宮澤夕貴

「富士通はディフェンスのチーム。そこがガッチリしないと、私たちのバスケットは展開できない」

昨シーズン、富士通レッドウェーブは16年ぶり2回目となるWリーグ優勝を達成。そして中心選手たちが揃って残留する中、オフにはチームスタイルとの相性抜群である長距離砲も打てゴール下で頼りになるフォワードの宮下希保を獲得と戦力アップに成功した。

また、オフシーズンの9月頭に日本、韓国、チャイニーズ・タイペイの10チームが集い韓国で開催された2024ウリ銀行パクシンジャカップに参加し、富士通がトヨタ自動車との日本対決を制し優勝した。さらに9月26日から28日にかけては中国で行われたFIBA Women’s Basketball League Asia 2024に日本代表として参加するなど精力的に実戦をこなしてきた。コンディション面での厳しさはあるが、これまでにない多くの実戦経験を積んでのシーズン開幕となる。

昨シーズンのWリーグファイナルMVPで今シーズンもキャプテンを務める宮澤夕貴は先日行われたメディア公開練習の終了後、チーム状態をこのように見ている。「韓国遠征、中国遠征と終わって韓国遠征はよかったですが、中国遠征では自分たちの強みであるディフェンスが全然発揮できなかったので、そこの修正を今しているところです。良い状態とはまだ言えないですね。富士通はディフェンスのチームです。そこがガッチリしないと、私たちのバスケットは展開できないので、シーズン開幕までにしっかりできたらと思っています」

ファイナルMVPの活躍が示すように昨シーズンの宮澤は、個人としても確かなレベルアップを果たした。これまでは機動力とフィジカルの強さを備えたディフェンスに加え、オフェンスでは3ポイントシュートの印象が強かったが、2021年の富士通加入後は、オフェンスではより多彩なプレーを見せるようになっている。この部分を今シーズンはさらに磨きをかけていく考えだ。

「去年の延長という感じで3ポイントシュートだけではなく、パスやドライブにもチャレンジしています。今シーズンもそういった動きや(ピックプレーからの)ポップやダイブ、3ポイントシュートを狙うときと状況判断をしっかりできるようにしたいです。あとは波がないようにする。中国遠征では久しぶりにあそこまで良くない試合をしてしまいました。開幕してからは波がないようにしたいなと思います」

宮澤夕貴

若手の成長は「私個人としても楽しみですし、ファンの方にも楽しみにしてもらいたい」

今シーズン、Wリーグはレギュレーションを大きく変更。トップカテゴリーであるWプレミアは、昨シーズンの上位8チームで構成され、各チームと4回の総当たりとなる。昨シーズンまでのWリーグは大雑把にいえば戦力が二極化しており、上位が下位と対戦する時は30点差、40点差の試合も少なくなかった。しかし、「タフですよね」と宮澤が語るように、今シーズンはそういった大差の試合がかなり少なくなるだろう。

宮澤はこの大きな変化の影響を以下のように語る。「(これまでは)下位のチームが相手であれば、ベンチメンバーがステップアップできる場にもなっていました。相手が全て上位となると、今まで以上に全員の力が必要で、より頑張らないと負けしまう戦いがずっと続いていく。心身ともにさらにタフになると感じます」

また、レギュラーシーズン中に4度も対戦するとなると、お互いに相手の手の内を熟知した中での戦いとなる。その中で、宮澤は「その辺りはスマートにやっていきたいです。アジャスト合戦みたいになると思いますが、試合が終わってからだけでなく、試合中にアジャストできるようになっていきたい。チームとしてだけでなく、選手個々でそれができるようにしていきたいです」とよりチーム、個人としてもバスケIQが問われると考える。

宮澤自身は、かつて所属していたENEOSサンフラワーズで数々のタイトルを獲得しているが、冒頭で触れたように富士通としては昨シーズンが久しぶりの栄冠だった。この経験は、チームに次のようなプラス要素をもたらしていると宮澤は語る。「このメンバーで優勝できるんだという自信がつきました。それは、これまで優勝経験がなかった選手たちにとってはすごく大きなことだと思います。どんなメンタリティー、プレーができれば勝てるかを全員がわかっています。それによって『あのようにやれば勝てる』という雰囲気作りもみんなでやろうと意識できている。そこが変わりました。若手がどんどん成長してくれているのは私個人としても楽しみですし、ファンの方にも楽しみにしてもらいたいです」

Wプレミアとなって拮抗した試合が大幅に増加し、連覇への道はより険しいものとなる。安定した成績を残すためにチームの総合力が問われる中、複数のポジション、様々な役割をこなせる宮澤の存在はより大きくなってくる。