篠山竜青

文・写真=鈴木栄一

シュート好調の富山に対し、ディフェンスで優位を作る

4月5日、川崎ブレイブサンダースは本拠地で富山グラウジーズと対戦。序盤からゴール下で激しい肉弾戦が繰り広げられる心身ともにタフなゲームとなったが、後半に守備のインテンシティで上回った川崎が86-79で競り勝った。

第1クォーター、川崎はシュート確率が悪いものの4つのオフェンスリバウンドを挙げるなど厚みのある攻めを見せ、50%を超えるシュート成功率の富山と互角の展開を演じる。第2クォーターに入ると、富山はジョシュア・スミスが持ち前の巨体を武器にゴール下を支配するが、川崎は長谷川技の3ポイントシュート2本成功で応戦。前半は37-37の同点で終える。

それでも第3クォーター、前半は低調だった宇都直輝に高さのミスマッチを生かしたペイントアタックで得点を奪われ、残り約6分半には水戸健史の3ポイントシュートによる連続9得点と、内と外から点を取る理想的な形で41-49と離され、川崎はたまらずタイムアウトを取る。

ここで川崎は「後半の最初に少し離されましたが、そこからディフェンスの強度を上げて走れました」と北卓也ヘッドコーチが振り返るように、守備からリズムを立て直す。そして、攻守の素早い切り替えからのスムーズなパス回しで守備のズレを作り、ニック・ファジーカスが決める得意のパターンに持ち込む。このクォーター、連続ダンクを決め珍しく雄叫びをあげたファジーカスが15得点と大暴れし、62-57と逆転に成功した。

第4クォーター、互いに譲らず点差があまり変わらないこう着状態が続く。しかし、ここで第3クォーターまで沈黙していた辻直人が大仕事をする。川崎の4点リードで迎えた残り3分、辻はフリースローを2本沈めると、30秒後に9点差と突き放す値千金の3ポイントシュート。富山も大塚裕土の連続3ポイントシュートで粘りを見せるが、残り36秒に辻がダメ押しとなるレイアップを速攻から決めて振り切った。

ニック・ファジーカス

「オン3に期待するのはリバウンド」

北ヘッドコーチは「富山さんが今までやってないディフェンスを見せてきたので、戸惑いもあったと思います。それでも準備してくれたものは出してくれた。少しオフェンスの判断のところでムキになってシュートを打ったのでタフショットになって走られました。後半はそこを修正して相手の弱点を突きながら展開できた」と勝因を語る。

そして、「3ポイントシュートが入らなくても粘って勝てる。前はシュートが入らないと、精神面で切れてしまい自滅していました。それが離されてもディフェンスで締めて逆転できたのはチームの成長を感じます」と、我慢強さを増したことに手応えを得ている。

この試合、川崎は僅差の第4クォーター序盤にファジーカス、バーノン・マクリン、シェーン・エドワーズを同時に起用する実質オン・ザ・コート3を起用。これはまさにスミス対策と呼べるものだった。「ペイント内での彼は、相手にとって守れない存在」と富山の指揮官ドナルド・ベックも自信を見せるスミスに対し、ガードの選手がダブルチームに行っても、彼の巨漢にプレッシャーをあまりかけられない。

だからこそ、スミスにはビッグマン2人でダブルチームに行くチームが多い。だが、そうなると当然のように一つのサイドにビッグマンが集中することでリバウンド争いで弱くなってしまう。「しかし、ウチは実質オン3を使うと、もう一人高さのある選手がいる。そこでシェーン(エドワーズ)がリバウンドを取ってくれました」と北が語るように、川崎はビッグラインアップで課題を解消できた。

ここまで、守備面での連携で脆さを見せていたこのラインアップだが、「オン3に期待するのはリバウンドなので、その部分ではそこそこでした」と、指揮官が一定の評価をする内容だったのは、今後に向けてもいい兆しだろう。

富山グラウジーズ

敗れても評価「ゲームプランを遂行できた」

一方、敗れた富山の指揮官ベックは「チームのパフォーマンスには満足している。ゲームプランをしっかりと遂行し、しっかりゴール下にアタックできた」と、自分たちの目指す戦いはできたと振り返る。

ただ、「ターンオーバーは負けに繋がった。そして一番の問題点はフリースロー、私たちの試投数はリーグトップ(この試合の前まで1試合平均20.7本)だが、今日は13本と平均より低かった。川崎は24本あって、そこに差が出たところだと思います」と明暗を分けたポイントを語る。

川崎は地区優勝のために、富山はワイルドカードでのチャンピオンシップ出場のために負けられない戦いが続く。今日も互いの強い思いがぶつかりあう文字通りの肉弾戦が期待できそうだ。