験があるチームに」

──今年の日本代表のテーマを教えてください。

昨年のワールドカップより成長すること。そのために、守備でいくつかの新しい要素を導入するつもりだ。1年目はチームの基礎を作り、2年目はそこにいろいろな要素を加えた。今年は過去2年をベースにできるので、多くを加える必要はない。

今年は渡嘉敷が戻ってくるのが大きい。彼女とは何度か話したけど、代表復帰を楽しみにしている。去年はとても若いチームだったので、経験のある選手がもう少し必要になってくる。ただ、オコエ(桃仁花)、(赤穂)ひまわりと若い選手たちも良いプレーを見せてくれたし、彼女たちは成長を続けることが必要だ。

──今年はアジアカップがあります。東京オリンピックの予選を兼ねていますが、その前に開催国枠での出場が決まりました。オリンピックで臨む12名について、骨格は固まっていますか?

核となるメンバーはだいだい決まっている。昨年は52選手を選考に招集したけど、今年は25選手くらいになるだろう。今年のアジアカップは成長の舞台として重要な場であるけど、すでに東京オリンピックのチームについても考えている。

──ホーバスコーチは東京オリンピックでの金メダル獲得を目標に掲げています。目標達成に向けてチームの準備は順調に進んでいると思いますか?

オリンピックでの金メダルに向けては、ワールドカップでメダルを取ることが重要と考えていたけど、それはできなかった。それでもチームの成長具合には手応えを感じている。昨年、アメリカ代表と練習試合を行い、第3クォーター終了時には2点リードしていた。これは本当にすごいことだ。チームは正しい道を歩んでいる。選手たちは自分たちがやっていることを信じている。

金メダルという大きな夢は変わらない。東京に向けより大きく、速く、経験があるチームにしたい。今、日本は世界のトップ5、トップ6にいると思う。そこからNo.1になるには、まずケガ人をゼロにすること。そして最も重要な時間帯にベストなプレーをすること。毎日、チームを成長させていくことだ。

日本代表の指揮官、トム・ホーバスの野望(後編)「日本はさらに成長している」