ジミー・バトラー

移籍先は再建を加速させる好機をうかがうネッツ?

ジミー・バトラーのヒートでの挑戦は終わりへと向かいつつある。ヒートに加わって5シーズンが経過した今、契約はあと2シーズン残っているが、最終年はプレーヤーオプション。これを破棄して新たな長期契約を結ぶのがバトラーの望みだ。

2021年の夏に、ヒートはバトラーの希望に応えて3年1億4600万ドル(約220億円)の契約を出したが、今回は違う。パット・ライリー球団社長は「毎試合必ずコートに立ってプレーする選手でない限り、それだけの投資は厳しい」と宣言。「その話は2025年になったら始めればいい」と、今オフに契約延長交渉を行うつもりさえない。

バトラー加入からの5年間でヒートはカンファレンスファイナルに3度進出し、そのうち2度はNBAファイナルの舞台に立った。2019-20シーズンはレイカーズに、2022-23シーズンはナゲッツに優勝を阻まれたものの、大きな成功を収めた5年間と言えるだろう。

その主役がバトラーであることに異論はない。しかし、もともとケガの少なくない彼は34歳になり、サラリーキャップの制限が厳しくなった新ルールの下で、彼に高額の年俸を払うことのリスクは無視できないものになっている。昨シーズンのバトラーはケガが相次ぎ、プレーイン・トーナメントで右膝の内側側副靱帯を痛めてシーズン終了。常に全力でプレーする選手だけに、コンディションの衰えはパフォーマンスの低下に直結する。ライリーはそのリスクを慎重に見極めようとしている。

満足に足る契約をヒートが提示しなければ、バトラーは来年オフにフリーエージェントとなるだろう。その前にトレードで何らかの見返りを得るのはNBAでしばしば見られる移籍だが、このケースではヒートの態度が血気盛んなバトラーの怒りに触れる可能性がある。不満があれば黙ってはいられないタイプのバトラーは、自分が軽んじられていると感じればライリーにも噛み付くだろう。

チームの精神的支柱は、いまやバム・アデバヨが務められる。バトラーの勝負強さは唯一無二の魅力だが、ケガのリスクとチームの中心でなければ機能しない彼の性格を考えると、ライリーはトレードを決断するかもしれない。

ここで浮上したのがネッツだ。ケビン・デュラントとカイリー・アービング、ジェームズ・ハーデンの『ビッグ3』が空中分解した後、今オフにはミケル・ブリッジズも放出して再建へと舵を切ったが、いまだ才能ある若手と大量の指名権を抱え、巻き返しに出るチャンスを探している。彼らに必要なのはオフェンスのファーストオプションであり、強烈なリーダーシップを発揮できる選手。それはまさにバトラーであり、ベン・シモンズのバカげた契約があと1年で終わる状況で、彼が望んでいるとされる2年1億1300万ドル(約170億円)の契約を提示することもできる。

いずれにしても、今オフに契約延長交渉が行われなかったことで、ヒートとバトラーには溝ができた。関係修復はまだ可能だが、どちらかが大幅な情報をしない限り、その溝は時間の経過とともに深まっていく。セルティックスが優勝し、ニックスやセブンティシクサーズに勢いがある東カンファレンスでヒートが地位を保つのは簡単ではない。