広島ドラゴンフライズ

ディフェンス効率の維持が勝利への道

昨シーズン、エース・寺嶋良の負傷からチームが奮起し一丸となった広島ドラゴンフライズは、寺嶋が離脱した3月6日からレギュラーシーズン終了までを15勝4敗という驚異的な勝率で戦い抜き、勢いそのままにチャンピオンシップへ突入。中地区、西地区の強豪を次々に撃破し、リーグ初優勝を飾った。

快進撃をなし得た要素として、寺嶋にかわって司令塔を任された中村拓人やベテランシューター山崎稜の覚醒ももちろん大きい。しかし、注目したいのはディフェンス効率の向上だ。第23節までのディフェンシブレーティングはリーグ8位(106.1)と決して悪いスタッツではなかったが、23節から最終節までを切り取るとリーグ3位(101.6)。ディフェンシブチームとして名を馳せるアルバルク東京や宇都宮ブレックスに肉薄するほどの数値を叩き出した。さらに、効率向上の大きな要因であるディフェンスリバウンド獲得率は、リーグ23位(68.1%)からリーグ3位(72.6%)まで急上昇した。

昨シーズンにおける広島のディフェンスの主戦略は、インサイドを強固に守り、タフな3ポイントシュートを打たせることだった。これにより3ポイントシュートの被決定率はリーグトップクラスの31.3%に抑えられたが、相手にオフェンスリバウンドを獲得されやすいという難点を抱えていた。だが、そのマイナスポイントをチームディフェンス戦略の醸成と、ディフェンスリバウンドで力を発揮する河田チリジの安定によって見事に払拭した。

ディフェンス面におけるマーフィー退団の影響はいかに

今シーズンのロスターに目を向けてみよう。オフェンスについては、主に得点を獲得していた選手が全員契約継続しているため能力としての問題は見られない。ディフェンスについても同じことを言えそうに見えるが、個人的にはアイザイア・マーフィーの退団は少なからず影響が出ると考えている。ビッグマンをしっかりバンプストップした後にクローズアウト可能な身体能力を持つこの選手が抜けた穴を、三谷桂司朗や新加入の渡部流が埋めることに期待したい。

さらに昨シーズンの広島は、難解で変則的なディフェンス戦略を用いることでチャンピオンシップ優勝を勝ち取っているが、これらの戦略決定にはコーチ陣の連携が不可欠。朝山正悟新ヘッドコーチがこれを継続していくのか、はたまた別の戦略を構築して我々を驚かせてくれるのか非常に楽しみである。

スタッツ

広島ドラゴンフライズ

予想スタメン

この5人で予想はしたものの、先発ポイントガードを寺嶋と中村のどちらを起用するかに悩んだ。センターも、チャンピオンシップ決勝のように、スイッチディフェンスを多用するとしたら河田のスターター起用も考えられたが、河田は頚椎椎間板ヘルニアのため10月1日にインジュアリーリスト入り。シーズン序盤はインサイド陣のやりくりに苦労することになりそうだ。

所属選手一覧

広島ドラゴンフライズ

『獲得FP(ファンタジーポイント)チーム内1位選手』

※FP(ファンタジーポイント)は、選手の活躍度合を計る指標となるポイント。各選手が実際の試合で記録した成績に応じて算出される。

ドウェイン・エバンス

ドウェイン・エバンス(平均28.1分出場、15.0得点、7.4リバウンド、3.6アシスト)
広島のオフェンスを支えるスコアラー。徹底マークをされるエースポジションでありながら得点期待値(攻撃1回における平均得点)で1.04という高い数値を誇る貴重な選手。ゴール下にある程度スペースを作ってパスを渡せれば、様々なオフェンスパターンで1点以上獲得してくれるだろう。さらに特筆すべきは、シーズン平均3.6、チャンピオンシップ平均4.1だったアシスト。これだけディフェンスを引き付ける能力を持つ選手に、ディフェンスをかいくぐりながらコンスタントにアシストをさばかれてしまっては、守るチームはたまらない。

【若手選手】

三谷桂司朗

三谷桂司朗(平均15分出場、3.5得点、1.5リバウンド、0.4アシスト)
2シーズンにわたって特別指定選手として育て、昨シーズンプロ契約を結んだ広島生まれ広島育ちの秘蔵っ子。昨シーズンは出場時間こそ短かったが、限られた時間で3.5得点1.5リバウンドは立派なスタッツ。チャンピオンシップ決勝にも約10分間出場し、結果を残している。持ち味はクイックリリースから放たれるキャッチアップ3ポイントシュートであるが、今シーズンは先に述べたようにディフェンスでの活躍も期待したい。

【新加入選手】

市川真人

市川真人(平均2.0分出場、0.6得点、0.3リバウンド、0アシスト)
ベルテックス静岡から加入。白鴎大時代に日本代表合宿に召集された経験を持つ若手ビッグマンだ。優秀な外国籍選手と帰化選手を擁する広島で、インサイドプレーヤーとしての出場機会を得ることはおそらく至難の業。206cmの長身選手ながらシュートアテンプトの9割が3ポイントシュートという特性を活かし、ストレッチビッグとしてのスタイルを確立しようとしているのかもしれない。どのポジションで成長していくのか楽しみである。

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